上 下
49 / 69

第48話 あの子とこの娘とそして君もなの? ACT 14

しおりを挟む
女ってほんとわかんねぇ―。
なんていう自分のふがいなさ。本当は杉村が一番気にしているのは、あの答えなんだ。

昨日の今日でその答えを出すのか? あの時ははっきりとした答えは出していない。
つまりはまだ数式は解かれていないということだ。そう、これは勉強のことだ。勉強を教えること。
そのことを意味しているんだよ……きっと。

『好きです』ていうのはさ、そのことを意味してのことを杉村が言っただけなんだよな。

―――――じゃぁ、あの……キスは……何?

あはははは、外国式のあいさつ? 杉村が? あの杉村がかよ!
そんな粋なことやるか? 杉村っておとなしくて、控えめで、恥ずかしがりやで……そうそういつも本読んでいる子。だよな。
そんな積極的なことを意味を込めてするような子じゃない。乃木満里奈のように意味不明な子じゃないよ。

あっ! 満里奈か。彼奴弁当受け取ってくれたかな?
まぁ、恵美が渡すもんなら何でも喜んで受け取るだろうけどな。
で、いったいどうすんだよ実際。

まったく自分でも意味不明なことを頭の中で浮かべては消して、また同じようなことを考え、消し去る。
「はぁ―」とため息を漏らしながら、教室の窓から外を眺めていた。

「笹崎、笹崎! おい笹崎!!」
「えっ、あ、はい」
ふと見上げれば僕の横に先生が立っていた。

「あのなぁ笹崎、お前にとって英語の授業なんて、退屈かもしれないと思うんだけど、それでも頼むよ。授業受けているふりだけでもいい、教科書くらいは出してほしいんだよな」
「あ、あっと……ええっと。すみません!」
授業始まっていたんだ。全然気が付かなかった。

マジやべぇ――。ポケッとなんか考え事していたらこんなことになっていた。
「くくくくっ!」と戸鞠が笑いをこらえている声が聞こえてくる。
だったら教えてくれよ。隣に座る杉村は、全くこっちを見ていない。
ぐっ! 杉村、無視……かよ!

なんか散々な一日のはじまりを迎えてしまったような気がする。
気を取り直そう、そう思うが意識はやっぱりどこに飛んでいた。

昼休み、またいつもの校舎裏のベンチに一人、弁当を食べにやってきた。
今日はとにかく一人になりたい。
ゆっくりと弁当でも食べて、気持ちを落ち着かせよう。昨日の夜になぜか淹れた珈琲。あの時気分的と言うか、何か胸のつかえがとれたように思えたのが、また溜まってる感が半端ない。
かといって、学校じゃ珈琲なんて淹れることなんてできない。いやいや、珈琲を淹れるることで癒されてどうするんだよ実際。

と、その時だ、やっぱりやってきた。あの姿は乃木満里奈だ。

「あ、やっぱりいましたね。せ・ん・ぱ・い」
「な、なんだよ。あ、そうだ弁当ちゃんと受け取ったんだろ。だったら今日はこの弁当は俺が食う」
「あははは、もしかして先輩、私にお弁当取られちゃうから、わざわざ作って恵美先輩に持たせたんですか? 大丈夫ですよ。私だってお弁当くらい作ってきますから」

「えっ、じゃ余計なことしたんだ」
「いえいえ、そんなこと言わないでくださいよ。せっかく料理上手で私の愛する笹崎先輩の手作りお弁当いただいたんですもの、ちゃんといただきましたよ」

「いただいたって……いつ食べたんだよ」
「朝にもらってすぐに。だから午前中はあのお弁当で私の心は先輩の愛で満たされていたんです」
「はぁ―、女子の早弁かよ!」

「あ、やだなぁ―早弁なんて、おなかすいてたから食べたんですよ。はい、これお返ししますね」
本当に食ったんだ。空になった弁当箱を手渡された。
で、これはお弁当のお返しです。

彼女の両手が肩に乗った。そして次の瞬間。
唇どうしが触れ合う。

今日はそれだけじゃなかった。つながった口の中にヌルっと押し込まれてくるものを感じた。ため込んでいたものをそのまま注ぎ込む。
離れた時に糸が引いた。その時だ、また彼女が僕の体をグイっと引き寄せまたキスをした。今度は唇が触れるだけだったが、同時に僕の脇でゴトっと音がした。

「んっ!」

強く抱きしめられ、耳元で満里奈が言う。
「最初のは恵美先輩との間接キスですよ。ちゃんと恵美先輩のうふふ、お届けしましたからね。それで次のはその上書きです。私の分」
「て、な、なんだ! 恵美との間接キスって?」

「そのままの意味ですよ。お昼の音楽準備室って誰も来ないんですよねぇ。しかも鍵内側からかけられるの知っています? あそこは私と恵美先輩の二人の秘密の場所なんですよ。それにね、部活が終わった後は気兼ねなくできる場所ですからね。言ったでしょ、私は恵美先輩のことも愛しているんだって。愛していればそう言う行為は当然ですよね……先輩」

えっ! マジ、恵美ってそっちにいっちゃっていたのか。
て、ことは……思わず想像するその世界は、ベッド下にある雑誌の世界が広がっている。
そして満里奈はグイっと抱きしめる力を強めた。

「感じます? 私の柔らかい部分。いつもはサイズ小さめのブラで抑えているんですけど、今はノーブラなんですよ。意外とあるんですから……私の―――――おっぱい」
ちょ、ちょっと待て―――――!! いつもながらこのままいくとここでこいつは裸になりかねないな。もしまたこんなところ―――――はっ!


「あのぉ――――、笹崎君。いったいあなたはこの子と。ここで何しているの?」

振り向く視界には、杉村の姿が

マジ―――――嘘だろ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

回復術師ですが仕事と婚約者候補に追われています!

紗砂
恋愛
私の適正魔法は『回復魔法』、つまり、私は回復術師へとなったわけだ! しかし、この回復術師、回復魔法の適正を持つ人が少なすぎて国のお抱えになっちゃうし…しかも同じ回復術師の人達は変な人ばっかりだし……。 戦争やらもあるせいで引っ張りだこになるし…なんか幼馴染が着いてくるし! しかも、そんな日常を送ってついた2つ名が『戦場の回復術師』だし!! 宰相の息子(お菓子友達)や殿下(危険な人)、騎士団長の息子(脳筋馬鹿)ともう1人(誰だっけ?)の4人の婚約者候補達は争ってるし!! そんな彼女の生活を描いた物語です。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

セックスの価値

神崎
恋愛
愛のないセックスを繰り返し、仕事と割り切るAV男優。 セックスを諦めて現実から逃避するように文章に逃げ道を作った官能小説家。 不器用に進んでいく二人の関係だが、その間は急速に進んでいく。 かなり直接的な表現があります。抵抗ない方だけどうぞ。

【完結】初恋は、

BL
アンダーグラウンドで活躍している顔良しスタイル良しの天才ラッパー、雅。しかしいつもお決まりの台詞で彼女にフラれてしまっていたのだが、ある日何の気なしに訪れた近くのカフェで、まさかのまさか、一人の男性店員に一目惚れをしてしまうのだった。 ラッパー×カフェ店員の、特に何も起こらないもだもだほっこり話です。 ※マークは性表現がありますのでお気をつけください。 2022.10.01に本編完結。 今後はラブラブ恋人編が始まります。 2022.10.29タイトル変更しました。

これで最後ですから覚悟してくださいませ、旦那様!

矢野りと
恋愛
『離縁しましょう、旦那様』 『なぜいきなりそんな事を言うんだっ!今まで上手くやっていたのに、』 『違いますよ、私が我慢していただけですから』 私は愛する夫にさらりと離縁を申し出る。目を見開き固まっている夫にとっては青天の霹靂だったに違いない。 良き妻であろうとしてずっと我慢していた。急な仕事という遊びも、騎士の妻なら笑って見過ごすことも必要だと周囲から言われていたから。それに悔しいけれど愛しているからこそ……見ないふりをしていた。 でも、時代は変わりつつある。もう妻だけが耐え忍ぶ時代はいつか終わるだろう。 だから、私は未来のために動くことを決めた。 ……愛しているからこそ変わって欲しい。 妻を心から愛しているのに悪さをしてしまった夫と、ある日突然に最終通告を突きつける妻のお話です。 ※この作品の設定・世界観は架空のものです。 ※話の内容が無理だなと思ったらご自衛のほどよろしくお願い致します。 ※ネタバレ配慮は連載中のみ。

【完結】誕生日に最低なフラれ方をしたので神様に溺愛してくれるイケメンを所望してみた

灰銀猫
恋愛
今日は私の誕生日。その日は付いていなかった。エアコンは壊れるわ、駅の階段で転んで怪我するわと散々なスタートだったが、それでも付き合っている彼にホテルのレストランを予約したと言われた私は、浮足立っていた。同僚からは、「いよいよプロポーズ?」なんて言われてその気になっていたけれど…… 「別れてくれ。俺、美優ちゃんと付き合うんだ」 宣告されたのは想定していた言葉とは真逆で、しかも決定事項。 (ああ、神様! 誕プレに私だけを愛して甘やかしてくれるスパダリイケメンを下さい! つーか寄こせ―――!!!) そう願った次の瞬間、気が付けば暗い森の中にいて…… 暑さ疲れからのおかしなテンションで書いたものなので、設定ゆるゆるでノリと勢いだけです。 苦情は受け付けませんので、お心の広い方のみお読みください。 タグは話が進むと追加の可能性あり。 9/5 R18を取り下げました。

2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな

弥生菊美
恋愛
付き合った相手から1人で生きていけそう、可愛げがない。そう言われてフラれた主人公、これで何度目…もう2度と恋愛なんかしないと泣きながら決意する。そんな時に出会った巫女服姿の女性に異国での生活を勧められる。目が覚めると…異国ってこう言うこと!?フラれすぎて自己評価はマイナス値の主人公に、獣人の青年に神使に騎士!?次から次へと恋愛フラグ!?これが異世界恋愛!?って、んな訳ないな…私は1人で生きれる系可愛げの無い女だし ありきたりで使い古された逆ハー異世界生活が始まる。 ※登場キャラ「タカちゃん」の名前を変更作業中です。追いついていない章があります。ご容赦ください。2024年7月※

私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。

石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。 失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。 ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。 店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。 自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。 扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。

処理中です...