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9話目 化けもの級

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もう……どのくらい、こうされているんだろう。

 拘束を外す代わりに、両手首と両足首と繋げる拘束具を装着され、ひたすらカイトの指で前立腺をこねられ続けていた。

「ユーサクさん、身動きできないの好きだね。女関係爛れてるって聞いたけど、本当はいじめられたかったんじゃない?……って、聞こえてないか」

「あぁっ……う、んぅっ、ぁ……?」

 媚薬を使われれば言い訳にできたのに、今はそれも許されない。

 ただ、男として備えられた体の弱点を的確に攻められ、藤村の理性はどろどろに溶かされていった。

「きもちいねぇ…きもちぃねぇ。かわいいよユーサクさん。ボクの指でこんなトロ顔になっちゃって、ホント。──こわしちゃいたい」

 視界がぼやけてても分かる。……ヤバい、どこでスイッチが入った?

 まるで、『人を命を弄ぶのが愉しくてたまらない』みたいな顔した男が、藤村の首に冷たい指をかける。

「ぐッ……!?」

 絡みついてくる五本の指は、容赦なく首の急所を締め上げてきた。血がうまく回らなくなって、意識がぼーっとかすんでいく。

 空いた右手でぐりぐりと前立腺を潰され、さらに酸欠になった脳がハクハクと口で動く。

「苦しい?苦しいねぇ。でも、きもちいいよねぇ。ユーサクさんの顔…さっきよりずっと、とろとろになってるよ」

「カヒュッ……あ、ぇ……か、はっ……」

 苦しいのと気持ちいいのと、ぐちゃぐちゃになった意識が、今にも遠のこうとして白く染まる。

「あ、ダメダメ。死んじゃだめだよ。」

 パッ、と指が離れた。

「がはッ、はぁっ……はっ、はぁ……」

 ビクンッ、ビクンと体が跳ね、酸素を欲しいままに吸い込んだ。

 未だ視界のぼやける涙目で、カイトを上目遣いに睨む。

「てっ、めぇ…殺す気かよ、ケホッ…」

「加減は知ってるから、ダイジョーブだよ」

 打って変わったように、カイトに表情が戻っている。

 カイトのこの、急に性格が変わるような現象は、一体何なのか。

 分からないまま、カイトが服を床に投げ捨てたことで、今度は藤村の顔色が変わった。

「じゃあ…次は、ボクで感じて?」

「は…冗談だろ」

 カイトの股間にぶら下がっていたものは、自身に自信があった藤村が恥ずかしくなるくらい……とにかくデカかった。

「最初見せた時、絹川に言われたんだよね。『カイトのそれぶち込まれるくらいだったら、豚と交尾した方がマシだ』って。ねぇ、どういう意味だと思う?」

「あぁ。……確かに、凶悪かもな」

「ボク、あんまり他の人のやつ見たことないから分からないんだよね。あ、ユーサクさんはそこそこデカいよ。で、絹川はもうちょっとデカい」

「ちょっと待て。今、俺より絹川の方がデカいって言ったか?」

「うん」

「嘘だろ!?」

「ホントだよ。あ、でも太さはユーサクさんのが太いかも。絹川さんは、縦長い感じかな」

「ハハッ、長細いだけのチンポなんかヒモ同然だぜ。俺の勝ちだな」

「じゃあボクのは?」

「化け物級」

「化け物みたいに小さいってこと?」

「バケモンみたいにでけぇってことだよ!!」

「よかった!チンポおっきい方が、きっと前立腺に当たるよね」

「あ、あぁ……そう、だな」

 心底嬉しそうに笑うカイトに、藤村は頬をヒクつかせるしかなかった。









 ──結論から言えば。カイトのチンコは、めちゃくちゃ気持ちよかった。

 揉み解された前立腺を太い竿が押し潰して、同時に奥までイヤというほどいじめ抜いてくる。

「ユーサクさん。ボクのチンポ、今までエッチした中で何番目?」

「いちばん…いちばんきもちいッ……ダントツいちばん、だから……あ゛っ、う……」

 拘束を外され、四つん這いにされた尻へなんかローション?みたいなのを塗られて、ぬるぬるにされて。
 
 体の中を埋め尽くして支配される快感が、体の奥の奥まで刻み込まれてしまった。

「じゃあ、もうボク以外とのエッチはいらないね」

「いらないっ、いらないから……だからもっと、もっとチンコぶちこんでくれ……ッ」


 ──数十分後。

「……俺とお前の記憶全部消して、しにたい」

 最中に色々口走ったのを思い出し、羞恥のあまり藤村は両手で顔を覆ってゴロゴロ転がりまわった。

「カイト、ここ数時間分の記憶を消す薬を注射してくれ。じゃないと俺は、俺は……!」

「うんうん、かわいかったねユーサクさん。ちゃんと録画も取ってあるから、何回でも思い出させてあげるね」

「はぁッ!?どこにカメラなんか」

「あそこ」

 本来なら被験者を拘束するための設備なのに、まるでベッドのような使われ方をしている。

 隣で寝そべるカイトが指さした棚を、藤村は血眼になって手当たり次第にを暴いていった。

 だが、中にはファイルや書類しか入っていない。

「あそこってどこだよ?カメラなんかねぇじゃねぇか!!」

「残念。もう回収済みだから、壊せませーん!」

「なっ、いつの間に……」

「ボクが誰かを好きになることなんて、めったにないんだもん。だから、どうしても残しておきたかったんだ」

 どこか含みのある言い方をするカイトを、藤村は怪訝な表情で振り返った。

「なんだそりゃ、もうすぐ死ぬみたいに言いやがって」

「まさか、ボクは死なないよ。…あ、そうだ!三日後に大事な報告があるから、予定空けといてね」

「予定も何も、俺の予定はお前らのさじ加減だろうが」

「あ、そうだったね。んじゃ、三日後はボクに付き合ってもらうから」

 三日後っていうと…七夕だな。

 ぼんやり考えている間にカイトに病衣を着せられ、一八〇はある藤村の身体が軽々と横抱きにされる。

 なんでこいつ、細っこいくせにこんな力が強いんだ。

 今更そんな疑問を抱きながらも、藤村はカイトのするままに流されていた。

 それに、何かと世話を焼いてくるが、何故こんなにも自分に執着するのだろう。

 (そういえば俺、カイトのことをほとんど何も知らないな)。

 カイトのことを何も知らなすぎると思った藤村は、とりあえず頭に浮かんだことを質問してみた。

「カイト。お前はいつも、どこで寝てるんだ」

「んー?ナイショ」

「なんでだよ」

 お前のことも教えろと言いかけたが、残念ながら眠すぎて口が回らない。

 汗ばんだ身体に、カイトの低めの体温が心地良い。
 
 廊下を歩く振動にゆらゆら揺られながら、だんだんと意識が溶けていく。

「寝てていいよ。体もキレイにするし、全部ボクがやっとくから」

「ん?…あぁ、うん……」

 愛情ってのは、もしかするとこういうことを言うのだろうか?

 親父にわいせつ行為をされた後、藤村は薬で眠らされて孤児院へ捨てられた。

 それ以来ずっと、自分を捨てたあいつらを権力で見返してやりたいと思っていた。

 刑事になったのもそのためだ。
 
 だが本心ではただ淋しくて、ずっとどこかで他人からの愛を求めていたのかもしれない。

 まどろみの中ぼんやりそんなことを考えながら、藤村は無意識にカイトの体へ頬をすり寄せていた。

「おやすみなさい、ユーサクさん」

 低く柔らかいカイトの声が、心地よく耳に響く。

 藤村はゆっくりと、沈むように意識を手放していった。
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