クリスの物語

daichoro

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第四章 パラレルワールド

第15話 変装

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 翌朝、ベッドの上ではしゃぎ回るベベにクリスは起こされた。



 枕もとのデジタル時計は5:47を示していた。おしっこをしたいというベベを抱いて、トイレに向かった。

 ベベと意思疎通ができるようになってからというもの、トイレで用が足せるようしつけてあったので、トイレシートは必要なかった。

 当然自分ひとりではできないため、抱えてあげなればいけない。



 ベベのおしりをトイレットペーパーで拭いてから、クリスも用を足してリビングへ向かった。

 ダイニングテーブルでは、優里が宿題をしていた。小さく姿を変えたままのエンダが、テーブルの上をトコトコと行ったり来たりしている。



「あ、おはよう」

 起きてきたクリスに気づき、優里が顔を上げて言った。



「おはよう。朝早くから偉いね」

「ううん。昨日寝たのが早かったから、5時には目が覚めちゃって。それですることもないから」



「そっか。紗奈ちゃんは?まだ寝てるの?」と聞きながら、クリスはキッチンに備え付けてある冷蔵庫を開けた。

 中には、水やジュースがぎっしり詰まっていた。クリスは一本のペットボトルを手に取った。そのラベルにはイタリア語で「炭酸水ライム味」と書かれてある。ホロロムルスは、外国語も瞬時に翻訳してくれた。



「紗奈はさっき起きてきて、今シャワー浴びてるよ。わたしもこの後浴びるつもり」



 そうだ。昨日はお風呂に入らずに寝てしまったのだった。そうしたら、ぼくも朝食前にシャワーを浴びておこう。

 クリスはそう思いながら炭酸水をひと口飲んで、むせてしまった。



「炭酸きつっ」

 顔をしかめるクリスを見て、優里がおかしそうに笑った。




『おはよう。みんな昨日はぐっすり眠れたかい?』

 爽やかな笑顔でハーディがやってきた。マーティスも伴っている。ハーディは昨日とは打って変わって、スニーカーにダメージジーンズ、それにTシャツにキャップというラフな装いだった。



『うん。よく眠れたよ』とクリスが返事をすると、ソファに座ったハーディは満足そうにうなずいた。



 シャワーを浴びてからハーディに連絡をしたところ、クリスたちの部屋で朝食を取ろうとハーディが提案した。それでふたり、こうしてやって来たのだった。



『思ったよりみんな起きるのが早かったから、予定を早めて午前中にはサロンへ行こうか』

 ダイニングテーブルに山盛りに用意された、ビュッフェスタイルの朝食を取りながらハーディが言った。



 ハーディによれば、3人の顔は既に闇の勢力に割れているから、万一のために少しでも変装しておくといいということだった。

 闇の勢力も、まさかクリスたち3人が銀河連邦に遣わされてイタリアへやって来ているなどとは微塵も想像していないだろう。しかし、念には念をということだ。



『それと街を歩くときはその格好だと目立つから、後で服を買いに行こう。それは、実際にクリスタルエレメントを奪いに行くときに着たらいいよ』

 3人が着込んだピューネスを指差して、ハーディが言った。



『でも、一応着替えは持ってきてるよ』と優里が言うと、ハーディは分かってるというようにうなずいた。

『でも、どれくらい滞在することになるか分からないだろう?だから多少買い足しておくといい。もちろん、お金の心配はいらないよ』

 ハーディのその言葉を聞いて、紗奈がきらりと目を光らせた。



 ゆっくりと朝食を済ませた後、マーティスをホテルに残し、一行は迎えに来た4WDの大きな車に乗って街の中心地へと向かった。




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