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第三章 悪魔の儀式
第19話 犯人
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「もしかしたら予想外のことが起こって、そのままでは状況的にまずくなったから、召喚したアーマインを一度封じ込めようとしたってことかな?」
首をひねって優里が言った。
「予想外のこと?」とクリスが聞き返すと、優里は顔を上げてうなずいた。
「うん。それってたぶんクリス君があの場に現れたことなんだと思う。悪魔に依頼する内容が術者以外の人に関することで召喚が行われた場合、術の最中にその本人に見られてしまったら失敗するって何かで読んだ気がする」
「失敗するとどうなるの?」
「依頼した内容によるけど、術者に跳ね返るかお願いしたこととは真逆の結果になるんだったんじゃないかな。どちらにしても、とにかく術者の望まない結果になったはず。わたしは自分以外のことで悪魔にお願いしようと思ったことなんてないから、あまり気にしたことなかったんだけど」
「ふーん。術者って、でも桜井さんになるんでしょ?」
優里は、首を傾げた。
「いや、あくまでわたしは操られていただけでわたしに意思はないから、この場合サルラーナを召喚してわたしを操っていた術者に意趣返しされると思う」
説明しながら、自分で納得するように優里はうなずいた。
「だから、術者は慌てて術を解こうとした。でもすでに召喚されてしまっていたから、思わずわたしを使って封じ込めようとしたけどそれも失敗した。その場にいた二人も、自分に害が及ぶことを恐れて逃げ出した。
術者もきっと戸惑ったと思う。クリス君がアーマインにやられてしまってから何か手を打とう、とか考えていたかもしれない。ところが、予想に反してクリス君がアーマインを退治してしまった。だから、術者も倒れたフリをして、記憶を失ったということにしておいた。つまり————」
優里がそこまで言いかけたところで、紗奈が飛び上がってパンと手を叩いた。
「ってことは、犯人は田川先生?」
合わせた手を優里に向けて、言い当てるように紗奈が聞いた。
「そういうことになるかな」
紗奈を見上げて、真剣な表情で優里がうなずいた。
すると紗奈は、クリスを二度指差した。
「ほら、やっぱり!わたしが言ってた通り、田川先生だったでしょう?」
ゆっくりとクリスに歩み寄って、したり顔で紗奈が言った。
「でも単にわたしの予想だから、実際のところはどうか分からないよ」
妙に喜ぶ紗奈を不思議に思いながら、優里は言った。
「ううん。きっとそれで間違いないと思う。だからあの人、昨日倉庫に来たんだよ。わたし最初っから田川先生って何か裏があると思っていたもん」
ブランコの柵にまたがった紗奈は「ね?」と、得意満面の表情でクリスに確認した。
「まあでもそう考えるとクリス君だけが記憶をなくしてないこととかも、すべてがしっくりくるのはたしかだよね」
ひとり納得するように、優里はうんうんとうなずいた。
「でも、田川先生が一体何の目的でそんなことする必要があるの?ぼくと紗奈ちゃんの仲を引き裂こうとしていたっていうこと?」
「別に悪魔を召喚した目的が、わたしとクリスの仲を引き裂こうとしていたかどうかはまだ分からないでしょう?」
紗奈の言葉に、優里も同意した。
「案外、サカモト先輩に頼まれたりでもしてたんじゃない?それで、いい顔をしようとしてやってあげようとしたとか。それかサカモト先輩たちに何か弱みを握られてたとか・・・」
「それはないよ。サカモト先輩がぼくに暴力を振るおうとしたことについて、先生はかなり怒ってたし」とクリスが否定すると、紗奈は「実際はどうだか」と言って肩をすくめた。
「それに・・・」
クリスは優里に視線を向けた。
「田川先生は、桜井さんのことを知らないはずでしょ?それなのに、桜井さんを術者として抜擢するのっておかしくない?」
優里は首を振った。
「それは、あまり関係ないよ。その先生がわたしのことを知らなくても、サルラーナに指示すればいいだけだから。クリス君のなるべく身近な人の中から、アーマインを召喚できるほどの術者を探し出すようにって。それがたまたまわたしだったんだと思う」
「あ、そうなの?」
悪魔にはそんなことも依頼できてしまうなんて、驚きだった。
「やっぱり、田川先生で間違いないよ」
うつむくクリスに、紗奈が言った。
「案外、サカモト先輩たちがクリスを呼び出したのも、田川先生に指示されてのことかもしれないよ?田川先生が悪魔を使って指示した、とか。だからそのときも田川先生がその場に現れたんじゃない?」
紗奈のその意見は、たしかに的を射ていた。しかし、田川先生がなぜそんなことをするのかが不明だった。
クリスと誰か(紗奈?)の仲を引き裂こうとしたか、もしくはクリスを何かしらの仲間に引き入れようとしたか。
そういえば、とクリスはふと夢のことを思い出した。見知らぬ場所で、ひたすら霧の中を歩く夢だ。
そこで、田川先生の声が聞こえてきたのだった。夢の内容を必死に思い出そうとしていると、名前を呼ばれた気がしてクリスは紗奈の方を振り向いた。
紗奈も訝しむような顔をしてクリスを見た。それから、ふたり同時に空を見上げた。
首をひねって優里が言った。
「予想外のこと?」とクリスが聞き返すと、優里は顔を上げてうなずいた。
「うん。それってたぶんクリス君があの場に現れたことなんだと思う。悪魔に依頼する内容が術者以外の人に関することで召喚が行われた場合、術の最中にその本人に見られてしまったら失敗するって何かで読んだ気がする」
「失敗するとどうなるの?」
「依頼した内容によるけど、術者に跳ね返るかお願いしたこととは真逆の結果になるんだったんじゃないかな。どちらにしても、とにかく術者の望まない結果になったはず。わたしは自分以外のことで悪魔にお願いしようと思ったことなんてないから、あまり気にしたことなかったんだけど」
「ふーん。術者って、でも桜井さんになるんでしょ?」
優里は、首を傾げた。
「いや、あくまでわたしは操られていただけでわたしに意思はないから、この場合サルラーナを召喚してわたしを操っていた術者に意趣返しされると思う」
説明しながら、自分で納得するように優里はうなずいた。
「だから、術者は慌てて術を解こうとした。でもすでに召喚されてしまっていたから、思わずわたしを使って封じ込めようとしたけどそれも失敗した。その場にいた二人も、自分に害が及ぶことを恐れて逃げ出した。
術者もきっと戸惑ったと思う。クリス君がアーマインにやられてしまってから何か手を打とう、とか考えていたかもしれない。ところが、予想に反してクリス君がアーマインを退治してしまった。だから、術者も倒れたフリをして、記憶を失ったということにしておいた。つまり————」
優里がそこまで言いかけたところで、紗奈が飛び上がってパンと手を叩いた。
「ってことは、犯人は田川先生?」
合わせた手を優里に向けて、言い当てるように紗奈が聞いた。
「そういうことになるかな」
紗奈を見上げて、真剣な表情で優里がうなずいた。
すると紗奈は、クリスを二度指差した。
「ほら、やっぱり!わたしが言ってた通り、田川先生だったでしょう?」
ゆっくりとクリスに歩み寄って、したり顔で紗奈が言った。
「でも単にわたしの予想だから、実際のところはどうか分からないよ」
妙に喜ぶ紗奈を不思議に思いながら、優里は言った。
「ううん。きっとそれで間違いないと思う。だからあの人、昨日倉庫に来たんだよ。わたし最初っから田川先生って何か裏があると思っていたもん」
ブランコの柵にまたがった紗奈は「ね?」と、得意満面の表情でクリスに確認した。
「まあでもそう考えるとクリス君だけが記憶をなくしてないこととかも、すべてがしっくりくるのはたしかだよね」
ひとり納得するように、優里はうんうんとうなずいた。
「でも、田川先生が一体何の目的でそんなことする必要があるの?ぼくと紗奈ちゃんの仲を引き裂こうとしていたっていうこと?」
「別に悪魔を召喚した目的が、わたしとクリスの仲を引き裂こうとしていたかどうかはまだ分からないでしょう?」
紗奈の言葉に、優里も同意した。
「案外、サカモト先輩に頼まれたりでもしてたんじゃない?それで、いい顔をしようとしてやってあげようとしたとか。それかサカモト先輩たちに何か弱みを握られてたとか・・・」
「それはないよ。サカモト先輩がぼくに暴力を振るおうとしたことについて、先生はかなり怒ってたし」とクリスが否定すると、紗奈は「実際はどうだか」と言って肩をすくめた。
「それに・・・」
クリスは優里に視線を向けた。
「田川先生は、桜井さんのことを知らないはずでしょ?それなのに、桜井さんを術者として抜擢するのっておかしくない?」
優里は首を振った。
「それは、あまり関係ないよ。その先生がわたしのことを知らなくても、サルラーナに指示すればいいだけだから。クリス君のなるべく身近な人の中から、アーマインを召喚できるほどの術者を探し出すようにって。それがたまたまわたしだったんだと思う」
「あ、そうなの?」
悪魔にはそんなことも依頼できてしまうなんて、驚きだった。
「やっぱり、田川先生で間違いないよ」
うつむくクリスに、紗奈が言った。
「案外、サカモト先輩たちがクリスを呼び出したのも、田川先生に指示されてのことかもしれないよ?田川先生が悪魔を使って指示した、とか。だからそのときも田川先生がその場に現れたんじゃない?」
紗奈のその意見は、たしかに的を射ていた。しかし、田川先生がなぜそんなことをするのかが不明だった。
クリスと誰か(紗奈?)の仲を引き裂こうとしたか、もしくはクリスを何かしらの仲間に引き入れようとしたか。
そういえば、とクリスはふと夢のことを思い出した。見知らぬ場所で、ひたすら霧の中を歩く夢だ。
そこで、田川先生の声が聞こえてきたのだった。夢の内容を必死に思い出そうとしていると、名前を呼ばれた気がしてクリスは紗奈の方を振り向いた。
紗奈も訝しむような顔をしてクリスを見た。それから、ふたり同時に空を見上げた。
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