オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではございますが~

五十嵐

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354 力になってくれる二人

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てっきりジョイスだけがやって来るのだと思っていたリアムの視界には、フードを目深に被る女性も映った。確かにこの二人は『力になってくれる人』だ。ただしジョイスの顔を見る限り、スカーレットが付いてきてしまったのは予定外だったようだが。

そして隣で『力になってくれる人』を一緒に待っていたデリシアは、ジョイスの姿を見て固まった。自分が働く伯爵家が属する派閥の長の息子が現れたのだ、気の弱いデリシアがこの反応を示すのは仕方がない。せめてもの救いはジョイスの存在だけで一杯一杯になり、スカーレットに気付いていないこと。まあ、遅かれ早かれスカーレットに気付き驚きの反応を示すのは避けられないだろうが。その時はどんな風になってしまうのか楽しませてもらおうとリアムは思いながら、動きがギクシャクしているデリシアに食堂の中に入るよう促した。

「デリシア、たぶん分かっているだろうけど、彼はジョイス。けれど、ここではジョイと呼ぶように」
「あ、あの…、ジョイ様でよろしいでしょうか」
「ジョイだけでいいけど、難しいだろうから『ジョイさん』でどうかな」
「はい、承知いたしました」

おどおどしながらも、呼び方の確認を取るデリシアに気遣いを見せるジョイス。呼び捨ては難しいだろうからと、先に落としどころをつけてくれているのだが…。リアムは分かっていた、デリシアにはその気遣いに気付く余裕はないと。何せデリシアの態度も言葉も言い付けを守る使用人だ。上の立場の人間に服従の姿勢を見せるよう、俯き加減の。当然、ジョイスが彼なりに表情は無理にしても言葉使いで話し易い雰囲気を作り出そうとしていることなど夢にも思っていないだろう。それでもジョイスなりの気遣いは続いた。

「彼女は俺の幼馴染でキャロル。今日は急遽一緒に来ることになったんだ」
スカーレットをただのキャロルと紹介したのだ。そしてスカーレットは、『こんにちは』とだけ言って頭を下げたのだった。

ここが応接室ならばデリシアは視線を上げ早々に話をしなければならないだろうが、幸いここは食堂。視線は一先ず品書きに向かわせることが出来る。けれどデリシアは怖いもの見たさなのか、品書きから時折目の前に座るジョイスと顔がよく見えないスカーレットを覗き見ているよう。それに気付いているリアムは、デリシアが現実逃避の為何やら想像を始めたと理解した。しかもその表情はデズモンドを敵に回す想像をしているようだ。大方王都を去ったジョイスに幼馴染の女性が離れたくないと付いてきて、ファルコールで共に暮らすようになったというところだろうか。
しかし何度か二人の様子をちらっと見ていたデリシアの視線が、急に止まった。否、釘付けされた。とうとうスカーレットに気付いたのだろうかとリアムがデリシアの視線の先をこっそり見ると、そこには品書きに指を指すスカーレットを微笑みながら見つめるジョイスがいたのだった。
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恋愛にたどり着くまでが長くて…。それなりに登場人物がいますので、『誰なの?相手は』と思いながら読んでいただければ幸いです。

それと、エール、ありがとうございます。励ませていただきます!

ついでに、アルファポリスさんの『しおり』という制度は上手く出来ていますね。わたしが見る画面では、しおりが挟んであるのが見えるんです!新しい話を投稿して、しおりがそこへ進んでくれていると次へのモチベーションになります!しおりを挟んで下さって、ありがとうございます。
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