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11話目 欲情と乱入者

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 …おかしい。

 一日セックスしてないだけなのに、なんかすげームラムラする。

 いや、前も毎日のように女抱いてたし、男の性欲的には普通なんだろう。

 でも今はチンコじゃなくて、無性に尻が疼く。
 
 尻んなかにカイトの凶悪チンコ入れて、めちゃくちゃに犯されたい。

 昨日カイトは「今日はゆっくり休んでね」と言ったきり、仕事が忙しいのか食事を持ってきたのは絹川だった。

 夜が明け朝になり、今目の前で朝食を並べているカイトに、藤村は頬杖をつきながらジトリと悩ましげな視線を送った。

「なぁ~、カイトぉ」

「え、どうしたのユーサクさん。そんなグデグデな表情して、かわいいね」

「俺の尻、どうなっちゃったんだろうな…」

「え、切れた?切れ痔?どこどこ見せて!!」

 ものすごい勢いでパンツをずらそうとしてくるカイトの頭を、手のひらで思い切り叩き落とした。

「切れ痔愛好家かてめぇは!?ちげぇよ、ムラムラしてんだよ、チンコぶち込めやオラ」

「なるほど、やる気十分てことだね。安心してよ、今日は仕事あるから」

「仕事?まーた変な薬使うのか」

「まあまあ、それは行ってみてのお楽しみ」



 朝食を食べ終わり、二人はいつもの実験室に入った。

「今日は、痛みを緩和する媚薬を試すよ」

「それ、鎮痛剤じゃだめなのか」

「鎮痛剤だと痛みを和らげるだけだけど、さらにセックス中の感度を上げたいからね」

 慣れた手つきで、カイトが藤村の首元をはだけていく。

「ちょっと意識がボンヤリするかもだけど、大丈夫だからね」

 注射も最初は怖かった。

 なのに今は慣れてきて、針が皮膚を破る感触が、だんだん癖になってきてる自分が恐ろしい。

 ぬるい液体が首の血管を通って、徐々に血液と混じって熱く流れていく。

「うっ……」

「どう?」 
 
「ん…なんか、ぬるま湯に浸かってる気分」

「そっか。なんか苦しかったり、辛いことがあったら言ってね」

「…わかった」 

 なんというか、いつになく治験っぽいことをしている気がする。

 最初は無理やりだったし、この前は過去のことをベラベラほじくり返されたし。

 どう考えても、治験の仕事の範囲を超えている。

 高額だから色々訳あり…みたいなかんじなんだろう。

 この仕事には、何か絶対に裏がある。

 今更引き返せない、なかったことにはできない何かがあると、藤村はここまでこの研究所で過ごしてきて、強く確信していた。

「ユーサクさん、ちょっと触るよ」

「んぅ、ぁ…」

 頬にカイトの手が触れる。ひんやりして気持ちがいい。

「少しだけ体温が上がったね、でも平熱範囲内だ。どうかな?触られる感触は」

「もっと…カイトの指で、全部、触ってほしい」

 だいぶ薬が回ってきたんだろう。意識と一緒に理性も溶けて、口から出るおねだりすら心地いい。

 口元へ来た白い親指をちゅ、としゃぶると、カイトがごくりと喉仏を上下させた。

「まだ、ダーメ。もうちょっとだけ我慢して」

「あと何分?」

「効果が完全に出るまで、十分くらい」

「十分経ったら、好きにしていいのか…?」

「そうだよ。だからもう少しだけ、ね」

「…わかった」

 渋々カイトの指を口から離し、藤村は天井を仰いだ。

 天井の壁に埋め込まれた白い照明がまぶしくて、思わず目を反らす。

 まぶたを閉じて残像の数を数えながら、十分が経過するのをぼんやりと待った。

 隣ではカイトが、パソコンに向かって何かをカタカタ入力している。

 タイピングの音を子守歌に、藤村はうつらうつらと眠りかけていた。

 その時だ。

 部屋の向こうから、大勢の足音が聞こえた。
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