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第四章 パラレルワールド
第4話 夏休み
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期末テストも終わり、あっという間に夏休みを迎えた。
中学生になって初の期末テスト。クリスの順位は学年で真ん中よりちょっと上とまずまずの成績だった。一方、あまり勉強をしている様子のなかった紗奈は5位にランクインしていた。
きっと根本的な頭のつくりが違うのだろうと、クリスは自分を納得させた。
そして夏休み初日の朝、朝食を済ませたクリスは出かける準備をしていた。休みの初日から、紗奈と優里が遊びに来ることになっているからだった。
目的は、優里の守護ドラゴン“エンダ”の初のドラゴン飛翔だ。
エンダはみるみる内に大きくなって、すでに人をひとり乗せるには十分な大きさに育っているということだった。
「あら、いらっしゃい。ちょっと待っててね」
インターホンが鳴って、母親の対応する声がした。興奮して吠えたてるベベは、クリスが部屋のドアを開けると一目散に廊下を走って、階段を駆け下りていった。クリスも後を追いかけて、玄関へ向かった。
「おはよう。早いね」
時刻は8時45分だった。昨日の電話では、9時過ぎに来るという話だった。
「うん。優里が待ちきれないといって早く来たから」
紗奈がそう言ってうしろを振り向くと、優里は照れるように笑って首をすくめた。
「えへへ。ごめんね」
「ううん。全然大丈夫だよ。じゃあ、早速行こうか」
『はやく行こうよ』と、待ちきれない様子でベベが玄関先で足踏みした。
「それじゃあ、おかあさん行ってくるね」
「はーい。気をつけてね。おかあさんお買い物に出かけるけど、お昼には戻ってくるから」
「うん、分かった」
母親に手を振り返して、3人は“お城”へと向かった。
「そういえば、エンダは?」
ベベの後を追いかけながら、クリスが優里に尋ねた。だいぶ大きくなったと聞いていたが、エンダの姿が見当たらない。
「エンダならここにいるよ」
優里はそう言って、Tシャツの左胸についたパイナップル柄のポケットの口を広げた。
すると、そこから緑色の小さなドラゴンが顔を出した。ドラゴンは、ポケットから完全に這い出ると、胸ポケットの縁に手をかけたままクリスの方を振り返った。
親指ほどの大きさしかない、とても小さなドラゴンだった。
『こんにちは』と、幼児のような声が頭に響いた。どうやら、エンダが喋ったようだ。
『こんにちは』と、クリスも返した。
「ずいぶん小さいね」
サイズを変えているということだろう。生まれたての頃よりもはるかに小さくなっている。
「うん。日に日にどんどん大きくなるから、サイズだけでも変えられるように特訓したの」
優里はそう言いながら、キョロキョロと周囲を見回した。そしてエンダを指先に乗せて『エンダ。戻っていいよ』と言った。
エンダは蝶のようにパタパタと飛び立つと、一瞬にしてサイズを変えた。頭上で大きな翼を広げたエンダは、クリスが予想していた以上に大きくなっていた。胴体だけでも軽自動車ほどの大きさがある。
「これが今のエンダだよ。小さくなることはできるんだけど、自分のサイズを超えてそれ以上に大きくなることはできないみたい」
まるで我が子の成長を見守る母親のような目でエンダを見ながら、満足そうに優里は言った。
お城の裏の空き地に到着すると、早速エンダの試乗が始まった。トップバッターはもちろん優里だ。エンダの首にまたがり座り位置を調整してから、優里はエンダの首筋をポンポンと叩いた。
『それじゃあ、エンダ行こうか』
優里のかけ声とともに、エンダは数歩助走をつけるとふわりと飛び上がった。
バランスを取りながら、エンダは翼をはためかせてお城の周りをゆっくりと旋回した。クリスと紗奈は、お城の上に立って手を振った。
優里は、感激のあまり今にも泣き出しそうな顔で手を振り返した。
そしてエンダは優里の指示通りどんどん高度を上げて、向かいにそびえるピラミッド山の方へと飛んでいった。
「なんかあっという間に大きくなっちゃったね」
お城の上に腰かけ、小さくなっていくエンダの後ろ姿を眺めながらクリスが言った。
「うん。なんか、毎日大きくなっていくのが分かるって優里言ってたよ」
「そうだろうね」
クリスが最後に見たとき、エンダはまだベベくらいの大きさしかなかった。それが3週間足らずであれだけの大きさになったというのだから、日々相当の成長が見られるはずだ。
「でも、桜井さんエンダに乗ってドラゴン飛翔するのをすごく楽しみにしていたみたいだし、早く願いが叶って良かったね」
紗奈は「そうね」と返事をしながらも、ちょっと寂しそうな顔をした。少しの沈黙の後、紗奈が口を開いた。
「なんかでもやっぱり羨ましいな。自分の守護ドラゴンがいて、あんな風に自由に空を飛び回れるなんて」
視線を落として、紗奈は言った。
「わたしの守護存在っていつ出てきてくれるんだろう?もしかしたら、今世では会えないかもしれないんだよね」
そう言って紗奈はクリスに視線を向けた。
「うーん・・・」と、クリスは視線を逸らして首を傾げた。
「どうなんだろうね?まぁでも実際、桜井さんも今はエンダと一体化を進めるためにこうして一緒にいるけど、いずれはぼくとエランドラみたいに離れて暮らすことになって、常に一緒ではなくなるわけだからね」
クリスの精一杯のフォローが、逆に紗奈の欠落感を逆なでした。
「でもそういう存在がいるし、望めば会うことだってできるじゃない」と、紗奈は責めるように言った。
「それに、いずれアセンションが始まれば地表世界で一緒に暮らせるようにもなるみたいだし。そうしたら、この地上でもあんな風にいつでもドラゴン飛翔ができるようになるわけでしょう?」
紗奈はひがんでいるだけだと自分でも分かっていた。そして守護存在がいないということに、ここまで疎外感を感じているとは自分でも思っていなかった。
「ごめん」と、紗奈は謝った。
「クリスにそんなこと言っても仕方ないよね」
「ううん、いいよ。それよりあれ見て」と言って、クリスがエンダの飛んでいった方を指差した。
クリスの指差す先には、1台のヘリコプターがあった。黒い機体の、かなり大きなヘリコプターだ。
ヘリは高度を落としながら、クリスたちのいる方へとぐんぐん近づいてくる。
爆音を立ててやってくるヘリコプターに、クリスと紗奈、それにベベは自然と目が釘づけになった。
ヘリはお城の裏の空き地めがけて下降を始めた。クリスはベベを抱きかかえ、立ち上がった。まさかこんな場所にヘリがやってくるなんて考えたこともなかった。何か事件でもあったのだろうかとクリスと紗奈は顔を見合わせ、互いに首を傾げた。
『この場から離れた方がいいかな?』
クリスは紗奈に思念で問いかけた。あたりには猛烈なプロペラ音が轟いていた。
『でも優里を待たないと』と、紗奈は両手で顔を覆いながら答えた。
吹き付ける風は、まるで台風のようだった。
『とりあえず一度下へ下りよう』
ふたりは吹き付ける風に飛ばされないように姿勢を落として、ゆっくりとお城の下り口に向かった。ヘリコプターは、裏の空き地へまさに着地しようとしていた。
中学生になって初の期末テスト。クリスの順位は学年で真ん中よりちょっと上とまずまずの成績だった。一方、あまり勉強をしている様子のなかった紗奈は5位にランクインしていた。
きっと根本的な頭のつくりが違うのだろうと、クリスは自分を納得させた。
そして夏休み初日の朝、朝食を済ませたクリスは出かける準備をしていた。休みの初日から、紗奈と優里が遊びに来ることになっているからだった。
目的は、優里の守護ドラゴン“エンダ”の初のドラゴン飛翔だ。
エンダはみるみる内に大きくなって、すでに人をひとり乗せるには十分な大きさに育っているということだった。
「あら、いらっしゃい。ちょっと待っててね」
インターホンが鳴って、母親の対応する声がした。興奮して吠えたてるベベは、クリスが部屋のドアを開けると一目散に廊下を走って、階段を駆け下りていった。クリスも後を追いかけて、玄関へ向かった。
「おはよう。早いね」
時刻は8時45分だった。昨日の電話では、9時過ぎに来るという話だった。
「うん。優里が待ちきれないといって早く来たから」
紗奈がそう言ってうしろを振り向くと、優里は照れるように笑って首をすくめた。
「えへへ。ごめんね」
「ううん。全然大丈夫だよ。じゃあ、早速行こうか」
『はやく行こうよ』と、待ちきれない様子でベベが玄関先で足踏みした。
「それじゃあ、おかあさん行ってくるね」
「はーい。気をつけてね。おかあさんお買い物に出かけるけど、お昼には戻ってくるから」
「うん、分かった」
母親に手を振り返して、3人は“お城”へと向かった。
「そういえば、エンダは?」
ベベの後を追いかけながら、クリスが優里に尋ねた。だいぶ大きくなったと聞いていたが、エンダの姿が見当たらない。
「エンダならここにいるよ」
優里はそう言って、Tシャツの左胸についたパイナップル柄のポケットの口を広げた。
すると、そこから緑色の小さなドラゴンが顔を出した。ドラゴンは、ポケットから完全に這い出ると、胸ポケットの縁に手をかけたままクリスの方を振り返った。
親指ほどの大きさしかない、とても小さなドラゴンだった。
『こんにちは』と、幼児のような声が頭に響いた。どうやら、エンダが喋ったようだ。
『こんにちは』と、クリスも返した。
「ずいぶん小さいね」
サイズを変えているということだろう。生まれたての頃よりもはるかに小さくなっている。
「うん。日に日にどんどん大きくなるから、サイズだけでも変えられるように特訓したの」
優里はそう言いながら、キョロキョロと周囲を見回した。そしてエンダを指先に乗せて『エンダ。戻っていいよ』と言った。
エンダは蝶のようにパタパタと飛び立つと、一瞬にしてサイズを変えた。頭上で大きな翼を広げたエンダは、クリスが予想していた以上に大きくなっていた。胴体だけでも軽自動車ほどの大きさがある。
「これが今のエンダだよ。小さくなることはできるんだけど、自分のサイズを超えてそれ以上に大きくなることはできないみたい」
まるで我が子の成長を見守る母親のような目でエンダを見ながら、満足そうに優里は言った。
お城の裏の空き地に到着すると、早速エンダの試乗が始まった。トップバッターはもちろん優里だ。エンダの首にまたがり座り位置を調整してから、優里はエンダの首筋をポンポンと叩いた。
『それじゃあ、エンダ行こうか』
優里のかけ声とともに、エンダは数歩助走をつけるとふわりと飛び上がった。
バランスを取りながら、エンダは翼をはためかせてお城の周りをゆっくりと旋回した。クリスと紗奈は、お城の上に立って手を振った。
優里は、感激のあまり今にも泣き出しそうな顔で手を振り返した。
そしてエンダは優里の指示通りどんどん高度を上げて、向かいにそびえるピラミッド山の方へと飛んでいった。
「なんかあっという間に大きくなっちゃったね」
お城の上に腰かけ、小さくなっていくエンダの後ろ姿を眺めながらクリスが言った。
「うん。なんか、毎日大きくなっていくのが分かるって優里言ってたよ」
「そうだろうね」
クリスが最後に見たとき、エンダはまだベベくらいの大きさしかなかった。それが3週間足らずであれだけの大きさになったというのだから、日々相当の成長が見られるはずだ。
「でも、桜井さんエンダに乗ってドラゴン飛翔するのをすごく楽しみにしていたみたいだし、早く願いが叶って良かったね」
紗奈は「そうね」と返事をしながらも、ちょっと寂しそうな顔をした。少しの沈黙の後、紗奈が口を開いた。
「なんかでもやっぱり羨ましいな。自分の守護ドラゴンがいて、あんな風に自由に空を飛び回れるなんて」
視線を落として、紗奈は言った。
「わたしの守護存在っていつ出てきてくれるんだろう?もしかしたら、今世では会えないかもしれないんだよね」
そう言って紗奈はクリスに視線を向けた。
「うーん・・・」と、クリスは視線を逸らして首を傾げた。
「どうなんだろうね?まぁでも実際、桜井さんも今はエンダと一体化を進めるためにこうして一緒にいるけど、いずれはぼくとエランドラみたいに離れて暮らすことになって、常に一緒ではなくなるわけだからね」
クリスの精一杯のフォローが、逆に紗奈の欠落感を逆なでした。
「でもそういう存在がいるし、望めば会うことだってできるじゃない」と、紗奈は責めるように言った。
「それに、いずれアセンションが始まれば地表世界で一緒に暮らせるようにもなるみたいだし。そうしたら、この地上でもあんな風にいつでもドラゴン飛翔ができるようになるわけでしょう?」
紗奈はひがんでいるだけだと自分でも分かっていた。そして守護存在がいないということに、ここまで疎外感を感じているとは自分でも思っていなかった。
「ごめん」と、紗奈は謝った。
「クリスにそんなこと言っても仕方ないよね」
「ううん、いいよ。それよりあれ見て」と言って、クリスがエンダの飛んでいった方を指差した。
クリスの指差す先には、1台のヘリコプターがあった。黒い機体の、かなり大きなヘリコプターだ。
ヘリは高度を落としながら、クリスたちのいる方へとぐんぐん近づいてくる。
爆音を立ててやってくるヘリコプターに、クリスと紗奈、それにベベは自然と目が釘づけになった。
ヘリはお城の裏の空き地めがけて下降を始めた。クリスはベベを抱きかかえ、立ち上がった。まさかこんな場所にヘリがやってくるなんて考えたこともなかった。何か事件でもあったのだろうかとクリスと紗奈は顔を見合わせ、互いに首を傾げた。
『この場から離れた方がいいかな?』
クリスは紗奈に思念で問いかけた。あたりには猛烈なプロペラ音が轟いていた。
『でも優里を待たないと』と、紗奈は両手で顔を覆いながら答えた。
吹き付ける風は、まるで台風のようだった。
『とりあえず一度下へ下りよう』
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