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転生・蘇る大帝
第9話 恐怖蔓延
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「よし、司令官を討ち取った……マルクス団長」
「……」
「マルクス!」
「は!? は、はい! ……帝国軍大将を討ち取ったぞおお! このまま敵を殲滅する! 続けええぇぇ!」
レオンハルトの戦いをただ見ていることしかできなかったマルクスは放心状態に陥っていた。
(なんという強さ! 馬上からとは言え帝国の将軍を1人で討ち取るとは。同年代でかなう者など果たして何人いるのか?)
原因であるレオンハルトに一喝されることで、やっと意識と取り戻し、作戦を遂行すべく勝鬨をあげた。
レオンハルト自らが勝鬨をあげない理由は、単純に声が幼いからだ。
いくらレオンハルトとは言え、子供の叫び声では帝国軍もさほど動揺しないだろうと思い、マルクスにその任を任せた。
無論、威跡・覇を使えばその限りではないが、レオンハルトは訳あって魔力消費を抑える必要がある。
「さて、作戦続行だ!俺に続けえぇ!」
「「「おおぉォ!」」」
◆
遡ること4日前。北の砦にて、レオンハルトは上級騎士達を集めて作戦説明していた。
「作戦は至極単純。敵軍に突っ込んで大将首を取る!」
「「「……」」」
「……そんな目で見るな。ちゃんと考えはある」
「……最初からそれを聞かせてくださいよ」
「ごっほん……まずは地図を見てくれ」
そういってセバスチャンに地図を広げさせる。
北の国境付近の地形が細かく記された地図である。それこそ、森や小高い丘までもがわかるようになっている。さすが軍用の地図といったところだろう。
「今の帝国軍の進軍速度を見ると、およそ四日後にこの辺りに差し掛かるだろう」
レオンハルトが指差したのは、大森林の入り口より少し南。つまり、左右が森に囲まれた地形である。
「ここで、夜襲を仕掛ける」
「しかし、帝国軍も夜襲を警戒しているはず。そう簡単にはいかないのでは?」
「ああ、だからひと仕掛けをしようじゃないか。なんせ最近の朝は冷えるからな」
「「「??」」」
レオンハルトの作戦はこう。
四日後の敵の駐屯予定地であろう場所を囲むように、魔法が得意な騎士を4人1組で配置する。それぞれが火、水、風、土の魔法が使える。
水魔法の水を火魔法で温め、出来上がった湿気たっぷりのぬるい空気を今度は風魔法で敵駐屯予定地に運び、留めさせる。
この仕事で一番大変なのは風の使い手であるが、そこは魔道具で補い、長時間の発動を実現しいる。
さて、夜が明ける前の段階で火魔法と水魔法を解除するとどうなるか。熱を失い、空気は一気に冷えるだろう。
しかし、風魔法のせいで湿っぽい空気は周囲に広がることなく、熱だけが奪われていく。空気中の水分は急激に冷やされることでミスト状に広がり、濃霧の出来上がりだ。
ここで土の魔法使いは何をしているのだというと、まだ何もしていない。
彼らの仕事はレオンハルトの突撃に合わせて魔法を発動することである。
行軍による地響きを誤魔化すことももちろんあるが、1番の目的は大軍の存在を偽ることにある。
ある意味この作戦で一番重要な役割であろう。そして、その重要性は今明らかになる。
◆
レオンハルト達が駆け回り、帝国軍を混乱させていた。優先的に伝令兵を狙い、敵の指揮系統は確実に麻痺していった。
そんな中、1人の伝令兵が命からがらといった様子で、とある大隊長のもとへ駆け込んだ。
その鎧はおびただしいほどの血を浴びており、死ななかったことが奇跡であることを物語っている。
「ほ、報告します!」
「なんだ!?一体何が起こっておるのだ!」
「作戦が皇国軍に漏れ、現在我が軍は皇国軍の奇襲を受けております!」
「なんだと!? ……総司令殿はなんと?」
「それが……」
「なんだ? はっきり申せ!」
「っは! 総司令官は敵将によって討ち取られたとのこと」
「そんな……ばかな」
「さらに報告です!」
「まだあるのか!?」
「っは! 前方より皇国軍が確認されました。その数およそ1万!」
「ありえん!?」
まさに青天の霹靂といった様子で大隊長は絶句する。しばらくすると、我に返り、次の一手を打つべく行動する。
「こうしてはおれん! ワシは軍をまとめるために動く。お主はこの情報を他の隊長にも伝えろ!」
「っは!」
返事をした伝令兵が、小さくほくそ笑んだのを見たものはいない。
◆
総司令官が討たれたこと、皇国軍1万が迫っていること。この情報は瞬く間に帝国軍内に広まり、駐屯地内は慌ただしく動いていたのだ。
軍をまとめるために奔走するもの。
命惜しさに敵前逃亡するもの。
どうすることもできず呆然とするもの。
1番目は比較的少なく、2番目も全体で見れば少数と言えるだろう。しかし、逃走者、戦闘不能者の数は確実に増えており、間も無く1割に届こうとしていた。
帝国軍にとっては間違いなく敗北であろう。しかし、濃霧のせいで彼らはそれに気づかない。
そんな彼らに、レオンハルトはトドメを刺そうとしていた。
「さて、やるか……」
『悠久を司りし刻を 希望を司りし光を それら総てを統べる異端なる特異点よ』
その言葉と共に帝国軍の頭上に僅かな黒ずみは発生する。
それが徐々に徐々にと、自らのテリトリーを広げるかのように、周りの空間を侵蝕していく。
『暁闇の写し身 混沌の化身よ 集えよ集え 揺らげよ揺らげ』
黒い点だったそれは、やがて大きな球体となっていった。何もかもそこに有るかのような錯覚。何もかもが混ざり合ったかのような姿。
それでもそれが球であると認識できるのは、その存在異質さ故だろう。
『我が願いを聞き届けよ 今ぞ開闢の時 この地に顕現せよ』
その球に光がさす。
いや、光がさしているのではなく、吸い込まれているのだ。球体の中心部に向かって、螺旋を描くかのように。
瞬間、そこにはなんとも幻想的に物体が生まれた。
外側は白く光る透明な膜でも張られているかのようなそれは、しかしながらはっきりとその中心まではっきりと見通すことができる。
『万遊羅玉』
その霊言と共に黒の球体が動く。いや、球体が動くというのは正しくないだろう。正確には球体以外のすべてが動いたというべきであろう。
人、武器、天幕、何もかもが球体に吸い込まれていく。
「う、うわあぁぁ!」
「た、助けてくれぇ!」
「やだぁ、いやあああ!」
なんとか周りの木々や岩にしがみ付いた者も
「なあ!?」
「木が! 嘘だろ!」
「根元から! う、うあああぁ!」
大地が抉られた。そう形容するしかないその様子は、まさに天地開闢のそれではないだろうか。
霧も同時に吸い込んでいるため、大気が渦巻いているのがよくわかる。
新たな世界が産声をあげているかのような。世界同士がぶつかり合うかのような。
世界と世界の狭間は一体どんなものか。それは吸い込まれたものにしかわからないだろう。
◆
どれほど時間がたったのか。
実際それほど時間がたっているわけではない。精々2、3分ぐらいだろう。
しかし、大きく歪められた空間では時間の流れすら緩やかになったのか。それとも、あまりの命の危機に時間がゆっくり感じたのか。それを知るものはいない。
やがて、黒い球体に光が失われようとしていた。それと共に吸引力も低下し、なんとかその場に留めた者たちを吸い込むだけの力は残されていなかった。
「た、助かったのか?」
そんな安易な感想を漏らした彼を、責めるものはいないだろう。皆同じ思いである。
しかし、これは俗にフラグと呼ばれるものであることを、次の瞬間、誰もが知ることとなる。
黒い球体は次第に大きくなっていた。いや、大きくなっているのではない。落ちてきているのだ。
「う、うあああ!」
「く、来るなあぁ!」
「た、助けっ!……」
まるで小型の隕石が墜落したかのようが轟音を周りに響かせならが、球体は降りる。
その巨体によって押しつぶされたものはどれほどいたのだろうか。これこそ、知るものはいないだろう。
球体の落下の衝撃で周りに旋風が巻き起こる。やがて上昇気流となり、一部の霧を吹き飛ばす。それにより僅かに晴れた視界。
視界が晴れたことは幸か、不幸か。少なくとも、見えてしまった、見えなければよかった、と兵士たちは思った。
そこには、巨大なクレーターができていた。
それこそ、百人は納まるほど巨大な。その下には一体何人の同胞が眠っているのだろうか。それを知るものはいない。
なぜなら、押しつぶされたであろう帝国兵の体はどこにもなかったからだ。
静寂な霧の中、離れた場所で見ていた1人の兵士がいち早く我に返り、わざとらしく叫んだ。
「きょ、極大魔法だと!?」
それに呼応するように別の兵士が、
「こ、皇宣魔導士だあ! 皇宣魔導士がきてるぞ!」
動揺は瞬く間に広まった。皇宣魔導士といえば、6人しかいない皇国の最高戦力であり、1人で一軍に匹敵するとまで言われている。
それがこんな場所にきているとなれば、敗戦必至。
「く、くそおぉ!」
「おい! 貴様どこへいく!」
「逃げるに決まってんだろう! あんな化物相手にできるかぁ?!」
「貴様! 敵前逃亡は重大な軍規違反だぞ!すぐに戻れ!」
「うるせぇぇ! だったらあんたがあれをどうにかしろよ! そもそも総司令官もやられたんじゃあもう負け戦だよ負け戦!」
「お、おい!」
恐怖は、伝染する。ただでさえ視界の悪い霧に囲まれ、何が起こるかわからない恐怖の中、常に神経を尖らせてきた帝国兵。
屈強な帝国兵といえど、滅多に遭遇する事態ではない。
異変は人を弱くする。想定外の出来事に対応できるものは少ない。
その精神を繋いでいたか細い糸が今、断ち切られる。
「わああぁぁ!」
「クソがぁ!」
「撤退だ! 撤退!」
「おい、貴様!何を勝手なことを!」
「黙れぇぇ!!」
誰も彼も我先に逃げ出す。彼らがみっともないのではない。敵が強すぎるのだ。
「……」
「マルクス!」
「は!? は、はい! ……帝国軍大将を討ち取ったぞおお! このまま敵を殲滅する! 続けええぇぇ!」
レオンハルトの戦いをただ見ていることしかできなかったマルクスは放心状態に陥っていた。
(なんという強さ! 馬上からとは言え帝国の将軍を1人で討ち取るとは。同年代でかなう者など果たして何人いるのか?)
原因であるレオンハルトに一喝されることで、やっと意識と取り戻し、作戦を遂行すべく勝鬨をあげた。
レオンハルト自らが勝鬨をあげない理由は、単純に声が幼いからだ。
いくらレオンハルトとは言え、子供の叫び声では帝国軍もさほど動揺しないだろうと思い、マルクスにその任を任せた。
無論、威跡・覇を使えばその限りではないが、レオンハルトは訳あって魔力消費を抑える必要がある。
「さて、作戦続行だ!俺に続けえぇ!」
「「「おおぉォ!」」」
◆
遡ること4日前。北の砦にて、レオンハルトは上級騎士達を集めて作戦説明していた。
「作戦は至極単純。敵軍に突っ込んで大将首を取る!」
「「「……」」」
「……そんな目で見るな。ちゃんと考えはある」
「……最初からそれを聞かせてくださいよ」
「ごっほん……まずは地図を見てくれ」
そういってセバスチャンに地図を広げさせる。
北の国境付近の地形が細かく記された地図である。それこそ、森や小高い丘までもがわかるようになっている。さすが軍用の地図といったところだろう。
「今の帝国軍の進軍速度を見ると、およそ四日後にこの辺りに差し掛かるだろう」
レオンハルトが指差したのは、大森林の入り口より少し南。つまり、左右が森に囲まれた地形である。
「ここで、夜襲を仕掛ける」
「しかし、帝国軍も夜襲を警戒しているはず。そう簡単にはいかないのでは?」
「ああ、だからひと仕掛けをしようじゃないか。なんせ最近の朝は冷えるからな」
「「「??」」」
レオンハルトの作戦はこう。
四日後の敵の駐屯予定地であろう場所を囲むように、魔法が得意な騎士を4人1組で配置する。それぞれが火、水、風、土の魔法が使える。
水魔法の水を火魔法で温め、出来上がった湿気たっぷりのぬるい空気を今度は風魔法で敵駐屯予定地に運び、留めさせる。
この仕事で一番大変なのは風の使い手であるが、そこは魔道具で補い、長時間の発動を実現しいる。
さて、夜が明ける前の段階で火魔法と水魔法を解除するとどうなるか。熱を失い、空気は一気に冷えるだろう。
しかし、風魔法のせいで湿っぽい空気は周囲に広がることなく、熱だけが奪われていく。空気中の水分は急激に冷やされることでミスト状に広がり、濃霧の出来上がりだ。
ここで土の魔法使いは何をしているのだというと、まだ何もしていない。
彼らの仕事はレオンハルトの突撃に合わせて魔法を発動することである。
行軍による地響きを誤魔化すことももちろんあるが、1番の目的は大軍の存在を偽ることにある。
ある意味この作戦で一番重要な役割であろう。そして、その重要性は今明らかになる。
◆
レオンハルト達が駆け回り、帝国軍を混乱させていた。優先的に伝令兵を狙い、敵の指揮系統は確実に麻痺していった。
そんな中、1人の伝令兵が命からがらといった様子で、とある大隊長のもとへ駆け込んだ。
その鎧はおびただしいほどの血を浴びており、死ななかったことが奇跡であることを物語っている。
「ほ、報告します!」
「なんだ!?一体何が起こっておるのだ!」
「作戦が皇国軍に漏れ、現在我が軍は皇国軍の奇襲を受けております!」
「なんだと!? ……総司令殿はなんと?」
「それが……」
「なんだ? はっきり申せ!」
「っは! 総司令官は敵将によって討ち取られたとのこと」
「そんな……ばかな」
「さらに報告です!」
「まだあるのか!?」
「っは! 前方より皇国軍が確認されました。その数およそ1万!」
「ありえん!?」
まさに青天の霹靂といった様子で大隊長は絶句する。しばらくすると、我に返り、次の一手を打つべく行動する。
「こうしてはおれん! ワシは軍をまとめるために動く。お主はこの情報を他の隊長にも伝えろ!」
「っは!」
返事をした伝令兵が、小さくほくそ笑んだのを見たものはいない。
◆
総司令官が討たれたこと、皇国軍1万が迫っていること。この情報は瞬く間に帝国軍内に広まり、駐屯地内は慌ただしく動いていたのだ。
軍をまとめるために奔走するもの。
命惜しさに敵前逃亡するもの。
どうすることもできず呆然とするもの。
1番目は比較的少なく、2番目も全体で見れば少数と言えるだろう。しかし、逃走者、戦闘不能者の数は確実に増えており、間も無く1割に届こうとしていた。
帝国軍にとっては間違いなく敗北であろう。しかし、濃霧のせいで彼らはそれに気づかない。
そんな彼らに、レオンハルトはトドメを刺そうとしていた。
「さて、やるか……」
『悠久を司りし刻を 希望を司りし光を それら総てを統べる異端なる特異点よ』
その言葉と共に帝国軍の頭上に僅かな黒ずみは発生する。
それが徐々に徐々にと、自らのテリトリーを広げるかのように、周りの空間を侵蝕していく。
『暁闇の写し身 混沌の化身よ 集えよ集え 揺らげよ揺らげ』
黒い点だったそれは、やがて大きな球体となっていった。何もかもそこに有るかのような錯覚。何もかもが混ざり合ったかのような姿。
それでもそれが球であると認識できるのは、その存在異質さ故だろう。
『我が願いを聞き届けよ 今ぞ開闢の時 この地に顕現せよ』
その球に光がさす。
いや、光がさしているのではなく、吸い込まれているのだ。球体の中心部に向かって、螺旋を描くかのように。
瞬間、そこにはなんとも幻想的に物体が生まれた。
外側は白く光る透明な膜でも張られているかのようなそれは、しかしながらはっきりとその中心まではっきりと見通すことができる。
『万遊羅玉』
その霊言と共に黒の球体が動く。いや、球体が動くというのは正しくないだろう。正確には球体以外のすべてが動いたというべきであろう。
人、武器、天幕、何もかもが球体に吸い込まれていく。
「う、うわあぁぁ!」
「た、助けてくれぇ!」
「やだぁ、いやあああ!」
なんとか周りの木々や岩にしがみ付いた者も
「なあ!?」
「木が! 嘘だろ!」
「根元から! う、うあああぁ!」
大地が抉られた。そう形容するしかないその様子は、まさに天地開闢のそれではないだろうか。
霧も同時に吸い込んでいるため、大気が渦巻いているのがよくわかる。
新たな世界が産声をあげているかのような。世界同士がぶつかり合うかのような。
世界と世界の狭間は一体どんなものか。それは吸い込まれたものにしかわからないだろう。
◆
どれほど時間がたったのか。
実際それほど時間がたっているわけではない。精々2、3分ぐらいだろう。
しかし、大きく歪められた空間では時間の流れすら緩やかになったのか。それとも、あまりの命の危機に時間がゆっくり感じたのか。それを知るものはいない。
やがて、黒い球体に光が失われようとしていた。それと共に吸引力も低下し、なんとかその場に留めた者たちを吸い込むだけの力は残されていなかった。
「た、助かったのか?」
そんな安易な感想を漏らした彼を、責めるものはいないだろう。皆同じ思いである。
しかし、これは俗にフラグと呼ばれるものであることを、次の瞬間、誰もが知ることとなる。
黒い球体は次第に大きくなっていた。いや、大きくなっているのではない。落ちてきているのだ。
「う、うあああ!」
「く、来るなあぁ!」
「た、助けっ!……」
まるで小型の隕石が墜落したかのようが轟音を周りに響かせならが、球体は降りる。
その巨体によって押しつぶされたものはどれほどいたのだろうか。これこそ、知るものはいないだろう。
球体の落下の衝撃で周りに旋風が巻き起こる。やがて上昇気流となり、一部の霧を吹き飛ばす。それにより僅かに晴れた視界。
視界が晴れたことは幸か、不幸か。少なくとも、見えてしまった、見えなければよかった、と兵士たちは思った。
そこには、巨大なクレーターができていた。
それこそ、百人は納まるほど巨大な。その下には一体何人の同胞が眠っているのだろうか。それを知るものはいない。
なぜなら、押しつぶされたであろう帝国兵の体はどこにもなかったからだ。
静寂な霧の中、離れた場所で見ていた1人の兵士がいち早く我に返り、わざとらしく叫んだ。
「きょ、極大魔法だと!?」
それに呼応するように別の兵士が、
「こ、皇宣魔導士だあ! 皇宣魔導士がきてるぞ!」
動揺は瞬く間に広まった。皇宣魔導士といえば、6人しかいない皇国の最高戦力であり、1人で一軍に匹敵するとまで言われている。
それがこんな場所にきているとなれば、敗戦必至。
「く、くそおぉ!」
「おい! 貴様どこへいく!」
「逃げるに決まってんだろう! あんな化物相手にできるかぁ?!」
「貴様! 敵前逃亡は重大な軍規違反だぞ!すぐに戻れ!」
「うるせぇぇ! だったらあんたがあれをどうにかしろよ! そもそも総司令官もやられたんじゃあもう負け戦だよ負け戦!」
「お、おい!」
恐怖は、伝染する。ただでさえ視界の悪い霧に囲まれ、何が起こるかわからない恐怖の中、常に神経を尖らせてきた帝国兵。
屈強な帝国兵といえど、滅多に遭遇する事態ではない。
異変は人を弱くする。想定外の出来事に対応できるものは少ない。
その精神を繋いでいたか細い糸が今、断ち切られる。
「わああぁぁ!」
「クソがぁ!」
「撤退だ! 撤退!」
「おい、貴様!何を勝手なことを!」
「黙れぇぇ!!」
誰も彼も我先に逃げ出す。彼らがみっともないのではない。敵が強すぎるのだ。
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