クリスの物語

daichoro

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第三章 悪魔の儀式

第31話 霧の都ネブラリウム

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『まもなく到着いたします』

 いつの間にか操縦室へ下りていたトルメイが、上がってくると言った。

 真っ暗だった窓の外も明るくなっていた。しかし霧のようなもやに覆われていて、外の様子は分からない。



「もう着くの?」と、優里が驚くように言った。

 クリスと紗奈は、同時にうなずいた。



「こっちの次元では時間とか距離とかすっ飛ばしちゃうから、どこへ行くのもあっという間だよ」と、クリスが答えた。

『オーラムルスのご使用方法など、皆様問題ありませんか?』と、トルメイが一同を見回した。



 テステクの使い方だけでなく、オーラムルスの使い方も紗奈ちゃんは桜井さんに教えてくれたのだろうか?

 クリスがふたりに視線を向けると、紗奈はクリスの目を見て『一応』と思念で返事をした。優里はその隣で自信なさげに肩をすぼめた。



『私ももちろん皆様と行動を共にいたしますが、万一はぐれたりするようなことがあればオーラムルスで連絡を取り合いましょう』

 オーラムルスの使用について問題ないことを確認すると、トルメイは言った。



『ただ、風光都市は場所によってネットワークが完全に遮断されてしまうところもございますのでご注意ください』と、トルメイは付け加えた。

『さて、それでは参りましょう』

 トルメイの掛け声に、一同は立ち上がった。



 そのときにクリスはふらっと立ちくらみを覚えた。そしてズーンと頭が重くなった。最近たまに襲われることのある、あの急激な眠気だ。

 クリスはその場で頭を振ると、皆の後に続いて中央の円盤に乗った。



 アダマスカルから降り立った場所は、セテオスの広場のように床には白い大理石が敷かれていた。

 そして一行が降り立った場所を中心にその空間は直径20mほどの円で仕切られ、その先は壁のように濃霧が立ちはだかっていた。



『お待ちしておりました』と、どこからか声が響いた。そして霧の中からすらっと背の高いひとりの女性が現れた。



『わたしは、ネブラリウム監視局より参りましたシーリアと申します。お連れ様がお待ちですので、そちらまでご案内いたします』



 シーリアと名乗ったその女性の瞳の色は紫だった。そしてお辞儀をした際にさらりと肩から垂れた髪は、銀色に輝いていた。

 身長はエランドラよりも幾分高く、肩の部分が大きく開いた白く長い布を身にまとっていた。頭には、三蔵法師が孫悟空に装着した金の輪っか“緊箍児”のようなティアラを着けている。



 クリスたち一行は、シーリアの案内に従って霧の中へと移動した。

 少し進むと青く光る直径1メートルほどの魔方陣が地面に浮かんでいた。同じような魔方陣が円を描くようにいくつも並んでいる。それぞれの魔方陣には、中央に複雑な模様が描かれていた。



『こちらの転移装置で移動しますが、同時に全員は乗れませんので3名ほどに分かれて移動しましょう』

 ひとつの魔方陣を指し示してシーリアが言うと『じゃあわたし先に行く。ラマルも行くよ』と言って、クレアがラマルを引っ張って早速その転移装置の中に入った。



『それでは、私も先に向かってお待ちしております』と言って、シーリアも続いて転移装置に足を踏み入れた。

『わたしたちが転送されましたら、次の方々も続いてく・・・』

 シーリアが言い終える前に、転移装置に乗った三人の姿がその場から消え去った。それに合わせて転移装置の光が消えた。



『では、続いてクリスさんたちどうぞ』

 再び青い光が灯った転移装置を示してトルメイが言った。クリスはエランドラを見た。エランドラはうなずいて、『お先にどうぞ』と言った。うなずき返したクリスはベベを抱え、紗奈と優里三人で転移装置の中に足を踏み入れた。

 すると間もなくして、三人の視界が光に包まれて真っ白になった。そして次の瞬間には、まったく別の空間に立っていた。






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