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『僕の名前にある陽と夏菜子さんの夏という字、なんだか二人は上手く行く気がしませんか。それに菜には太陽の光が必要です』
後々思い返してみると、どういうことか良く分からない陽太の決め台詞。聞いたその時は、その通り、お見合いだけれど自分達は導かれたのかもしれないと夏菜子は感じ結婚を承諾した。

考えようによっては、規模は違うが今のこの状況は盛大な国家挙げてのお見合い結婚のようなもの。夏菜子は一度失敗したお見合い結婚のやり直し機会を得たのだ。それも複数の夫と。
そして初夜。ここで躓けば待っているのは、薬頼みの詰まらないセックス。
比較しようがないけれど、レスとどっちがましなのだろう。突っ込んで擦ってもらうだけ、お薬セックスだろうか。

レスで加奈子の身と心は枯れた。では、お薬セックスを続けるローザリアに待つ未来は何だろう。義務的な妊娠と出産の先にあるものは。
沢山の男としてみたいと思っていた夏菜子が憑依した体は、もしかしたらセックスを拒絶するのだろうか。結果、またもやレス?

クリスが言った、王配三人は離縁など出来ないが子作りを終わらせたら専任の世話係が持てるというのはローザリアが拒否る場合も想定していたのかもしれない。
でも、夏菜子だって王配のように身も心も誠心誠意お世話してくれる素敵な人が欲しい。この場合は挿入なしで仕えてくれる男性なのだが。だって、クリスは直接的な言葉をオブラートに包みまくり説明してくれた。専任のお世話係という名の愛人を何人でも抱えて良い王配に対し、
ローザリアには愛人を持つ自由はないと。酷い話だ。三人以外の子を産むなんてことがあってはいけないからなんて。
だったら妊娠しないよう、挿入なしの愛人ではなく素敵な人を抱えればいい。

そこで夏菜子は気付いた。ローザリアが受けた性教育は子をなす為のものだったと。夏菜子のようにそこに快楽や喜びがあることを知らない。熱を帯びた体を鎮める為に三人の夫に求めることなど知らずに生きていく予定だったのだ。お薬セックスなのだから。
とすると、素敵な人を傍に置きたいなんて感情も芽生えなかったのかもしれない。

王配達はイケメンズなのに…。女王がトップに立った時のこの国のイケてない婚姻制度のお陰で台無しだ。


「ローザリア様のお気持ちを我々は優先させます。ご準備が整ったらお声を掛けて下さい」
初夜を前にローザリアが不安を感じ考え込んでいると思ったのだろう、ジュリアンが優しい笑みを浮かべながら言葉を掛けてきた。

夏菜子はイケメンの笑みの破壊力を見せつけられながら、どうしたものかと考えた。ジュリアンの言葉からすると結婚しても王女という立場のローザリアが何においても優先されるということだ。だったら、初夜に関してお願いをすれば聞き入れて貰えるのではないだろうか。

「旦那様達にお願いがあります」
「ローザリア様がお願いをするなどあってはなりません。従うのは我々です」
「ジュリアン、まずはその考えを変えませんか?」

夏菜子は意を決し、ローザリアでありながら夏菜子としての思いを三人の夫に伝えることにした。これからの為に。
それはとても簡単なこと。この四人で間では上下関係はなく夫婦として対等でいたいというもの。だから相手に対して思ったことは包み隠さず話して欲しいというものだ。勿論、各家の政治的思惑はあるだろうからそこはしょうがないにしても。

貴族社会で生きてこなかった夏菜子にしたら何の問題もないだろう簡単なお願い。けれど三人の夫の顔は険しかった。

「駄目…、ということかしら」
「…」
三人とも言葉を発しない。そして、夏菜子にも分かる。三人は夫という立場では同じかもしれないが、そこには順位があるのだ。敢えて違う爵位や立場の家の三人が選ばれているのは政治的にも問題がないようにする為。
ということは、ここはジュリアンに決定権があるのだろう。ローザリアに手をつける順番が、正しくこの三人の中にある序列だ。

「ジュリアン、お願い」
落とせばいいのはジュリアンだ。そこで、夏菜子は気付いた。ローザリアの細い肢体から体が華奢なのは分かった。着替えの時にはプリッとした胸が露わになり細いのに良い塩梅にここは育ったのね、それに可愛いピンクの乳首ちゃんなんて思ったが、肝心な顔を見ていなかった。落としたくても自分がどんな顔をしているか分からないのであれば、表情の作りようがない。もし、体と似合わず厳つい顔だったら高圧的に脅す方がいいだろうに。既にお願いモードを発した後だった。

しょうがない、もう一度誠心誠意お願いするしかないと思ったその時だった。
「分かりました。わたし達は夫婦で家族です。この部屋の中でだけはそうありましょう。だからそのような悲しそうな顔をしないで下さい」

ジュリアンの言葉に夏菜子はローザリアの顔の作りは華奢な体が似合うものなのだと確信した。悲しそうな顔を見せれば意見が通る程の。ジュリアンにはこれからこの手で行こうと心のノートに書き留めた。

「ブラッドリーとルイスも同意してくれるかしら?」
王女ローザリアのお願いを公爵家出身のジュリアンが聞き入れた時点で二人には従うしかないだろうが、夏菜子は敢えて言葉にして確認を取った。
二人は日和見主義のおべっか使い中間管理職上司ではないが、言った言わない問題はやはり避けておきたい。

「そのように仰っていただけるとは、光栄至極に存じます」
「堅苦しいわ、ブラッドリー。家族なのだから、もっと砕けて」
「では、ローザリア様、家族になれて嬉しく思います」
「ねぇ、ローザと呼んで。家族でいる時はそうしましょう。」
「流石にそれは…」
「だって、これから夫婦として行為を行うのに、そんな時までローザリア様と夫に呼ばれたくはないもの。ね、お願い、ジュリアン、ブラッドリー、ルイス」
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