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第二章 クリスタルエレメント
第1話 卒業式
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校庭の桜は、今にもそのふっくらとした蕾をほころばせようと枝を大きく伸ばしている。
今日のこの暖かさが、きっとさらに開花を促進することだろう。
どこかに花を咲かせた蕾がないか見上げていると、後ろから肩を叩かれた。
振り返った紗奈の前には、ユウカが母親を連れて立っていた。その後ろには、はしゃいだ様子のミナとカオリがいる。
紗奈は、ユウカの母親に指示されるまま卒業証書を掲げて記念撮影に応じた。
すると次々とクラスメイトがやってきて、写真をせがまれた。
紗奈はまるで有名人にでもなった気分で、その一つひとつにポーズを決めた。
そうこうしているうちに、玄関の方がまた騒がしくなってきた。
ようやく、2組も最後のホームルームが終わったようだ。
2組の担任の佐藤先生は6年生を受け持つのが初めてだと言っていたから、別れの挨拶がつい長引いてしまったのだろう。
涙を流して別れを惜しむ若い女性担任の姿を、紗奈は容易に想像することができた。
写真撮影に応じながら、玄関から出てくる生徒たちの中に色白で小柄な少年の姿を探した。
「クリス、春休みどこか出かけたりするのか?」
教室を出ると、タケシに声をかけられた。
「ううん、特に予定はないよ。強いて言えば、毎日ベベの散歩に行くくらいかな」
「なんだよ、それ」と言って、タケシが笑った。
「それじゃあ、ヨウヘイとかヒロトたちとチャリでまたどこか探検しに行こうぜ」
「うん、いいよ」
「おう、じゃあいつにするか決まったら連絡するよ。それじゃあまたな」
「うん、じゃあね」
玄関を出たところで、クリスはタケシに手を振り返した。
すっかり仲良しになっている。
クリスとタケシの姿を遠目に見ながら、紗奈は心の中で微笑んだ。
ベベが亡くなった次の月曜日だった。
朝、登校するときのクリスの様子がいつもと違っていた。
それまでの陰鬱な雰囲気はなくなり、紗奈と昔よく遊んでいた頃のように明るくなっていたのだ。
そしてその日のお昼休みには、いじめっ子だったタケシやヨウヘイたちと一緒にキックベースをしていた。
紗奈には不思議でならなかった。
まるでクリスがいじめられていたのは別次元の出来事だったのではないかと、キツネにつままれたような気分になった。
その理由を問い質しても、「別に何もない」とクリスは答えるだけだった。
クリスがいじめられていたなんて嘘だったかのように、周りのみんなもクリスと接するようになっていた。
どちらにしても、クリスが以前のように元気を取り戻して明るくなったのは喜ばしいことだと、紗奈はその変化を受け入れることにしたのだった。
桜の木の下で待つ紗奈に気がつき、クリスが笑顔で駆け寄ってきた。それから、二人は小学校に最後の別れを告げた。
今日のこの暖かさが、きっとさらに開花を促進することだろう。
どこかに花を咲かせた蕾がないか見上げていると、後ろから肩を叩かれた。
振り返った紗奈の前には、ユウカが母親を連れて立っていた。その後ろには、はしゃいだ様子のミナとカオリがいる。
紗奈は、ユウカの母親に指示されるまま卒業証書を掲げて記念撮影に応じた。
すると次々とクラスメイトがやってきて、写真をせがまれた。
紗奈はまるで有名人にでもなった気分で、その一つひとつにポーズを決めた。
そうこうしているうちに、玄関の方がまた騒がしくなってきた。
ようやく、2組も最後のホームルームが終わったようだ。
2組の担任の佐藤先生は6年生を受け持つのが初めてだと言っていたから、別れの挨拶がつい長引いてしまったのだろう。
涙を流して別れを惜しむ若い女性担任の姿を、紗奈は容易に想像することができた。
写真撮影に応じながら、玄関から出てくる生徒たちの中に色白で小柄な少年の姿を探した。
「クリス、春休みどこか出かけたりするのか?」
教室を出ると、タケシに声をかけられた。
「ううん、特に予定はないよ。強いて言えば、毎日ベベの散歩に行くくらいかな」
「なんだよ、それ」と言って、タケシが笑った。
「それじゃあ、ヨウヘイとかヒロトたちとチャリでまたどこか探検しに行こうぜ」
「うん、いいよ」
「おう、じゃあいつにするか決まったら連絡するよ。それじゃあまたな」
「うん、じゃあね」
玄関を出たところで、クリスはタケシに手を振り返した。
すっかり仲良しになっている。
クリスとタケシの姿を遠目に見ながら、紗奈は心の中で微笑んだ。
ベベが亡くなった次の月曜日だった。
朝、登校するときのクリスの様子がいつもと違っていた。
それまでの陰鬱な雰囲気はなくなり、紗奈と昔よく遊んでいた頃のように明るくなっていたのだ。
そしてその日のお昼休みには、いじめっ子だったタケシやヨウヘイたちと一緒にキックベースをしていた。
紗奈には不思議でならなかった。
まるでクリスがいじめられていたのは別次元の出来事だったのではないかと、キツネにつままれたような気分になった。
その理由を問い質しても、「別に何もない」とクリスは答えるだけだった。
クリスがいじめられていたなんて嘘だったかのように、周りのみんなもクリスと接するようになっていた。
どちらにしても、クリスが以前のように元気を取り戻して明るくなったのは喜ばしいことだと、紗奈はその変化を受け入れることにしたのだった。
桜の木の下で待つ紗奈に気がつき、クリスが笑顔で駆け寄ってきた。それから、二人は小学校に最後の別れを告げた。
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