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第三章 悪魔の儀式
第13話 訪問
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「────の5313ね。はーい。ありがとー」
電話を切ると、紗奈が笑顔で振り向いた。
「わかった?」
「うん」
紗奈はうなずき、大きく息を吐いた。
小学校時代からの友人に電話をして三人ほど渡りをつけて、ようやく優里の自宅の電話番号にたどり着いた。
勉強机の椅子に腰かけていた紗奈は、メモとスマホを手にクリスの隣に座った。そして、お盆に載ったオレンジジュースをひと口飲んだ。
「それじゃあ、掛けてみるね」
ポテトチップスを口の中に放り込むと、紗奈はオレンジジュースで流し込んだ。それから、メモを見ながらスマホを操作した。
「もしもし、松木と申しますが、優里ちゃんはいらっしゃいますか?・・・あ、はい。そうです・・・いえ、こちらこそ・・・あ、そうなんですか・・・いえ、あのお話がしたいと思って・・・」
話しながら、紗奈はちらっとクリスを見た。
「あ、本当ですか?昨日一緒にいた友達も一緒なんですけど・・・あ、はい。そうです・・・大丈夫ですか?じゃあ、今から行きます・・・あ、はい。失礼します」
電話を切ると、紗奈はまた大きく息を吐いた。
「今日、桜井さん学校なんだって」
「そうなの?」
「うん。でも授業は午前中だけで、お昼食べてもうじき帰ってくると思うって。だから、是非遊びに来てくださいって」
「そうなんだ。大丈夫かな?」
紗奈は首を傾げた。
「さあ?でもおばさんは、本人も喜ぶだろうから是非って言ってたよ」
「ふーん。そっか」
クリスがうなずくと、紗奈は肩をすくめた。
優里の家は、クリスたちの住む地域からは小学校を挟んで真逆の方向にある。レンガ造りの大きな家だった。
カメラのついたインターホンを紗奈が鳴らすと、応答もなく玄関のドアが開いた。
「いらっしゃい」と、優里の母親が出迎えてくれた。少し太った、眼鏡をかけた優しそうなおばさんだ。
昨夜学校へ迎えに来たときも、誰が被害者で誰が加害者なのか分からない状況でありながらひたすら謝っていた。優里の父親は市議会議員だから教職員も気を遣っているという割には、母親はずい分腰が低かった。
優里はまだ帰宅していなかった。ふたりはリビングへと通された。
広々としたリビングにはグランドピアノが置かれ、奥には2階へと上がる階段があり、吹き抜けになった天井には木製のファンが回っている。ふたりは、母親に勧められるまま茶色い革張りのソファに座った。
「その後、体調は大丈夫?」
アイスティーとロールケーキをふたりの前に置くと、母親が心配そうに紗奈に声をかけた。
「あ、はい。大丈夫です」
脱いだ帽子を膝の上に置いて、紗奈は笑顔で答えた。
「そう。よかった」
母親も微笑むと、クリスと紗奈を交互に見た。
「でも、学校から電話があったときはびっくりしたわ。優里はてっきり塾に行っているものだとばかり思っていたから。あ、どうぞ。召し上がって」
話しながら、母親は紅茶とケーキを勧めた。
「いただきます」と言って、ふたりはミルクとシロップに手を伸ばした。
「それで、紗奈ちゃんもやっぱり覚えてないのでしょう?昨日のことは」
「あ、はい」
ミルクとシロップをストローでかき混ぜながら、紗奈はうなずいた。
「そう」
少しの間紗奈を見つめてから、母親がつぶやいた。
「でもこうして二人が遊びに来てくれて、優里も喜ぶと思うわ」
そう言ってまた笑顔を作ると、母親は話題を変えた。
「小学校の頃、優里はよく紗奈ちゃんやクリス君の話をしていたのよ」
それを聞いて、ふたりはちらっと視線を交わした。ふたりとも優里とはあまり仲が良かったわけではないため、意外だった。かといって、優里が特定の誰かと仲良くしていたような記憶もなかった。
「紗奈ちゃんはお洒落で、今日はこんな服装をしていたとか、こんな髪飾りを着けてたとかね。クリス君のことは、絵が上手でコンクールで賞をもらっていたとか」
そう言って、母親はクリスに微笑みかけた。
たしかに県の絵画コンクールで入賞したことはあったかもしれない、とクリスは思い出した。
しかし、これといって絵が得意というわけではなかった。たまたま一度入賞しただけの快挙を、優里が母親にまで報告しているとは驚きだった。
そこでインターホンが鳴った。
「あ、帰ってきたみたい」
母親は立ち上がってモニターを横目で見ながら、いそいそと玄関へ向かった。
玄関のドアを開けると、「今紗奈ちゃんとクリス君が来てるわよ」といたずらっぽい笑みを浮かべて娘に伝えた。
怪訝そうな表情を浮かべた優里は、母親が口にした言葉の意味を理解すると一瞬にして顔を赤らめた。それから「なんでメールしてくれないの?」と、責めるように言った。
「だって、すぐに帰ってくるし驚かせようと思ったから」と、母親は首をすくめた。
電話を切ると、紗奈が笑顔で振り向いた。
「わかった?」
「うん」
紗奈はうなずき、大きく息を吐いた。
小学校時代からの友人に電話をして三人ほど渡りをつけて、ようやく優里の自宅の電話番号にたどり着いた。
勉強机の椅子に腰かけていた紗奈は、メモとスマホを手にクリスの隣に座った。そして、お盆に載ったオレンジジュースをひと口飲んだ。
「それじゃあ、掛けてみるね」
ポテトチップスを口の中に放り込むと、紗奈はオレンジジュースで流し込んだ。それから、メモを見ながらスマホを操作した。
「もしもし、松木と申しますが、優里ちゃんはいらっしゃいますか?・・・あ、はい。そうです・・・いえ、こちらこそ・・・あ、そうなんですか・・・いえ、あのお話がしたいと思って・・・」
話しながら、紗奈はちらっとクリスを見た。
「あ、本当ですか?昨日一緒にいた友達も一緒なんですけど・・・あ、はい。そうです・・・大丈夫ですか?じゃあ、今から行きます・・・あ、はい。失礼します」
電話を切ると、紗奈はまた大きく息を吐いた。
「今日、桜井さん学校なんだって」
「そうなの?」
「うん。でも授業は午前中だけで、お昼食べてもうじき帰ってくると思うって。だから、是非遊びに来てくださいって」
「そうなんだ。大丈夫かな?」
紗奈は首を傾げた。
「さあ?でもおばさんは、本人も喜ぶだろうから是非って言ってたよ」
「ふーん。そっか」
クリスがうなずくと、紗奈は肩をすくめた。
優里の家は、クリスたちの住む地域からは小学校を挟んで真逆の方向にある。レンガ造りの大きな家だった。
カメラのついたインターホンを紗奈が鳴らすと、応答もなく玄関のドアが開いた。
「いらっしゃい」と、優里の母親が出迎えてくれた。少し太った、眼鏡をかけた優しそうなおばさんだ。
昨夜学校へ迎えに来たときも、誰が被害者で誰が加害者なのか分からない状況でありながらひたすら謝っていた。優里の父親は市議会議員だから教職員も気を遣っているという割には、母親はずい分腰が低かった。
優里はまだ帰宅していなかった。ふたりはリビングへと通された。
広々としたリビングにはグランドピアノが置かれ、奥には2階へと上がる階段があり、吹き抜けになった天井には木製のファンが回っている。ふたりは、母親に勧められるまま茶色い革張りのソファに座った。
「その後、体調は大丈夫?」
アイスティーとロールケーキをふたりの前に置くと、母親が心配そうに紗奈に声をかけた。
「あ、はい。大丈夫です」
脱いだ帽子を膝の上に置いて、紗奈は笑顔で答えた。
「そう。よかった」
母親も微笑むと、クリスと紗奈を交互に見た。
「でも、学校から電話があったときはびっくりしたわ。優里はてっきり塾に行っているものだとばかり思っていたから。あ、どうぞ。召し上がって」
話しながら、母親は紅茶とケーキを勧めた。
「いただきます」と言って、ふたりはミルクとシロップに手を伸ばした。
「それで、紗奈ちゃんもやっぱり覚えてないのでしょう?昨日のことは」
「あ、はい」
ミルクとシロップをストローでかき混ぜながら、紗奈はうなずいた。
「そう」
少しの間紗奈を見つめてから、母親がつぶやいた。
「でもこうして二人が遊びに来てくれて、優里も喜ぶと思うわ」
そう言ってまた笑顔を作ると、母親は話題を変えた。
「小学校の頃、優里はよく紗奈ちゃんやクリス君の話をしていたのよ」
それを聞いて、ふたりはちらっと視線を交わした。ふたりとも優里とはあまり仲が良かったわけではないため、意外だった。かといって、優里が特定の誰かと仲良くしていたような記憶もなかった。
「紗奈ちゃんはお洒落で、今日はこんな服装をしていたとか、こんな髪飾りを着けてたとかね。クリス君のことは、絵が上手でコンクールで賞をもらっていたとか」
そう言って、母親はクリスに微笑みかけた。
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しかし、これといって絵が得意というわけではなかった。たまたま一度入賞しただけの快挙を、優里が母親にまで報告しているとは驚きだった。
そこでインターホンが鳴った。
「あ、帰ってきたみたい」
母親は立ち上がってモニターを横目で見ながら、いそいそと玄関へ向かった。
玄関のドアを開けると、「今紗奈ちゃんとクリス君が来てるわよ」といたずらっぽい笑みを浮かべて娘に伝えた。
怪訝そうな表情を浮かべた優里は、母親が口にした言葉の意味を理解すると一瞬にして顔を赤らめた。それから「なんでメールしてくれないの?」と、責めるように言った。
「だって、すぐに帰ってくるし驚かせようと思ったから」と、母親は首をすくめた。
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