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王都とある修道院7

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ダニエルがファルコールから戻り、王宮にやって来たということはそれだけの日数が経過したということ。即ち、キャリントン侯爵家ではあと数日で他国の貴族を交えた晩餐会が行われ、ファルコールにはサブリナとジャスティンの離縁が成立したという知らせが届いたということだった。

但し蚊帳の外というか、修道院の中に居たクリスタルはサブリナとジャスティンの離縁のことなど全く知らない。それはオランデール伯爵家の使用人達が伯爵夫人とメイド長に阿る者達ばかりだからだ。二人の常日頃の態度を見ていれば、ジャスティンの前妻となったサブリナのことなど無かったこととして扱うのが一番。余計なことをして使用人としての立場を悪くするよりは、何もしないことを誰もが選んだ結果だった。

だから何も知らないクリスタルはサブリナから送られてきた手紙に腹立たしさを覚えていた。役立たずのサブリナらしいと言うべきなのか、クリスタルの意図を全く理解していないようなお礼状という手紙の内容に。サブリナが送るべきだったのは、こんな内容ではない。クリスタルが望むものがいつ出来上がるのか、どういうデザインを施しているのか、その報告書が必要だったのだ。
オランデール伯爵家が管理出来ないファルコールなどという国の外れにいるから、使えないサブリナがこんなどうでも良い手紙を送ってきたのだろうとクリスタルは考えた。

何の為の高価な最上級の糸や布だったのか。セーレライド侯爵家の訪問に備えオランデール伯爵家へ戻ったのならば、ジャスティンや母にサブリナの大馬鹿さを伝えなければならない。問題は言い方だ。刺繍をしているのはあくまでもクリスタルなのだから。

さて、どう切り出すか。手紙の内容に何か良いヒントがないだろうかと、クリスタルは腹立たしさを抑え再びサブリナの手紙に目を通した。

『クリスタル様、美しい贈り物をありがとうございます。ファルコールでは様々なものを目にする機会に恵まれました。そこで現在意匠を考えたり、試したりと励んでおります。このような時間を楽しむ手助けをして下さったことに感謝いたします。修道院でのご生活では様々なことに気付くでしょう。それをこれからの糧に、ご活躍を願っております。サブリナ』

クリスタルは読み返した手紙に違和感を覚えた。初めて読んだときは腹立たしさで冷静さを欠いていたが、二度目は違う。文面には、オランデール伯爵家で過ごすサブリナ感が全くないのだ。

クリスタルは由緒正しいオランデール伯爵家の娘、サブリナは子爵家から来た使えない嫁。だから、サブリナはクリスタルにへりくだらなければならない。しかし、送られてきた文面からはそれが全く感じられないのだ。しかもクリスタルの送ったものでサブリナは楽しんでいるという。あれは贈り物ではなく、送ったもの。サブリナが楽しむのではなく、クリスタルを喜ばせる為のものだ。
読めば読む程、クリスタルは苛つかずにはいられなかった。

サブリナには自分の立場を知るという再教育が直ぐに必要だ。クリスタルはどうにかサブリナをファルコールから呼び戻す方法はないかと考えたのだった。
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