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第二章 クリスタルエレメント
第42話 クリスからの連絡
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クリスの脳裏には、カンナンの波止場に立つ皆の姿が浮かんでいた。
エランドラの胸に顔を埋めて泣く紗奈の姿があった。クレアもラマルに抱きつき、泣いている。ベベは鼻をくんくんさせながら、ずっと海の上を飛び回っている。マーティスとローワンは、無言のまま船上で佇んでいた。
『誰と話したい?』
アルメイオンの声がクリスの頭に響いた。
『話ができるのですか?』
『ええ。一人ひとりであればつなげられるわ。でも、本当に信じられる人だけにして』
それならやっぱり紗奈ちゃんがいい、とクリスは思った。
『紗奈ちゃんと話したいです』
紗奈に焦点を合わせて、クリスが言った。すると、瞬時に紗奈の姿が拡大された。
『では、話しかけて。でもあまり長くリンクさせ続けることはできないから、手短にね』
そう話すアルメイオンの声が少しずつ遠のいていった。
**********************************************************
『紗奈ちゃん』
クリスの声が頭に響いて、紗奈はビクッと肩を震わせた。エランドラの胸から頭を上げて、紗奈はあたりを見回した。
「クリス?」
『しーっ。静かに!』
やっぱりクリスの声だった。エランドラの顔を見上げると、エランドラも悟ったように紗奈に微笑み返した。
周りを見たが、他の人は気づいていないようだ。
『紗奈ちゃん落ち着いて聞いて』と、クリスの声が再び響いた。
『他の人に気づかれないように注意してね。ローワンさんには特に』
涙を拭い、エランドラの胸にまた顔を埋めるようにして紗奈はうなずいた。
『ぼくは生きてるから心配しないで。今は、レグイアの真下にある海底洞窟にいるんだ。アルメイオンっていう人魚に助けられて。心配かけてごめんね』
その言葉を聞いて、温かい涙が紗奈の頬を伝った。
『でもぼくが生きていることは、まだあまり知られない方がいいみたいなんだ。時間がないから詳しいことは今話せないけど』
顔を埋めたまま『うん』と、紗奈はそっと返事をした。
『ぼくはこれからアクアを探しに行ってくる。アクアは、どうやらアトライオスにはないらしいんだ。ハワイ沖の海底都市、ラムレリアというところにあるんだって。そこまではアルメイオンが案内してくれる。大丈夫だから心配しないでね』
紗奈は『分かった。気をつけてね』と返事をした。
『ぼくが無事であることをベベにも伝えてあげてほしい。あと、クレアやエランドラ、ラマルにも伝えて。それで、一度ローワンさんとは離れてどこかで待っていてほしい。あの人は、もしかしたら信用できないかもしれないから』
紗奈は顔を上げて、ちらっと横目でローワンの方を見た。ローワンは甲板の手すりに腰かけ、うつむいたままだった。クリスとの会話には気づかれていないはずだ。紗奈は、また『分かった』と返事をした。
『とにかく、ぼくは無事だから心配しないで・・・』
そこまで聞こえたところで、クリスの声が突然途絶えてしまった。
『クリス?』と呼びかけても、返事がない。紗奈は再び不安に襲われたが、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。何より、クリスが生きていた。そう思ったら、自然と笑顔がこぼれた。
エランドラの胸に顔を埋めて泣く紗奈の姿があった。クレアもラマルに抱きつき、泣いている。ベベは鼻をくんくんさせながら、ずっと海の上を飛び回っている。マーティスとローワンは、無言のまま船上で佇んでいた。
『誰と話したい?』
アルメイオンの声がクリスの頭に響いた。
『話ができるのですか?』
『ええ。一人ひとりであればつなげられるわ。でも、本当に信じられる人だけにして』
それならやっぱり紗奈ちゃんがいい、とクリスは思った。
『紗奈ちゃんと話したいです』
紗奈に焦点を合わせて、クリスが言った。すると、瞬時に紗奈の姿が拡大された。
『では、話しかけて。でもあまり長くリンクさせ続けることはできないから、手短にね』
そう話すアルメイオンの声が少しずつ遠のいていった。
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『紗奈ちゃん』
クリスの声が頭に響いて、紗奈はビクッと肩を震わせた。エランドラの胸から頭を上げて、紗奈はあたりを見回した。
「クリス?」
『しーっ。静かに!』
やっぱりクリスの声だった。エランドラの顔を見上げると、エランドラも悟ったように紗奈に微笑み返した。
周りを見たが、他の人は気づいていないようだ。
『紗奈ちゃん落ち着いて聞いて』と、クリスの声が再び響いた。
『他の人に気づかれないように注意してね。ローワンさんには特に』
涙を拭い、エランドラの胸にまた顔を埋めるようにして紗奈はうなずいた。
『ぼくは生きてるから心配しないで。今は、レグイアの真下にある海底洞窟にいるんだ。アルメイオンっていう人魚に助けられて。心配かけてごめんね』
その言葉を聞いて、温かい涙が紗奈の頬を伝った。
『でもぼくが生きていることは、まだあまり知られない方がいいみたいなんだ。時間がないから詳しいことは今話せないけど』
顔を埋めたまま『うん』と、紗奈はそっと返事をした。
『ぼくはこれからアクアを探しに行ってくる。アクアは、どうやらアトライオスにはないらしいんだ。ハワイ沖の海底都市、ラムレリアというところにあるんだって。そこまではアルメイオンが案内してくれる。大丈夫だから心配しないでね』
紗奈は『分かった。気をつけてね』と返事をした。
『ぼくが無事であることをベベにも伝えてあげてほしい。あと、クレアやエランドラ、ラマルにも伝えて。それで、一度ローワンさんとは離れてどこかで待っていてほしい。あの人は、もしかしたら信用できないかもしれないから』
紗奈は顔を上げて、ちらっと横目でローワンの方を見た。ローワンは甲板の手すりに腰かけ、うつむいたままだった。クリスとの会話には気づかれていないはずだ。紗奈は、また『分かった』と返事をした。
『とにかく、ぼくは無事だから心配しないで・・・』
そこまで聞こえたところで、クリスの声が突然途絶えてしまった。
『クリス?』と呼びかけても、返事がない。紗奈は再び不安に襲われたが、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせた。何より、クリスが生きていた。そう思ったら、自然と笑顔がこぼれた。
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