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第四章 パラレルワールド
第37話 大広間
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両側を何本もの太い柱で支えられた柱廊を、一行は用心しながら進んだ。
正面玄関は、頭上を仰ぎ見るほど高く大きな鉄製の扉で閉め切られていた。重厚な扉は、ひとりでは押すことさえできそうにない。
「トランスアデーレ」
鉄の扉に手をかざして、ハーディがカンターメルを唱えた。
それからかざしていた手を下に降ろすと、振り返って首を振った。
『見える範囲に人がいる様子はないな。ひとまず僕ひとりで行ってみるよ』
ハーディのその申し出をクレアが一蹴した。
『もうこの際、みんなで行こうよ。どのみち乗り込むんだから』
クレアの言葉に、全員がうなずいた。
『オーケー。じゃあそうしよう』
肩をすくめてから、ハーディは納得するようにうなずいた。それから扉に向かって「プラレッシオ」と、唱えた。
すると、扉に人がひとり通り抜けられるほどの空間ができた。
『さあ、行こう』
ハーディを先頭に、一行は宮殿の中へと足を踏み入れた。
扉を抜けた先には、天井の高いホールが広がっていた。左手には太い柱に支えられたらせん階段が上へと続き、ホールを越えた先には、正面に木製の大きな扉が構えている。
左右には、幅の広い通路が続いている。床も壁も大理石が張られ、天井には石を削った細かな装飾が施されていた。
建物内に人がいるような気配はない。しかし古代の建物だというのに、床や壁は丁寧に磨き上げられたかのように綺麗だった。ハーディが灯す明かりをきらきらと反射している。
『儀式が行われるとすれば大広間だろう。広間はたぶんこっちだと思う』
賓客を迎える広間が入り組んだ場所にあることはない。
ハーディはホールを突っ切って正面の扉の方へ向かった。そして再び扉に空間を作ると、一人ひとりくぐらせた。
扉を抜けた先には、広い中庭があった。暗いせいもあるが、天井はそのまま地上の空に続いているのではないかと思えるほどの高さがある。
まるで古城をめぐるミステリーツアーに参加する団体客のように、一行はきょろきょろと見回しながらゆっくりと歩を進めた。
中庭を抜けた先には、壁や天井に豪華な装飾の施された廊下が続いていた。左右には等間隔に通路や階段が伸びている。
左右に走る通路には脇目も振らず、ハーディは真っ直ぐ突き進んだ。皆黙ってそれに続いた。
そして、大きな扉を構える部屋に突き当たった。
『たぶん、ここが大広間だ』
扉を前にハーディが言った。
皆の覚悟を確認するように、ハーディは一同の顔を見回した。全員、無言でうなずき返した。
扉に鍵は掛かっていなかった。ハーディがノブを回すと、大きな扉がギィと音を立ててゆっくりと開いた。
その向こうには、暗闇のなか火の玉のように浮かび上がるうっすらとした光があった。
一行は、警戒しながら中へ足を踏み入れた。
中はとても広かった。バスケットコートを優に3つ分は作れそうなほどの広さがある。
天井は高く、広間をぐるりと囲うようにバルコニー席が設けられ、上からもこの会場を眺められるような設計になっていた。
その広間の中央に、仄かな光を発するバレーボールほどの大きさの丸い石、“クリスタルエレメント”があった。
クリスタルエレメントは、クテアのように宙に浮かぶ台の上に設置されていた。ちょうどピラミッドを形成するように頂点にひとつ、その下に4つ配置されている。
暗闇のなか仄かな光を発して宙に浮かび上がるクリスタルエレメントは、太古の昔からここでこうして祀られていたのではないかと思えるほどの神秘さを醸し出していた。
一行は、誰からともなく吸い寄せられるようにクリスタルエレメントへと近づいた。
『あったね』
クリスタルエレメントを前に、クレアがつぶやいた。
『うん』
クリスタルエレメントを見つめたまま、クリスが返事をした。
『早いところ回収して、地上へ戻りましょう』
マーティスがそう言って、クリスタルエレメントへ手を伸ばした。
するとバチッと大きな音がして、その手が弾かれた。マーティスは顔を歪め、弾かれた手を押さえた。
『バリアが施されているね』
ハーディがそう言った直後、広間の照明に次々と明かりが灯り、一行の姿が照らし出された。
正面玄関は、頭上を仰ぎ見るほど高く大きな鉄製の扉で閉め切られていた。重厚な扉は、ひとりでは押すことさえできそうにない。
「トランスアデーレ」
鉄の扉に手をかざして、ハーディがカンターメルを唱えた。
それからかざしていた手を下に降ろすと、振り返って首を振った。
『見える範囲に人がいる様子はないな。ひとまず僕ひとりで行ってみるよ』
ハーディのその申し出をクレアが一蹴した。
『もうこの際、みんなで行こうよ。どのみち乗り込むんだから』
クレアの言葉に、全員がうなずいた。
『オーケー。じゃあそうしよう』
肩をすくめてから、ハーディは納得するようにうなずいた。それから扉に向かって「プラレッシオ」と、唱えた。
すると、扉に人がひとり通り抜けられるほどの空間ができた。
『さあ、行こう』
ハーディを先頭に、一行は宮殿の中へと足を踏み入れた。
扉を抜けた先には、天井の高いホールが広がっていた。左手には太い柱に支えられたらせん階段が上へと続き、ホールを越えた先には、正面に木製の大きな扉が構えている。
左右には、幅の広い通路が続いている。床も壁も大理石が張られ、天井には石を削った細かな装飾が施されていた。
建物内に人がいるような気配はない。しかし古代の建物だというのに、床や壁は丁寧に磨き上げられたかのように綺麗だった。ハーディが灯す明かりをきらきらと反射している。
『儀式が行われるとすれば大広間だろう。広間はたぶんこっちだと思う』
賓客を迎える広間が入り組んだ場所にあることはない。
ハーディはホールを突っ切って正面の扉の方へ向かった。そして再び扉に空間を作ると、一人ひとりくぐらせた。
扉を抜けた先には、広い中庭があった。暗いせいもあるが、天井はそのまま地上の空に続いているのではないかと思えるほどの高さがある。
まるで古城をめぐるミステリーツアーに参加する団体客のように、一行はきょろきょろと見回しながらゆっくりと歩を進めた。
中庭を抜けた先には、壁や天井に豪華な装飾の施された廊下が続いていた。左右には等間隔に通路や階段が伸びている。
左右に走る通路には脇目も振らず、ハーディは真っ直ぐ突き進んだ。皆黙ってそれに続いた。
そして、大きな扉を構える部屋に突き当たった。
『たぶん、ここが大広間だ』
扉を前にハーディが言った。
皆の覚悟を確認するように、ハーディは一同の顔を見回した。全員、無言でうなずき返した。
扉に鍵は掛かっていなかった。ハーディがノブを回すと、大きな扉がギィと音を立ててゆっくりと開いた。
その向こうには、暗闇のなか火の玉のように浮かび上がるうっすらとした光があった。
一行は、警戒しながら中へ足を踏み入れた。
中はとても広かった。バスケットコートを優に3つ分は作れそうなほどの広さがある。
天井は高く、広間をぐるりと囲うようにバルコニー席が設けられ、上からもこの会場を眺められるような設計になっていた。
その広間の中央に、仄かな光を発するバレーボールほどの大きさの丸い石、“クリスタルエレメント”があった。
クリスタルエレメントは、クテアのように宙に浮かぶ台の上に設置されていた。ちょうどピラミッドを形成するように頂点にひとつ、その下に4つ配置されている。
暗闇のなか仄かな光を発して宙に浮かび上がるクリスタルエレメントは、太古の昔からここでこうして祀られていたのではないかと思えるほどの神秘さを醸し出していた。
一行は、誰からともなく吸い寄せられるようにクリスタルエレメントへと近づいた。
『あったね』
クリスタルエレメントを前に、クレアがつぶやいた。
『うん』
クリスタルエレメントを見つめたまま、クリスが返事をした。
『早いところ回収して、地上へ戻りましょう』
マーティスがそう言って、クリスタルエレメントへ手を伸ばした。
するとバチッと大きな音がして、その手が弾かれた。マーティスは顔を歪め、弾かれた手を押さえた。
『バリアが施されているね』
ハーディがそう言った直後、広間の照明に次々と明かりが灯り、一行の姿が照らし出された。
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