65 / 71
ローザリアは朝と夜以外にも働いています
しおりを挟む
「おめでとう、フローラ」
長年ローザリアの侍女を勤めてくれていたフローラが出産の為休みを取ることになった。どうしてか分からないが、ローザリア周辺の侍女やメイドは主人を追随するように結婚、出産ラッシュだ。しかも、これまたどうしてか分からないが、皆近衛騎士と結ばれている。
けれど、本丸の一人、ルイスの兄であるパーシバルは未婚のまま。話すようになって分かったのだが、パーシバルはとても良い人だ。しかも、ルイスよりは劣るかもしれないが、美形であることは間違いない。考えられるのは、夜の仕事人としては『お縛りのルイス』の兄なだけに変な性癖があるのか、夜の音楽の奏で方がルイス同様激しいか…。いくら兄弟でもそんなところまで似るのか夏菜子は疑問を持ちながらも、大切な書類の作成を始めた。
「エコール・ド・ベル?変わった名前だけれど面白い発想だね」
「名前はなんとなくだから、特に意味はないの。ただ、良い音かしら、と思って」
夏菜子の通った女子大では何故か第二外国語にフランス語を取る人が多かった。夏菜子もその一人。成績は落第しない程度、発音は笑いを取る為の一発芸程度と言ったところだった。
今回始動させる事業計画名にはフランス語を付けよう、と安易に思ったのだが自分が発音出来ないものをどうやって人前で話すのか。真面目な会議だから笑いは取らなくいい。けれど、美しいことに繋がることなので、どうしてもフランス語を夏菜子は付けたかった。
そこで、苦し紛れに覚えていた単語を二つ結び付けたのだった。学校を意味するエコールと、美しいを意味するベル。この二つならば、ちゃんと言える。序に、『ラ』とか『ド』とかそれらしい一文字を挟めば体裁が良くなる気がして入れておいた。
名前はこんな感じで付けたが、中身には自信がある。
夫達が進めた公共入浴施設と保養リゾート施設計画。公共入浴施設は、湯が湧き出るところに建物を作っただけの簡単なものだったが、お陰で排水路が出来様々な観点から民の衛生面が向上したのだった。
保養リゾート施設も、寒さが厳しい国の富裕層が遊びに来るようになりその地域は潤っている。夏菜子の計画はそこに女性用のエステ施設を作ることだった。
フローラの様にマッサージ技術の高い侍女やメイドが沢山いるのに、遊ばせておくのはもったいない。そこで、美容学校を創設してその技術を学ぶ場所を女性に提供しようと夏菜子は考えたのだった。
フローラ達も出産後直ぐにはフルで働くかどうか迷うだろう。しかし、学校ならば教えるコマ数によって働く時間が変わってくる。労働時間の選択が出来るのだ。
問題は費用。けれど保養リゾート施設は国が運営するもの。その中のエステも国が管理するのだから、行く行くは採算がとれるはず。取らぬ狸の皮算用にならないよう、プロモーションもしっかりやっていくつもりだ。
「費用面もいいんじゃないかな。保養リゾートは既に他国でも話題になっているようだから、今後も集客は見込めるし」
「ああ、それ、面白い噂も流れているって知ってた?」
「面白い噂?」
「我が国スクデリーク王国は最近『実の成る国』って呼ばれているんだ。夫婦で入浴することで子を授かるって噂されている。リゾートで出されているあの卵の料理も滋養強壮に良いからかどうかは分からないけれど」
「卵も何も、俺達も湯殿で楽しむ時は寝台の上よりも野性的になって、より深く挿入するからじゃないか」
夏菜子の真面目な計画に様々な観点からジュリアンが賛成してくれ、世の中の情報をブラッドリーが教えてくれる。更にルイスが明け透けに理由を付け足してくれた。騎士の家にはデリカシーがないのだろうか。否、待て、パーシバルもそれが原因かもしれない…。
「確かに」
「えっ、何が確かになの、ブラッド?」
「ローザが結婚後早々に子供を三人も授かったのは、俺達が夫婦で入浴しているからだっていう噂も広まっているようだ」
「王城内のことを誰かが漏らすとは思えないわ」
「ああ、だから噂だって」
火のない所に煙は立たぬ、この世界でも似たようなことが言われているというのにブラッドリーは涼しい顔をして話を続けた。
ローザリアが知らないだけで、『火』は保養リゾート計画書の中に存在していた。直接的な表現は使わなくても、一妻多夫が上手くいっているのは家族で入浴することでリラックスした中会話を楽しめることが大きいとか御尤もなことが書かれていたのだ。結婚したばかりの夫婦が真っ裸でリラックスした時にすることなど、会話であるはずがないことは誰だって分かる。
「噂ではないけれど、最近では肥料が功を奏して、実を付ける生り物の生産も上がっている」
「ええ、これからは品種改良も視野に入れていきたいわ」
「もっと話を進めたいな」
ジュリアンの瞳に妖しさが灯ると、ルイスが呼び鈴でメイドを呼んだ。
「大切な話だから湯殿でリラックスして話し合おう」
「えっ、でも…」
「大丈夫、午前中に今日の仕事はほとんど終わらせたから」
夫達は優秀だ。湯殿の中でも。
品種改良に関しても有識者を招いて進めることを湯に浸かりながら決めてくれた。但し、ローザリアに雄蕊と雌蕊の接合を自分達の体を使って説明させるということをした後だったが。
長年ローザリアの侍女を勤めてくれていたフローラが出産の為休みを取ることになった。どうしてか分からないが、ローザリア周辺の侍女やメイドは主人を追随するように結婚、出産ラッシュだ。しかも、これまたどうしてか分からないが、皆近衛騎士と結ばれている。
けれど、本丸の一人、ルイスの兄であるパーシバルは未婚のまま。話すようになって分かったのだが、パーシバルはとても良い人だ。しかも、ルイスよりは劣るかもしれないが、美形であることは間違いない。考えられるのは、夜の仕事人としては『お縛りのルイス』の兄なだけに変な性癖があるのか、夜の音楽の奏で方がルイス同様激しいか…。いくら兄弟でもそんなところまで似るのか夏菜子は疑問を持ちながらも、大切な書類の作成を始めた。
「エコール・ド・ベル?変わった名前だけれど面白い発想だね」
「名前はなんとなくだから、特に意味はないの。ただ、良い音かしら、と思って」
夏菜子の通った女子大では何故か第二外国語にフランス語を取る人が多かった。夏菜子もその一人。成績は落第しない程度、発音は笑いを取る為の一発芸程度と言ったところだった。
今回始動させる事業計画名にはフランス語を付けよう、と安易に思ったのだが自分が発音出来ないものをどうやって人前で話すのか。真面目な会議だから笑いは取らなくいい。けれど、美しいことに繋がることなので、どうしてもフランス語を夏菜子は付けたかった。
そこで、苦し紛れに覚えていた単語を二つ結び付けたのだった。学校を意味するエコールと、美しいを意味するベル。この二つならば、ちゃんと言える。序に、『ラ』とか『ド』とかそれらしい一文字を挟めば体裁が良くなる気がして入れておいた。
名前はこんな感じで付けたが、中身には自信がある。
夫達が進めた公共入浴施設と保養リゾート施設計画。公共入浴施設は、湯が湧き出るところに建物を作っただけの簡単なものだったが、お陰で排水路が出来様々な観点から民の衛生面が向上したのだった。
保養リゾート施設も、寒さが厳しい国の富裕層が遊びに来るようになりその地域は潤っている。夏菜子の計画はそこに女性用のエステ施設を作ることだった。
フローラの様にマッサージ技術の高い侍女やメイドが沢山いるのに、遊ばせておくのはもったいない。そこで、美容学校を創設してその技術を学ぶ場所を女性に提供しようと夏菜子は考えたのだった。
フローラ達も出産後直ぐにはフルで働くかどうか迷うだろう。しかし、学校ならば教えるコマ数によって働く時間が変わってくる。労働時間の選択が出来るのだ。
問題は費用。けれど保養リゾート施設は国が運営するもの。その中のエステも国が管理するのだから、行く行くは採算がとれるはず。取らぬ狸の皮算用にならないよう、プロモーションもしっかりやっていくつもりだ。
「費用面もいいんじゃないかな。保養リゾートは既に他国でも話題になっているようだから、今後も集客は見込めるし」
「ああ、それ、面白い噂も流れているって知ってた?」
「面白い噂?」
「我が国スクデリーク王国は最近『実の成る国』って呼ばれているんだ。夫婦で入浴することで子を授かるって噂されている。リゾートで出されているあの卵の料理も滋養強壮に良いからかどうかは分からないけれど」
「卵も何も、俺達も湯殿で楽しむ時は寝台の上よりも野性的になって、より深く挿入するからじゃないか」
夏菜子の真面目な計画に様々な観点からジュリアンが賛成してくれ、世の中の情報をブラッドリーが教えてくれる。更にルイスが明け透けに理由を付け足してくれた。騎士の家にはデリカシーがないのだろうか。否、待て、パーシバルもそれが原因かもしれない…。
「確かに」
「えっ、何が確かになの、ブラッド?」
「ローザが結婚後早々に子供を三人も授かったのは、俺達が夫婦で入浴しているからだっていう噂も広まっているようだ」
「王城内のことを誰かが漏らすとは思えないわ」
「ああ、だから噂だって」
火のない所に煙は立たぬ、この世界でも似たようなことが言われているというのにブラッドリーは涼しい顔をして話を続けた。
ローザリアが知らないだけで、『火』は保養リゾート計画書の中に存在していた。直接的な表現は使わなくても、一妻多夫が上手くいっているのは家族で入浴することでリラックスした中会話を楽しめることが大きいとか御尤もなことが書かれていたのだ。結婚したばかりの夫婦が真っ裸でリラックスした時にすることなど、会話であるはずがないことは誰だって分かる。
「噂ではないけれど、最近では肥料が功を奏して、実を付ける生り物の生産も上がっている」
「ええ、これからは品種改良も視野に入れていきたいわ」
「もっと話を進めたいな」
ジュリアンの瞳に妖しさが灯ると、ルイスが呼び鈴でメイドを呼んだ。
「大切な話だから湯殿でリラックスして話し合おう」
「えっ、でも…」
「大丈夫、午前中に今日の仕事はほとんど終わらせたから」
夫達は優秀だ。湯殿の中でも。
品種改良に関しても有識者を招いて進めることを湯に浸かりながら決めてくれた。但し、ローザリアに雄蕊と雌蕊の接合を自分達の体を使って説明させるということをした後だったが。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
全裸で異世界に呼び出しておいて、国外追放って、そりゃあんまりじゃないの!?
猿喰 森繁
恋愛
私の名前は、琴葉 桜(ことのは さくら)30歳。会社員。
風呂に入ろうと、全裸になったら異世界から聖女として召喚(という名の無理やり誘拐された被害者)された自分で言うのもなんだけど、可哀そうな女である。
日本に帰すことは出来ないと言われ、渋々大人しく、言うことを聞いていたら、ある日、国外追放を宣告された可哀そうな女である。
「―――サクラ・コトノハ。今日をもって、お前を国外追放とする」
その言葉には一切の迷いもなく、情けも見えなかった。
自分たちが正義なんだと、これが正しいことなのだと疑わないその顔を見て、私はムクムクと怒りがわいてきた。
ずっと抑えてきたのに。我慢してきたのに。こんな理不尽なことはない。
日本から無理やり聖女だなんだと、無理やり呼んだくせに、今度は国外追放?
ふざけるのもいい加減にしろ。
温厚で優柔不断と言われ、ノーと言えない日本人だから何をしてもいいと思っているのか。日本人をなめるな。
「私だって好き好んでこんなところに来たわけじゃないんですよ!分かりますか?無理やり私をこの世界に呼んだのは、あなたたちのほうです。それなのにおかしくないですか?どうして、その女の子の言うことだけを信じて、守って、私は無視ですか?私の言葉もまともに聞くおつもりがないのも知ってますが、あなたがたのような人間が国の未来を背負っていくなんて寒気がしますね!そんな国を守る義務もないですし、私を国外追放するなら、どうぞ勝手になさるといいです。
ええ。
被害者はこっちだっつーの!
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる