クリスの物語

daichoro

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第一章 過去世の記憶

第43話 ファロスの意思

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 受付のフロアへ戻ってソレーテと別れた後、ファロスたちはラムザに一部始終を報告した。それから窓際のテーブル席に座った。


『さて、と。これからどうしよっか?』

 椅子に座ると、ファロスの意向を確認するようにクレアが聞いた。


「いや。俺はもう地上へ戻るつもりだ」


 ファロスの予想外の言葉に、クレアは「えー?」と言って身をのけ反らせた。

 エランドラとラマルも驚いた様子でファロスを見た。


「エメルアの病がアルタシアの呪いによるものではなく、それにドラゴンの石を手に入れたところでエメルアの命を救えるわけではないというのであれば、俺がこっちに留まる理由はない。

 闇の勢力が地球を侵略しようとしているのだか何だか知らないが、はっきり言って俺には関係のないことだ」


『まぁ、それはそうかもしれないけど・・・。でも、今地上へ戻ったところでエメルアの病を治すのに何の手立てもないでしょう?』


「たしかにそうだが、ここでじっとしていてもしょうがない。エメルアのかかっている病が呪いによるものではないということなら、治せる見込みがないわけでもないだろう。地上へ戻って、病に効く薬を探して回ろうと思う」


『う…ん、どう思う?』

 クレアが意見を求めると、エランドラは仕方がないというようにうなずいた。


『あなたが自分自身でそう決めたのなら、わたしたちがこちらへ引き留める理由はもちろんないわ。それに、あなたが地上へ戻っても、わたしは常にあなたとともにいるということを忘れないで』


 ファロスは分かったと、うなずいた。

 すると、クレアが『ねぇ』と言ってファロスの袖を引っ張った。


『わたしのことも忘れたりしないでよね』

「もちろんだ。忘れるわけないだろう」

 クレアはその言葉に満足そうに微笑んだ。


『向こうへ行っても、きっとまた戻ってくるでしょう?』

「ああ、そうだな。エメルアの病が治って無事元気になったら、またこっちへ来てみるのも悪くないかもな」

『何、その言い方?絶対戻ってきてよね』


 それから、クレアは左腕にはめていた銀の腕輪を外した。そしてそれをファロスの腕に当てがった。

 すると、腕輪はくるくるとファロスの腕に巻きついた。


『上げるんじゃないよ。貸してあげるだけ。今度会ったときに絶対返してよね。ママからもらったすごく大事なものなんだから』

「ああ、分かった」


『約束だよ』そう言ってクレアがファロスの手を取ると『でも』と、か細い声が聞こえた。

『もぉー、このタイミングで何よ?』

 クレアが振り返ってラマルをにらんだ。


『あの・・・その前にイビージャのクルストンをもう一度見に行かなくていいのかな?』

「ああ、たしかにそうだな。地上へ戻る前に何があったのかやはり見ておいた方がいいだろうな。オルゴスがどこにいるのかも分かるだろうしな」


『そっか。そうだね。そうとなったら、もう一度3312号館に行ってみよっか』


 それからラムザに事情を説明し、ファロスたちはまた3312号館へ向かった。



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