クリスの物語

daichoro

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第三章 悪魔の儀式

第37話 転移装置のターミナル

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 ネブラリウムを捜索するラーナミルチームとはその場で別れ、クリスチーム、クレアチームは都市間を移動する転移装置がある場所“テルミナ”へと案内された。



 転移装置を数回乗り継いでシーリアに案内されたその場所は、広々とした薄暗い空間だった。

 階段を下りた地面に、縦横3つずつ計9つの転移装置が並んでいる。一つひとつの大きさが直径5mはある、巨大な転移装置だった。



 描かれた“オーメン”はそれぞれデザインが違うが、どれも凝ったデザインだった。

 暗い部屋の中青白い光を発するその転移装置は、まるで闇夜に浮かぶ空飛ぶ絨毯のようだ。



『あちらがドルミーレへ移動するための転移装置です』

 真ん中の列の、右端の転移装置を指差してシーリアが言った。



『そして、エンソルゾーソはあちらになります』

 シーリアは指をそのまま真っ直ぐ左へ移動させて、一番左の転移装置を指差した。



 シーリアに礼を言って、両チームそれぞれの転移装置へ向かった。



『クリス、何かあればすぐに駆け付けるから、ちゃんとオーラムルスがつながる場所を確認しておくようにね』

 階段を下りたところでクレアが言った。



『うん。クレアたちも気をつけて』

 クリスがそう返事をすると、フィオナとロインが頭を下げた。



 転移装置の前に立つと、クリスたち一同は顔を見合わせた。

 それからうなずき合って、全員同時に転移装置に乗り込んだ。



 乗り込むと間もなくして手の甲の解除マーク“クラヴィス”が光を放った。そして、真っ白い光に包まれると瞬時に転送された。



 転移した場所は、ネブラリウムのテルミナと何ら変わらなかった。

 ただひとつの違いは、9つ並ぶ転移装置の一番右上に立っていたことだ。まるで、同じ空間内で瞬時に場所を移動しただけのように思えた。



 しかしオーラムルスの表示は、ネブラリウムのテルミナからエンソルゾーソのテルミナへと変わっていた。

 アヒルの形をした島の中央の最深部を現在地は示していた。その空間には、クリスたちを除いて他に誰もいない。



『では、行きましょうか』

 パオリーナがそう言って奥の階段へと向かった。クリスたちは、黙って後に続いた。

 ここでは、嫌というほど風光都市を巡ったパオリーナに道案内は任せることになっていた。



 階段を上がった先にある転移装置は、都市間を移動する転移装置に比べるといくらか小さかった。

 しかし、大人でも20人程度なら十分乗れるだけの大きさがある。パオリーナの合図に従って、再び全員同時に転移装置へ足を踏み入れた。



 転送先は、テルミナの1階層上だった。そこは、エンソルゾーソの主要場所へと移動ができる転移装置のターミナルのようなところだった。

 薄暗いホールに、何十という転移装置がクリスたちを取り囲むように並んでいた。



 クリスたちが転送された転移装置は広間の中央にあって、そこだけが一段高くなっていた。

 周囲に並ぶ転移装置は、どれも通常サイズの2~3人乗りだった。パオリーナによれば、これと同じようなターミナルが他にもいくつもあるということだった。さらにそれぞれ転移した先にも数多くの転移装置がある。



 それをひとつずつしらみ潰しに探すというのは、考えただけでも気が遠くなる。

 何かもっと効率の良い方法はないものかとクリスは考えを巡らせたが、何も思いつかなかった。

 どこへ行くにも“選ばれし者”であるクリスが必要とされるので、手分けをするわけにもいかない。

 とにかく、地道に回るしかなかった。



『それにしても、こんなに転移装置がいっぱいあるターミナルだというのに誰もいないのね』

 薄暗い空間を見回して、紗奈が言った。



『本当だね』とクリスもうなずいた。

 紗奈の言う通り、これだけターミナルがあるのに他に人がひとりもいないというのは違和感があった。

 それに、風光都市へ来てからシーリア以外現地の人をまだ見かけていない。

 ソレーテが言っていたように風光都市は閉鎖的だということだから、外部の人間と接触することを意図的に避けているのかもしれない。



『それでは、東端の街“シンダ”から回りたいと思います。いいですか?』

 正面に向かって一番右端の転移装置を指差して、パオリーナが言った。

 ウェントゥスが見つからない限り、結局はすべての転移装置を一つひとつ見て回る必要がある。

 そしてすでに見て回った地域はオーラムルスでチェックをつけられるので、どこから回っても見落とすことはまずない。



 しかし端から順に回った方が分かりやすいだろうというのが、パオリーナの提案だった。

 そしてこのターミナルの端に並んでいてかつ島の端へと行ける転移装置が、東端の街シンダ行きの転移装置だった。



 行き先はパオリーナに任せることにしていたので、その提案に誰も異論はなかった。

 パオリーナを先頭に、一行は一番端のシンダ行きの転移装置まで一列になって移動した。移動している最中にパオリーナは他チームへ連絡を取って、シンダへ向かうことを報告した。



 シンダ行きの転移装置は全員乗るには窮屈なので、まずはパオリーナとエランドラが先に移動することになった。そして残りの三人(+ベベ)が後に続いた。



 移動した先は、ずいぶん狭い空間だった。転移装置も、移動してきたものを合わせて全部で3つしかない。それというのも、シンダは港町で他の地区に比べると規模が小さいからだった。



 地下も50mの深さであるここが最深部で、1階層上は住居地区、その上はもう地上だった。つまり3つある転移装置のうちひとつは先ほどのターミナル行きで、あとの二つは、地下1階の住居地区行きと地上行きということになる。



 まずは、1階層上の住居地区から回ることになった。

 クリスタルエレメントはどこに眠っているか分からないから、先入観を持たないことだとトルメイから言われている。クリスは気を引き締めて、見落とすことのないよう短剣を鞘ごと抜いて手に構えた。





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