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ローザリアは朝と夜以外にも働いています

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「おめでとう、フローラ」
長年ローザリアの侍女を勤めてくれていたフローラが出産の為休みを取ることになった。どうしてか分からないが、ローザリア周辺の侍女やメイドは主人を追随するように結婚、出産ラッシュだ。しかも、これまたどうしてか分からないが、皆近衛騎士と結ばれている。

けれど、本丸の一人、ルイスの兄であるパーシバルは未婚のまま。話すようになって分かったのだが、パーシバルはとても良い人だ。しかも、ルイスよりは劣るかもしれないが、美形であることは間違いない。考えられるのは、夜の仕事人としては『お縛りのルイス』の兄なだけに変な性癖があるのか、夜の音楽の奏で方がルイス同様激しいか…。いくら兄弟でもそんなところまで似るのか夏菜子は疑問を持ちながらも、大切な書類の作成を始めた。


「エコール・ド・ベル?変わった名前だけれど面白い発想だね」
「名前はなんとなくだから、特に意味はないの。ただ、良い音かしら、と思って」
夏菜子の通った女子大では何故か第二外国語にフランス語を取る人が多かった。夏菜子もその一人。成績は落第しない程度、発音は笑いを取る為の一発芸程度と言ったところだった。


今回始動させる事業計画名にはフランス語を付けよう、と安易に思ったのだが自分が発音出来ないものをどうやって人前で話すのか。真面目な会議だから笑いは取らなくいい。けれど、美しいことに繋がることなので、どうしてもフランス語を夏菜子は付けたかった。
そこで、苦し紛れに覚えていた単語を二つ結び付けたのだった。学校を意味するエコールと、美しいを意味するベル。この二つならば、ちゃんと言える。序に、『ラ』とか『ド』とかそれらしい一文字を挟めば体裁が良くなる気がして入れておいた。

名前はこんな感じで付けたが、中身には自信がある。
夫達が進めた公共入浴施設と保養リゾート施設計画。公共入浴施設は、湯が湧き出るところに建物を作っただけの簡単なものだったが、お陰で排水路が出来様々な観点から民の衛生面が向上したのだった。
保養リゾート施設も、寒さが厳しい国の富裕層が遊びに来るようになりその地域は潤っている。夏菜子の計画はそこに女性用のエステ施設を作ることだった。

フローラの様にマッサージ技術の高い侍女やメイドが沢山いるのに、遊ばせておくのはもったいない。そこで、美容学校を創設してその技術を学ぶ場所を女性に提供しようと夏菜子は考えたのだった。
フローラ達も出産後直ぐにはフルで働くかどうか迷うだろう。しかし、学校ならば教えるコマ数によって働く時間が変わってくる。労働時間の選択が出来るのだ。

問題は費用。けれど保養リゾート施設は国が運営するもの。その中のエステも国が管理するのだから、行く行くは採算がとれるはず。取らぬ狸の皮算用にならないよう、プロモーションもしっかりやっていくつもりだ。

「費用面もいいんじゃないかな。保養リゾートは既に他国でも話題になっているようだから、今後も集客は見込めるし」
「ああ、それ、面白い噂も流れているって知ってた?」
「面白い噂?」
「我が国スクデリーク王国は最近『実の成る国』って呼ばれているんだ。夫婦で入浴することで子を授かるって噂されている。リゾートで出されているあの卵の料理も滋養強壮に良いからかどうかは分からないけれど」
「卵も何も、俺達も湯殿で楽しむ時は寝台の上よりも野性的になって、より深く挿入するからじゃないか」

夏菜子の真面目な計画に様々な観点からジュリアンが賛成してくれ、世の中の情報をブラッドリーが教えてくれる。更にルイスが明け透けに理由を付け足してくれた。騎士の家にはデリカシーがないのだろうか。否、待て、パーシバルもそれが原因かもしれない…。

「確かに」
「えっ、何が確かになの、ブラッド?」
「ローザが結婚後早々に子供を三人も授かったのは、俺達が夫婦で入浴しているからだっていう噂も広まっているようだ」
「王城内のことを誰かが漏らすとは思えないわ」
「ああ、だから噂だって」
火のない所に煙は立たぬ、この世界でも似たようなことが言われているというのにブラッドリーは涼しい顔をして話を続けた。

ローザリアが知らないだけで、『火』は保養リゾート計画書の中に存在していた。直接的な表現は使わなくても、一妻多夫が上手くいっているのは家族で入浴することでリラックスした中会話を楽しめることが大きいとか御尤もなことが書かれていたのだ。結婚したばかりの夫婦が真っ裸でリラックスした時にすることなど、会話であるはずがないことは誰だって分かる。

「噂ではないけれど、最近では肥料が功を奏して、実を付ける生り物の生産も上がっている」
「ええ、これからは品種改良も視野に入れていきたいわ」
「もっと話を進めたいな」
ジュリアンの瞳に妖しさが灯ると、ルイスが呼び鈴でメイドを呼んだ。

「大切な話だから湯殿でリラックスして話し合おう」
「えっ、でも…」
「大丈夫、午前中に今日の仕事はほとんど終わらせたから」

夫達は優秀だ。湯殿の中でも。
品種改良に関しても有識者を招いて進めることを湯に浸かりながら決めてくれた。但し、ローザリアに雄蕊と雌蕊の接合を自分達の体を使って説明させるということをした後だったが。
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