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第二章 クリスタルエレメント
第19話 宇宙人のペテラ
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クリスタルのトンネルを猛スピードで走行するジェカルは、まるで遊園地のアトラクションのようだった。クリスと紗奈は地底世界へやってきた目的も忘れ、あちこちに見える珍しい形をした建物や空飛ぶドラゴンなどを指差しては歓声を上げた。
しばらく走ってクリスタルのトンネルを抜けると、ジェカルは左右湖に囲まれた真っ直ぐの一本道を進んだ。
「あそこがベスタメルナかな?」
前方に見えてきた街を指差して、紗奈が言った。
「でもこっちの服、ピューラだっけ?それに着替えるって言うけど、クレアとかエランドラが着ているようなあんなシンプルなワンピースみたいな服になるのかな」
そう言って、紗奈はクリスに視線を向けた。
「うーん、どうなんだろうね?」とクリスが首を傾げると、「気に入るようなのだといいけど・・・」と紗奈はつぶやいた。
街に入ると、ボートの船着場のような広いスペースへとジェカルは一列になって入っていった。
何列にも並んだ船着場に乗り付けると、皆そこでジェカルを降りた。するとジェカルは無人で走行し、奥の地下へと下るスロープを下りていってしまった。
『帰りにまた呼ぶから大丈夫だよ』
クリスが心配そうにジェカルの行方を目で追っていると、安心させるようにクレアが言った。
ベスタメルナも、他と同様どこもかしこも白を基調としていた。全体的に建物の造りは小ぢんまりとした、商店の建ち並ぶ街だ。人通りも多く、にぎわっている。
店の入り口に掲げられた看板の文字は、どれも地上にはないような文字だった。文字というより記号のようだ。
その商店街の一角に、少し変わった形の建物があった。
白く丸味を帯びたその建物は、外壁にびっしりと細かく糸を張り巡らせたような模様があり、まるで巨大な蚕のようだった。
クレアがその建物を指差し『ここだよ』と言った。
店の看板には、次のような文字が書かれていた。
「〓ю┗§Б‡〓」
何と書かれているのだろう?と、クリスは看板の文字をまじまじと見つめた。
気づくと、いつの間にか皆の姿がなくなっていた。クリスは慌てて店に入った。
店内は天井が高く、外観から想像する以上に広かった。床には羊毛のようにふかふかしたカーペットが敷かれ、天井にはキラキラと光る布が羽衣のように宙に浮かんでいた。
さらに、服を着せられたマネキンがその布の間を潜り抜けるように宙を舞っている。
クリスと紗奈がその光景に見とれていると、クレアが奥から店員を連れてきた。
『この二人だよ』と言って、クレアは店員にクリスと紗奈を紹介した。
『いらっしゃい』
胸の前で手を組んで一礼をしたその店員は、まるで宇宙人のような出で立ちをしていた。4本しかない手の指はカニの手足のように細長く、肌はオレンジ色だった。
背は低くクリスたちとさほど変わらないが、まるでハロウィンのかぼちゃの被り物でも被っているかのように頭だけは異常に大きい。
その大きな頭には、毛が一本もなかった。年齢も性別も不明だが、見た目からは相当な年を取った老人という印象を受けた。
物珍しそうに見つめるクリスを、店員は大きな目で見つめ返した。それから『地表世界から来たのでは、私たちみたいな種族は珍しいかな?』と言った。
『あ、えっと・・・いや、あの・・・』
しどろもどろになるクリスに微笑むと、店員のしわくちゃな顔には一層の皺が刻まれた。
『いや、いいんですよ。たしかに私たちはこの地球の人間ではないですから』
『あ、そうなんですか』とクリスが答えると、紗奈が横から『それじゃあ、どこか別の星から来たっていうことですか?』と質問した。
頭でっかちなオレンジ色の店員は、再び顔をしわくちゃにすると紗奈に微笑みかけた。
『ええ、そうですとも。地球からは一千光年以上離れた星から来たのです』
『へぇ・・・』
一千光年と言われてもピンとこないが、クリスも紗奈も感心するようにうなずいた。
『ところで、申し遅れましたが、私はペテラといいます。ここでこうして皆さんのお召し物を仕立てることで、人々に奉仕をしております』
そう言って自己紹介すると、ペテラは深々とお辞儀をした。
『先ほど、クレアさんからお二人のピューラを仕立ててほしいと伺いました。早速ですが、ちょっとよろしいかな?』
ペテラはクリスに近づくと、目の前で突然両手を広げた。
それから、カニの手足のような長い指先で、頭の上から足の先までクリスの体を隈なくなぞった。
『両手を水平に上げてもらっていいですか?』
クリスは指示されるまま、水平にピンと手を伸ばした。
その手に沿って指をかざしながら、ペテラも両手を広げていった。
何をしているのかと紗奈が聞くと、採寸をしているのだとペテラは答えた。メジャーはいらないのかという疑問に対しては、指で感知してデータをとっているから必要ないのだという思念を返した。
『さて、お次はお嬢さん。よろしいかな?』
クリスの体を採寸し終えると、今度は紗奈の採寸を始めた。それから紗奈の採寸も終えると、今度はベベに向かってペテラは微笑んだ。
『せっかくだから、あなたにも仕立ててあげましょう』
ペテラはしゃがんで、両手をベベに伸ばした。ベベは片足を上げて身じろぎしながら、近づけられたペテラの指をくんくんと嗅いだ。
しばらく走ってクリスタルのトンネルを抜けると、ジェカルは左右湖に囲まれた真っ直ぐの一本道を進んだ。
「あそこがベスタメルナかな?」
前方に見えてきた街を指差して、紗奈が言った。
「でもこっちの服、ピューラだっけ?それに着替えるって言うけど、クレアとかエランドラが着ているようなあんなシンプルなワンピースみたいな服になるのかな」
そう言って、紗奈はクリスに視線を向けた。
「うーん、どうなんだろうね?」とクリスが首を傾げると、「気に入るようなのだといいけど・・・」と紗奈はつぶやいた。
街に入ると、ボートの船着場のような広いスペースへとジェカルは一列になって入っていった。
何列にも並んだ船着場に乗り付けると、皆そこでジェカルを降りた。するとジェカルは無人で走行し、奥の地下へと下るスロープを下りていってしまった。
『帰りにまた呼ぶから大丈夫だよ』
クリスが心配そうにジェカルの行方を目で追っていると、安心させるようにクレアが言った。
ベスタメルナも、他と同様どこもかしこも白を基調としていた。全体的に建物の造りは小ぢんまりとした、商店の建ち並ぶ街だ。人通りも多く、にぎわっている。
店の入り口に掲げられた看板の文字は、どれも地上にはないような文字だった。文字というより記号のようだ。
その商店街の一角に、少し変わった形の建物があった。
白く丸味を帯びたその建物は、外壁にびっしりと細かく糸を張り巡らせたような模様があり、まるで巨大な蚕のようだった。
クレアがその建物を指差し『ここだよ』と言った。
店の看板には、次のような文字が書かれていた。
「〓ю┗§Б‡〓」
何と書かれているのだろう?と、クリスは看板の文字をまじまじと見つめた。
気づくと、いつの間にか皆の姿がなくなっていた。クリスは慌てて店に入った。
店内は天井が高く、外観から想像する以上に広かった。床には羊毛のようにふかふかしたカーペットが敷かれ、天井にはキラキラと光る布が羽衣のように宙に浮かんでいた。
さらに、服を着せられたマネキンがその布の間を潜り抜けるように宙を舞っている。
クリスと紗奈がその光景に見とれていると、クレアが奥から店員を連れてきた。
『この二人だよ』と言って、クレアは店員にクリスと紗奈を紹介した。
『いらっしゃい』
胸の前で手を組んで一礼をしたその店員は、まるで宇宙人のような出で立ちをしていた。4本しかない手の指はカニの手足のように細長く、肌はオレンジ色だった。
背は低くクリスたちとさほど変わらないが、まるでハロウィンのかぼちゃの被り物でも被っているかのように頭だけは異常に大きい。
その大きな頭には、毛が一本もなかった。年齢も性別も不明だが、見た目からは相当な年を取った老人という印象を受けた。
物珍しそうに見つめるクリスを、店員は大きな目で見つめ返した。それから『地表世界から来たのでは、私たちみたいな種族は珍しいかな?』と言った。
『あ、えっと・・・いや、あの・・・』
しどろもどろになるクリスに微笑むと、店員のしわくちゃな顔には一層の皺が刻まれた。
『いや、いいんですよ。たしかに私たちはこの地球の人間ではないですから』
『あ、そうなんですか』とクリスが答えると、紗奈が横から『それじゃあ、どこか別の星から来たっていうことですか?』と質問した。
頭でっかちなオレンジ色の店員は、再び顔をしわくちゃにすると紗奈に微笑みかけた。
『ええ、そうですとも。地球からは一千光年以上離れた星から来たのです』
『へぇ・・・』
一千光年と言われてもピンとこないが、クリスも紗奈も感心するようにうなずいた。
『ところで、申し遅れましたが、私はペテラといいます。ここでこうして皆さんのお召し物を仕立てることで、人々に奉仕をしております』
そう言って自己紹介すると、ペテラは深々とお辞儀をした。
『先ほど、クレアさんからお二人のピューラを仕立ててほしいと伺いました。早速ですが、ちょっとよろしいかな?』
ペテラはクリスに近づくと、目の前で突然両手を広げた。
それから、カニの手足のような長い指先で、頭の上から足の先までクリスの体を隈なくなぞった。
『両手を水平に上げてもらっていいですか?』
クリスは指示されるまま、水平にピンと手を伸ばした。
その手に沿って指をかざしながら、ペテラも両手を広げていった。
何をしているのかと紗奈が聞くと、採寸をしているのだとペテラは答えた。メジャーはいらないのかという疑問に対しては、指で感知してデータをとっているから必要ないのだという思念を返した。
『さて、お次はお嬢さん。よろしいかな?』
クリスの体を採寸し終えると、今度は紗奈の採寸を始めた。それから紗奈の採寸も終えると、今度はベベに向かってペテラは微笑んだ。
『せっかくだから、あなたにも仕立ててあげましょう』
ペテラはしゃがんで、両手をベベに伸ばした。ベベは片足を上げて身じろぎしながら、近づけられたペテラの指をくんくんと嗅いだ。
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