クリスの物語

daichoro

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第三章 悪魔の儀式

第41話 合流

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『クリスさん』

 全員同時にうしろを振り返った。そこにはパオリーナがいた。そしてそのうしろには、エランドラもいる。



「よかった」

 三人とも大喜びで駆け寄った。



『無事だったのね』

 安心したようにパオリーナが言った。



『びっくりしました。何があったのですか?』

 安心したのか、目に涙をにじませながら紗奈が聞いた。



『分からないわ』と、エランドラが答えた。

『でも、どうやら風光都市は闇の勢力に乗っ取られてしまっているようね。クリスも覚えているでしょう?地底図書館で見たあの黒い服の男の人のこと』

 クリスはうなずいた。



『ちょうどその話をしていたんだ。やっぱりあの黒いマントを羽織った男の人って闇の勢力の人だったんだね。さっきの人たちもそうなんだね』

 エランドラは残念そうにうなずいた。



『ふたりはどうやってここまで来たんですか?』と、横から優里が質問した。

 ため息をつきながら、パオリーナが首を振った。



『なんとか、よ』と言って、もう一度ため息を吐いた。

『なぜか分からないけど、オーラムルスがまったく機能しなくなっていたの。それに、転移装置もすべてランダムに書き換えられてしまっているわ。

 つまり移動してきた転移装置に乗っても、同じところには戻れないようになっているのよ。わたしたちが転送されたのは、ダイーマイスっていう、シンダとは正反対に位置する西の港町よ。そこもソルーメンが弱められていて、同じような状況だった。ひとりも人がいなくて。

 でも、もたもたしていたら闇の勢力の人間が追ってくるかもしれないでしょう?だから、とにかく転移装置を片っ端から移動して回ったの。そうしたら、このトンネルに出た。



  ここはクニムテールと言って、地下に張り巡らされたトンネルなの。最深部のさらに地下よ。ここは、本来は隠し転移装置でしか来ることができないはずの秘密の通路で、きっと闇の勢力の人間にもまだ知られていない可能性が高いわ。

 それで、わたしたちがここへ辿り着けたということは、もしかしたらあなたたちもうまくここに出られるんじゃないかと思っていたの。そうしたらエランドラさんがあなたたちの気配を感じることができて、それでこうしてやってきたというわけ』

 パオリーナは一気にそこまで話すと、笑顔で皆の顔を見回した。



『それじゃあ最初にここへ転送されてきたということは、わたしたちはラッキーだったということですか?』

『奇跡的、よ』と言って、パオリーナは紗奈に向かってウィンクした。



『あれ?でもわたしたちが最初に転送された先がここだったって知っていたんですか?』

 優里がパオリーナに聞き返した。

 パオリーナは優里の顔を見て首を傾げた。それから、質問の意味を理解したというように笑顔でうなずいた。



『もちろん、あなたたちがシンダから直接ここへ転送されてきたということまでは知らなかったわ。でも、もし最初に転移されたのがここであったのならそれはとてもラッキーだし奇跡としか言いようがない、という意味よ』

 パオリーナのその説明に優里もなるほど、とうなずいた。



『それで、これからどうしたらいいですか?』とクリスが質問すると、パオリーナは少し落ち込んだ表情をした。

『そうね。こんな状況だから、まずはここから抜け出すことを優先しましょう。それでもしその途中でルーベラピスに反応があれば、ウェントゥスを入手しましょうか』

 クリスの短剣を指差してパオリーナは言った。



『やっぱり、他の都市も同じような状況になっていると思いますか?』と、クリスは更に質問した。オーラムルスが使えない今、クレアたちが無事かどうか少し心配だった。



『そうね。きっと状況的に同じだと思うわ。とにかく、まずは自分たちのことを何とかしましょう』

 パオリーナのその言葉に、クリスはうなずき返した。たしかにパオリーナの言う通りだった。まずは、この状況から抜け出さなくてははじまらない。



 パオリーナによれば、この先の道を進んでもしばらく転移装置はないということだった。そのためどこに転移されるか分からないが、来た道を引き返して乗ってきた転移装置にもう一度乗ることになった。



『でもパオリーナさんたちが風光都市を巡っていたときは、こんな風に闇の勢力に乗っ取られているようなことはなかったんですよね?』

 薄暗いトンネルの中を戻りながら、優里が質問した。



『ええ。まったくそんな様子はなかったわ』

 パオリーナは振り返って答えた。



『それじゃあ、いつの間に乗っ取られちゃったんだろう?こんな、突然まるごと乗っ取られるなんてことあると思いますか?』

『どうだろう?わたしたちがいた頃からすでに根回しは進んでいたのかもしれない。風光都市の人たちはもともと社交的ではないから、わたしたちもあまり接触はしていなかったの。だから、様子が違っていても気づかなかったということも正直あるかもしれないわ』

 気づけなかったことを悔やんでいるのか、パオリーナは残念そうな顔をした。



『それで、わたしたちは主要10都市を捜索し終えてから一度地底都市へ戻って中央部の指示を待っていたのだけれど、もしかしたらそのときに一気に侵略されてしまったのかもしれない』

『なるほど』と、優里はうなずいた。



『少しずつ気づかれないようにネットワークに侵入していって、それで隙をみて一気に乗っ取ったということですね』

『でも、風光都市の人たちはどうなっちゃったのかな?まさか殺されたりしてないですよね?』

 横から紗奈が質問すると、パオリーナは首を振った。



『分からないわ。もしかしたらそういうこともあるかもしれない。殺されていないとしても、どこかに捕えられているでしょうね』

『でも、もしそうなら助け出してあげないといけないですよね』

 クリスが真面目に意見すると、パオリーナはくすっと笑った。



『そうね。でも、それはわたしたちの手に余ることよ。そういったことは、セテオス中央部や銀河連邦などに任せるべきだと思うわ。それより、まずはわたしたちが無事抜け出して中央部へ報告することが先決よ』

 そんなことを話している内に、一行は転移措置のところまで戻ってきた。



『さて、では行ってみましょうか。さっきも言ったように、転移装置は次から次へとランダムに転移先が変わってしまうから別々に乗ったら別の場所へ転移されてしまう可能性が高いわ。だから、全員一緒に乗りましょう。

 それと、もし危険な場所へ出てしまったらわたしが号令をかけるから、そうしたらすぐにまた同じ転移装置に乗るようにしてくださいね。とにかく、別の転移装置に乗ったり、遅れて乗ったりしてはぐれてしまうことのないように注意してください』



 転移装置に乗る前に、パオリーナが注意事項を説明した。

 全員、真剣な表情でうなずいた。そして、5人(+1匹)全員で転移装置に乗り込んだ。





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