上 下
59 / 66

第59話〈種強化Lv80〉

しおりを挟む

 ダンジョンの中で、青白く光る直径30メートル程の巨大な魔方陣を発見した。オリハルコンゴーレムが通った跡はこの魔方陣で終わっている。これがクリトの言っていた〈転移魔方陣〉だな。

 ノエルが僕の手を握る。

「ゼツ君」

 僕は頷きノエルの手を握り返した。
 僕達は魔方陣の中に飛び込む。





 太陽が眩しい。
 僕達は街の中心広場に出た。

【タカヒロ、手筈通り、お前はクリトと合流しろ】

【はは!】

 僕達は〈念話〉で会話ができる。

 僕はタカヒロに指示を出しながらオリハルコンゴーレムが通った跡、街が破壊されたその先を睨む。

 オリハルコンゴーレムが長い腕を振り回し、コマのように回転しながら暴れている。この街の建物は殆が3階建てだ。建物で例えるなら10階建てはある巨大なオリハルコンゴーレムが、ここからでも良く見えた。

「やはり来ていたか」

 次に僕は空を見て呟く。

 そこには無数の【SSR天使】――。

 更に複数の天使がオリハルコンゴーレムを攻撃し、わざとヤツを暴れさせている。

 僕をあぶり出し、攫おうとしているのだ。天国あまくに愛ならやりそうなことだな。

 だが残念だったな【人神】よッ!

「お前は一手遅かったッ!
 ――ノエル、下がっていて」

 ノエルが真剣な顔で頷き下がると。

「アクティブスキル〈ガンシャ―ライフル〉!」
 ――種転送、〈種強化Lv80〉ッッッ!!!」

 僕は暴れるオリハルコンゴーレムの頭を狙って撃つ!

 ドッピュンッッッッッッ!!!!!――ドゴゴゴンッ!!

 物凄い発射反動エネルギー。僕の周りで雷鳴が鳴り響き紫電しでんが飛ぶ。大地は割れ、爆風がノエルのスカートを捲るッ!

 ドガンッッッッ!!!

 全てを超越するかのような闘気を纏った”種”が神話級SSモンスター、オリハルコンゴーレムの頭に着弾、奴の頭部を吹き飛ばしバラバラに砕いた!


「なんて物凄い威力なの……、え?なに?この人たち?」

 十数体の【SSR天使】が光の速さで地上に降りて、〈ガンシャ―ライフル〉の発射反動で地面にできた小さなクレーターの周りを取り囲む。

 天使は全員、白銀の髪と瞳、白い肌、無表情。それらがキョロキョロと周囲を見回している。クレーターの中心に立つ僕が見えていないのだ。

「だから一手遅かったと言ったろう」

 アエロリットが僕に掛けたスキル〈神の隠蔽〉――、その効果によって人神と龍神の眷属は僕を認識できない。

 5000年前は無かったスキルだ。新しいスキルを創造するには数百年という、長い年月を要する。

 アエロリット……、この日の為にこのスキルを用意したのか。
 ふっ、流石だよ。お前は……。

 僕はそんな天使達の間をすり抜けると、腰に差していた”刀”を抜きざま――、女天使の首を切り落とした。刀を鞘に戻す。

 天使の首はトスっと地面に落ち、体は地面に倒れる。切り口からは血は出ない。

「人の成れの果てか……、可哀想に。ノエル行こう」

 そう呟くと、頭部を失い倒れたオリハルコンゴーレムへ向かって歩き出した。

 僕を追ってきたノエルが。

「ゼツ君、あの人死んじゃったよ」

「あれは生物じゃないんだ。モンスターみたいな存在なんだよ」

 天使に生はない。レベルカンストした者が、天国愛のスキルで【天使】に変えられるわけだが、その際に生を奪われるのだ。

 僕の行為は【LR人神】天国愛への宣戦布告である。



【クリリス視点】

 巨大なオリハルコンゴーレムの頭がバラバラになって弾け飛んだ。

 ゼツ・リンダナがやったのか!?

 余りの威力に呆然としていた私に裸のおじさんが話し掛けてきた。

「ぐへへへ、【】ですね」

「ッ!?貴様、何者だッ?」

「あっしはタカヒロ、――ゼツ様のホールブラザーズです」

 この男が……タカヒロ!!

「――ゼツ様がアレを始末したら、一緒に〈バビロンの塔〉へ飛びやしょう」

「わかった」

 私は恥ずかしくて裸の男を直視できないので、倒れたオリハルコンゴーレムを見詰めながら頷いた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

処理中です...