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第37話 あの子とこの娘とそして君もなの? ACT 3

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僕が頼斗さんと響音さんの命日に墓参りをしたこと。そして、北城家と面識があることは恵美にはまだ言っていない。
すでにもう1週間と言う時間が経過していた。

正樹さんもミリッツアさんも、そのことについては、僕に任せるということだった。
あの日僕が家に帰宅すると恵美はなぜか、玄関先で僕を待ち構えていたように行先を問いただそうとしていた。

確かにあの家にで暮らすようになってから、初めての外泊。一夜、家を空けた。
無断外泊という訳ではないが、外泊したことには違いない。
恵美と一緒に暮らすようになってから、初めての別々の夜を過ごした。
何も――――――ひ、否定は出来ないけど、多分悪いことと言うかその、ああ、今思い出すだけでもなんか変な気文意なっちまうのがあの幸子さんの魅力なんだろうか。

キス――――だけ。
それ以上のことはしていない。

しそうになったけど、その先に進むことはいけないんだという思いが先立っていたのは確かだ。
まぁ―、何ていうかそりゃ、律ねぇとはそう言う行為と言うか関係であったと言うのは事実だけど、彼女とは違う。それに出会ってそのなんだ、すぐにそう言う関係に流れ込んでもいいのか? 
求められていたのは事実だと思う。
でも、それは多分……。

「おい結城、早くしねぇと弁当もパンも全部売り切れちまうぞ!」
昼休みが始まり、孝義が購買に昼飯を買いに誘う。

「あ、ごめん。今行くよ」
「どうしちまったんだなんだか今日はずっと、ポケットしてるよな? なんかあったか?」
「べ、別に何もないよ」
「そうか、ならいいだけどよ!」
購買に行くと毎度のように、購買部の出店は人の山と言うか、ま、なんだ混んでいる。さながら、バーゲンセールに群がる人の山のようだ。

そこでふと目にする。彼女の姿を……。恵美だ。
さすがにあの人の群れの中に飛び込むのは、恵美じゃ無理だろうな。
孝義はすでにあの戦場に突入している。
僕もいざ参入と思いつつも、恵美の存在が気になってしまった。

そっと近づき「なぁ、何が欲しんだよ」
「えっ!」ちょっと驚いたように僕を見つめ「た、たまごサンド」と言った。
それを聞き、僕は、孝義の背中を追う。
……たまごサンド。まず目指すはたまごサンドだ。あった、視野にその獲物を映し取り、思いっきり手を伸ばして獲物を捕獲する。そのあとは流れるように、手が届く範囲のものを掴み取った。
「ふぅ―」何とかゲットできた。

群れからはずれ、その群れを遠巻きに眺めている恵美に「はい、たまごサンド」と手渡した。
「えっ、あ、ありがとう。……お金」
「いいよ、それより、それだけで足りんのかよ。今日も吹部あるんだろ、ほら、これもやるよ」
「う、うん。ありがとう。でも結城それで足りるの?」
「ああ、僕なら大丈夫。これのほかに弁当も用意してあるから」
きょとんとしながら、恵美が言う。

「お、弁当?」

「ああ、パンは孝義の付き合い。彼奴弁当持ってこないときはいつも付き合わされるんだ」
「そ、そうなの……。じゃぁ、こ、これももらっておく。それじゃ」
渡したパンをしっかりと持ち恵美はその場を足早に立ち去った。
あんまり二人で話しているところをほかの人に見られたくないんだろう。

ま、それは、僕も同じなわけで。
特に男子生徒からの暑い視線が注がれると背中がぞくっとしてしまう。それでなくとも、恵美と一緒に暮らしていることはもう校内じゃ有名な話になっている。
さすがに最近は大分落ち着いてきたけど、初めのうちは嫉妬心からくる嫌がらせが後を絶たなかった。
もちろん、男子生徒からの嫌がらせが大半だったけど、女子の中にも僕とすれ違うたびに、ひそひそと何かを言い合っている姿を見せつけるようにしている子たちもいたりした。

ま、恵美事態には余り影響はなかったみたいだけど。ま、それが救いと言えば救いだった。

気が付けば、すでに孝義の姿はなかった。
教室に戻り、孝義の姿をしたが、見当たらなかった。
「孝義なら、バスケやりにさっき行ったぞ」と、クラスの奴がそう言った。
「そうか、わかった」と、そいつに返し。弁当をカバンから取り出して僕も教室を出た。
天気のいい日は、ここに来る。

ようやく、何とか、外でも難なく飯が食えるような季節になった。
あの真夏の暑さじゃ、いくらここでも、耐え兼ねられない。
第二校舎棟の端。非常階段側に面した小さな中庭。目の前には僕と同じくらいの垣根があり、その先は林が広がっている。
この場所は僕のお気に入りの場所でもある。めったに人が来ない場所。

……そう、ここで、僕はあの時、恵美に告ったんだ。
――――――――そして振られた。
思い出深……くしたくない場所だ。

ま、人がほとんど表れないというところが、気に入っているだけなんだけど。
恵美と一緒に暮らすようになってからここに来る回数は増えた。

余り、クラスの中にも溶け込もうと、率先するわけでもなし。かといって、友達? まぁ仲がいいのは孝義と戸鞠それと野崎くらいだし、その孝義は今や、クラスのリーダ的存在だ。
それに、孝義には戸鞠真純とまりますみがいる。
明るく、分け隔てなく誰とでも仲良くできる子。やっぱり女子の中では群を抜いている。そんな二人はクラスの中ではもう公認の仲だ。

「そう言えば孝義は、いつごろから戸鞠と仲良くなったんだろう?」
気が付けばあの二人は出来上がっていたような気がするんだけど?
あの孝義がねぇ――、不思議なもんだな、戸鞠みたいな子を好きになるなんてさぁ、中学の時なんか彼奴「俺はずっと硬派でいる!」なんて言っていたくせに、高校に入ったらなんかイメージ変えやがって、ちゃっかり彼女まで作ちまうから笑えるよな。

そんなことを考えながら、朝作ってきた弁当を広げ、箸で卵焼きを口にしようとした時だった。

いきなり視界が真っ暗になった。


――――な、なんだ!
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