151 / 227
第三章 悪魔の儀式
第37話 転移装置のターミナル
しおりを挟む
ネブラリウムを捜索するラーナミルチームとはその場で別れ、クリスチーム、クレアチームは都市間を移動する転移装置がある場所“テルミナ”へと案内された。
転移装置を数回乗り継いでシーリアに案内されたその場所は、広々とした薄暗い空間だった。
階段を下りた地面に、縦横3つずつ計9つの転移装置が並んでいる。一つひとつの大きさが直径5mはある、巨大な転移装置だった。
描かれた“オーメン”はそれぞれデザインが違うが、どれも凝ったデザインだった。
暗い部屋の中青白い光を発するその転移装置は、まるで闇夜に浮かぶ空飛ぶ絨毯のようだ。
『あちらがドルミーレへ移動するための転移装置です』
真ん中の列の、右端の転移装置を指差してシーリアが言った。
『そして、エンソルゾーソはあちらになります』
シーリアは指をそのまま真っ直ぐ左へ移動させて、一番左の転移装置を指差した。
シーリアに礼を言って、両チームそれぞれの転移装置へ向かった。
『クリス、何かあればすぐに駆け付けるから、ちゃんとオーラムルスがつながる場所を確認しておくようにね』
階段を下りたところでクレアが言った。
『うん。クレアたちも気をつけて』
クリスがそう返事をすると、フィオナとロインが頭を下げた。
転移装置の前に立つと、クリスたち一同は顔を見合わせた。
それからうなずき合って、全員同時に転移装置に乗り込んだ。
乗り込むと間もなくして手の甲の解除マーク“クラヴィス”が光を放った。そして、真っ白い光に包まれると瞬時に転送された。
転移した場所は、ネブラリウムのテルミナと何ら変わらなかった。
ただひとつの違いは、9つ並ぶ転移装置の一番右上に立っていたことだ。まるで、同じ空間内で瞬時に場所を移動しただけのように思えた。
しかしオーラムルスの表示は、ネブラリウムのテルミナからエンソルゾーソのテルミナへと変わっていた。
アヒルの形をした島の中央の最深部を現在地は示していた。その空間には、クリスたちを除いて他に誰もいない。
『では、行きましょうか』
パオリーナがそう言って奥の階段へと向かった。クリスたちは、黙って後に続いた。
ここでは、嫌というほど風光都市を巡ったパオリーナに道案内は任せることになっていた。
階段を上がった先にある転移装置は、都市間を移動する転移装置に比べるといくらか小さかった。
しかし、大人でも20人程度なら十分乗れるだけの大きさがある。パオリーナの合図に従って、再び全員同時に転移装置へ足を踏み入れた。
転送先は、テルミナの1階層上だった。そこは、エンソルゾーソの主要場所へと移動ができる転移装置のターミナルのようなところだった。
薄暗いホールに、何十という転移装置がクリスたちを取り囲むように並んでいた。
クリスたちが転送された転移装置は広間の中央にあって、そこだけが一段高くなっていた。
周囲に並ぶ転移装置は、どれも通常サイズの2~3人乗りだった。パオリーナによれば、これと同じようなターミナルが他にもいくつもあるということだった。さらにそれぞれ転移した先にも数多くの転移装置がある。
それをひとつずつしらみ潰しに探すというのは、考えただけでも気が遠くなる。
何かもっと効率の良い方法はないものかとクリスは考えを巡らせたが、何も思いつかなかった。
どこへ行くにも“選ばれし者”であるクリスが必要とされるので、手分けをするわけにもいかない。
とにかく、地道に回るしかなかった。
『それにしても、こんなに転移装置がいっぱいあるターミナルだというのに誰もいないのね』
薄暗い空間を見回して、紗奈が言った。
『本当だね』とクリスもうなずいた。
紗奈の言う通り、これだけターミナルがあるのに他に人がひとりもいないというのは違和感があった。
それに、風光都市へ来てからシーリア以外現地の人をまだ見かけていない。
ソレーテが言っていたように風光都市は閉鎖的だということだから、外部の人間と接触することを意図的に避けているのかもしれない。
『それでは、東端の街“シンダ”から回りたいと思います。いいですか?』
正面に向かって一番右端の転移装置を指差して、パオリーナが言った。
ウェントゥスが見つからない限り、結局はすべての転移装置を一つひとつ見て回る必要がある。
そしてすでに見て回った地域はオーラムルスでチェックをつけられるので、どこから回っても見落とすことはまずない。
しかし端から順に回った方が分かりやすいだろうというのが、パオリーナの提案だった。
そしてこのターミナルの端に並んでいてかつ島の端へと行ける転移装置が、東端の街シンダ行きの転移装置だった。
行き先はパオリーナに任せることにしていたので、その提案に誰も異論はなかった。
パオリーナを先頭に、一行は一番端のシンダ行きの転移装置まで一列になって移動した。移動している最中にパオリーナは他チームへ連絡を取って、シンダへ向かうことを報告した。
シンダ行きの転移装置は全員乗るには窮屈なので、まずはパオリーナとエランドラが先に移動することになった。そして残りの三人(+ベベ)が後に続いた。
移動した先は、ずいぶん狭い空間だった。転移装置も、移動してきたものを合わせて全部で3つしかない。それというのも、シンダは港町で他の地区に比べると規模が小さいからだった。
地下も50mの深さであるここが最深部で、1階層上は住居地区、その上はもう地上だった。つまり3つある転移装置のうちひとつは先ほどのターミナル行きで、あとの二つは、地下1階の住居地区行きと地上行きということになる。
まずは、1階層上の住居地区から回ることになった。
クリスタルエレメントはどこに眠っているか分からないから、先入観を持たないことだとトルメイから言われている。クリスは気を引き締めて、見落とすことのないよう短剣を鞘ごと抜いて手に構えた。
転移装置を数回乗り継いでシーリアに案内されたその場所は、広々とした薄暗い空間だった。
階段を下りた地面に、縦横3つずつ計9つの転移装置が並んでいる。一つひとつの大きさが直径5mはある、巨大な転移装置だった。
描かれた“オーメン”はそれぞれデザインが違うが、どれも凝ったデザインだった。
暗い部屋の中青白い光を発するその転移装置は、まるで闇夜に浮かぶ空飛ぶ絨毯のようだ。
『あちらがドルミーレへ移動するための転移装置です』
真ん中の列の、右端の転移装置を指差してシーリアが言った。
『そして、エンソルゾーソはあちらになります』
シーリアは指をそのまま真っ直ぐ左へ移動させて、一番左の転移装置を指差した。
シーリアに礼を言って、両チームそれぞれの転移装置へ向かった。
『クリス、何かあればすぐに駆け付けるから、ちゃんとオーラムルスがつながる場所を確認しておくようにね』
階段を下りたところでクレアが言った。
『うん。クレアたちも気をつけて』
クリスがそう返事をすると、フィオナとロインが頭を下げた。
転移装置の前に立つと、クリスたち一同は顔を見合わせた。
それからうなずき合って、全員同時に転移装置に乗り込んだ。
乗り込むと間もなくして手の甲の解除マーク“クラヴィス”が光を放った。そして、真っ白い光に包まれると瞬時に転送された。
転移した場所は、ネブラリウムのテルミナと何ら変わらなかった。
ただひとつの違いは、9つ並ぶ転移装置の一番右上に立っていたことだ。まるで、同じ空間内で瞬時に場所を移動しただけのように思えた。
しかしオーラムルスの表示は、ネブラリウムのテルミナからエンソルゾーソのテルミナへと変わっていた。
アヒルの形をした島の中央の最深部を現在地は示していた。その空間には、クリスたちを除いて他に誰もいない。
『では、行きましょうか』
パオリーナがそう言って奥の階段へと向かった。クリスたちは、黙って後に続いた。
ここでは、嫌というほど風光都市を巡ったパオリーナに道案内は任せることになっていた。
階段を上がった先にある転移装置は、都市間を移動する転移装置に比べるといくらか小さかった。
しかし、大人でも20人程度なら十分乗れるだけの大きさがある。パオリーナの合図に従って、再び全員同時に転移装置へ足を踏み入れた。
転送先は、テルミナの1階層上だった。そこは、エンソルゾーソの主要場所へと移動ができる転移装置のターミナルのようなところだった。
薄暗いホールに、何十という転移装置がクリスたちを取り囲むように並んでいた。
クリスたちが転送された転移装置は広間の中央にあって、そこだけが一段高くなっていた。
周囲に並ぶ転移装置は、どれも通常サイズの2~3人乗りだった。パオリーナによれば、これと同じようなターミナルが他にもいくつもあるということだった。さらにそれぞれ転移した先にも数多くの転移装置がある。
それをひとつずつしらみ潰しに探すというのは、考えただけでも気が遠くなる。
何かもっと効率の良い方法はないものかとクリスは考えを巡らせたが、何も思いつかなかった。
どこへ行くにも“選ばれし者”であるクリスが必要とされるので、手分けをするわけにもいかない。
とにかく、地道に回るしかなかった。
『それにしても、こんなに転移装置がいっぱいあるターミナルだというのに誰もいないのね』
薄暗い空間を見回して、紗奈が言った。
『本当だね』とクリスもうなずいた。
紗奈の言う通り、これだけターミナルがあるのに他に人がひとりもいないというのは違和感があった。
それに、風光都市へ来てからシーリア以外現地の人をまだ見かけていない。
ソレーテが言っていたように風光都市は閉鎖的だということだから、外部の人間と接触することを意図的に避けているのかもしれない。
『それでは、東端の街“シンダ”から回りたいと思います。いいですか?』
正面に向かって一番右端の転移装置を指差して、パオリーナが言った。
ウェントゥスが見つからない限り、結局はすべての転移装置を一つひとつ見て回る必要がある。
そしてすでに見て回った地域はオーラムルスでチェックをつけられるので、どこから回っても見落とすことはまずない。
しかし端から順に回った方が分かりやすいだろうというのが、パオリーナの提案だった。
そしてこのターミナルの端に並んでいてかつ島の端へと行ける転移装置が、東端の街シンダ行きの転移装置だった。
行き先はパオリーナに任せることにしていたので、その提案に誰も異論はなかった。
パオリーナを先頭に、一行は一番端のシンダ行きの転移装置まで一列になって移動した。移動している最中にパオリーナは他チームへ連絡を取って、シンダへ向かうことを報告した。
シンダ行きの転移装置は全員乗るには窮屈なので、まずはパオリーナとエランドラが先に移動することになった。そして残りの三人(+ベベ)が後に続いた。
移動した先は、ずいぶん狭い空間だった。転移装置も、移動してきたものを合わせて全部で3つしかない。それというのも、シンダは港町で他の地区に比べると規模が小さいからだった。
地下も50mの深さであるここが最深部で、1階層上は住居地区、その上はもう地上だった。つまり3つある転移装置のうちひとつは先ほどのターミナル行きで、あとの二つは、地下1階の住居地区行きと地上行きということになる。
まずは、1階層上の住居地区から回ることになった。
クリスタルエレメントはどこに眠っているか分からないから、先入観を持たないことだとトルメイから言われている。クリスは気を引き締めて、見落とすことのないよう短剣を鞘ごと抜いて手に構えた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~
笹原うずら
ファンタジー
獣人ばかりの世界の主人公は、炎を使う人間の姿をした少年だった。
鳥人族の国、スカイルの孤児の施設で育てられた主人公、サン。彼は陽天流という剣術の師範であるハヤブサの獣人ファルに預けられ、剣術の修行に明け暮れていた。しかしある日、ライバルであるツバメの獣人スアロと手合わせをした際、獣の力を持たないサンは、敗北してしまう。
自信の才能のなさに落ち込みながらも、様々な人の励ましを経て、立ち直るサン。しかしそんなサンが施設に戻ったとき、獣人の獣の部位を売買するパーツ商人に、サンは施設の仲間を奪われてしまう。さらに、サンの事を待ち構えていたパーツ商人の一人、ハイエナのイエナに死にかけの重傷を負わされる。
傷だらけの身体を抱えながらも、みんなを守るために立ち上がり、母の形見のペンダントを握り締めるサン。するとその時、死んだはずの母がサンの前に現れ、彼の炎の力を呼び覚ますのだった。
炎の力で獣人だらけの世界を切り開く、痛快大長編異世界ファンタジーが、今ここに開幕する!!!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
家族と移住した先で隠しキャラ拾いました
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」
ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。
「「「やっぱりかー」」」
すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。
日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。
しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。
ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。
前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。
「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」
前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。
そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。
まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる