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第二章 クリスタルエレメント
第52話 ボラルクの憧れ
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洞窟内は、水の流れる音が響き渡っていた。ダルミアの後に従って、クリスとボラルクは無言で進んだ。
しばらく進んでいくと、カーブを描く通路の前方に光が見えた。壁に浮かぶ炎の影が、弾むように踊っている。
カーブを曲がったクリスたちの前に、4人の兵隊を従えたグレンの姿が現れた。
滝が流れ落ちる大きな泉の前で兵隊の中央に立ち、クリスの姿を認めると深々とお辞儀をした。その両脇で、兵士たちもそれぞれ松明を手にしたまま頭を下げた。
『お待ちしておりました』
頭を上げると、グレンが笑顔で歓迎した。
『はじめまして。俺はボラルクといいます』
クリスが挨拶するより先に、ボラルクが一歩歩み出て名前を名乗った。それからさらにグレンのそばへ歩み寄ると、自己紹介を始めた。
『ワイメリア地区の鍛冶屋の一人息子で、いつも海底でウルツァイトやオリカルクムを採集しています。実は俺、グレン王子にずっと憧れていました。
今の海底都市があるのは、王子のおかげです。かつて海底都市が地表世界と変わらないほど闇に汚染されていたのに、地底都市などの四大都市と並ぶ崇高な文明都市になれたのは、王子が俺たち市民に海底人としての誇りを思い出させてくれたからに他なりません。
王子という立場でありながら、危険を顧みずに常に行動で示してきてくれたおかげで、俺たち一人ひとりが自分の中に光を見出すことができました。マジで尊敬してます』
ボラルクが握手を求めると、グレンは笑顔で応じた。
『ありがとう。でも、私は何もしていません。私はただ海底世界のために、一海底人として当然のことをしてきただけです。海底都市がこのように進化できたのは、皆さんのおかげですよ』
そう言葉をかけるグレンを憧れの眼差しで見つめながらも、畏れ多いとばかりにボラルクは首をすくめた。
『それでは、参りましょうか』
クリスに視線を向け、うなずくとグレンが言った。
『あ、はい』と返事をしながらも、クリスは周囲を見回した。アルメイオンの姿がどこにも見当たらなかった。すると、グレンが察したように言った。
『アルメイオンは、父君に呼びつけられて急遽アトライオスへ戻ることになってしまいました。クリスさんにはくれぐれもよろしくお伝えください、と言われております』
残念そうにグレンは目を伏せた。
『そうなんですか』
ガイオンが何か嗅ぎつけたりでもしたのだろうか。残念な気持ちと同時に、不安な気持ちが押し寄せた。
心配そうな表情を見せるクリスに、グレンが微笑みかけた。
『とにかく、我々は我々がなすべきことをやりましょう』
そう言ってグレンは力強くうなずくと、励ますようにクリスの肩をポンと叩いた。それから、泉の方を振り向いた。そして、天井から滝の流れ落ちる泉に向かって歩を進めた。
両脇には一人ずつ兵士が付き従って、松明を掲げて先を照らした。グレンもその両脇の兵士も、泉に沈むことなく水面を歩いている。
『我々も続きましょう』と言って、ダルミアがクリスとボラルクの背中をそっと押した。ふたりは顔を見合わせると、どちらからともなく泉に向かって歩を進めた。残った兵士が松明を掲げてふたりに付き添った。
水面は、ゼリーのような弾力があった。ボラルクが泉の上に立ったのを見て、クリスも足を踏み入れた。
不安定ではあるが、立つことができた。しかし立ち止まってしまうと、底なし沼のようにずるずると下へ埋まっていってしまう。クリスは慌てて先を行くボラルクの後を追いかけた。
前方を行くグレンは、滝に差し掛かっていた。そして立ち止まることなく、滝に向かって前進した。すると、まるで両側からカーテンが引かれたように流れ落ちる滝が真っ二つに分断された。
グレンは、兵士と共にその滝の下を通って先へ進んだ。クリスとボラルクも後に続いて、同じように滝をくぐり抜けた。
しばらく進んでいくと、カーブを描く通路の前方に光が見えた。壁に浮かぶ炎の影が、弾むように踊っている。
カーブを曲がったクリスたちの前に、4人の兵隊を従えたグレンの姿が現れた。
滝が流れ落ちる大きな泉の前で兵隊の中央に立ち、クリスの姿を認めると深々とお辞儀をした。その両脇で、兵士たちもそれぞれ松明を手にしたまま頭を下げた。
『お待ちしておりました』
頭を上げると、グレンが笑顔で歓迎した。
『はじめまして。俺はボラルクといいます』
クリスが挨拶するより先に、ボラルクが一歩歩み出て名前を名乗った。それからさらにグレンのそばへ歩み寄ると、自己紹介を始めた。
『ワイメリア地区の鍛冶屋の一人息子で、いつも海底でウルツァイトやオリカルクムを採集しています。実は俺、グレン王子にずっと憧れていました。
今の海底都市があるのは、王子のおかげです。かつて海底都市が地表世界と変わらないほど闇に汚染されていたのに、地底都市などの四大都市と並ぶ崇高な文明都市になれたのは、王子が俺たち市民に海底人としての誇りを思い出させてくれたからに他なりません。
王子という立場でありながら、危険を顧みずに常に行動で示してきてくれたおかげで、俺たち一人ひとりが自分の中に光を見出すことができました。マジで尊敬してます』
ボラルクが握手を求めると、グレンは笑顔で応じた。
『ありがとう。でも、私は何もしていません。私はただ海底世界のために、一海底人として当然のことをしてきただけです。海底都市がこのように進化できたのは、皆さんのおかげですよ』
そう言葉をかけるグレンを憧れの眼差しで見つめながらも、畏れ多いとばかりにボラルクは首をすくめた。
『それでは、参りましょうか』
クリスに視線を向け、うなずくとグレンが言った。
『あ、はい』と返事をしながらも、クリスは周囲を見回した。アルメイオンの姿がどこにも見当たらなかった。すると、グレンが察したように言った。
『アルメイオンは、父君に呼びつけられて急遽アトライオスへ戻ることになってしまいました。クリスさんにはくれぐれもよろしくお伝えください、と言われております』
残念そうにグレンは目を伏せた。
『そうなんですか』
ガイオンが何か嗅ぎつけたりでもしたのだろうか。残念な気持ちと同時に、不安な気持ちが押し寄せた。
心配そうな表情を見せるクリスに、グレンが微笑みかけた。
『とにかく、我々は我々がなすべきことをやりましょう』
そう言ってグレンは力強くうなずくと、励ますようにクリスの肩をポンと叩いた。それから、泉の方を振り向いた。そして、天井から滝の流れ落ちる泉に向かって歩を進めた。
両脇には一人ずつ兵士が付き従って、松明を掲げて先を照らした。グレンもその両脇の兵士も、泉に沈むことなく水面を歩いている。
『我々も続きましょう』と言って、ダルミアがクリスとボラルクの背中をそっと押した。ふたりは顔を見合わせると、どちらからともなく泉に向かって歩を進めた。残った兵士が松明を掲げてふたりに付き添った。
水面は、ゼリーのような弾力があった。ボラルクが泉の上に立ったのを見て、クリスも足を踏み入れた。
不安定ではあるが、立つことができた。しかし立ち止まってしまうと、底なし沼のようにずるずると下へ埋まっていってしまう。クリスは慌てて先を行くボラルクの後を追いかけた。
前方を行くグレンは、滝に差し掛かっていた。そして立ち止まることなく、滝に向かって前進した。すると、まるで両側からカーテンが引かれたように流れ落ちる滝が真っ二つに分断された。
グレンは、兵士と共にその滝の下を通って先へ進んだ。クリスとボラルクも後に続いて、同じように滝をくぐり抜けた。
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