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王宮では39

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「ジョイス、俺が整えなければならないのは政略結婚。だから今はまだ『良かった』ではない。この文面はテレンスがこの先二年間は婚約者として過ごすと書いてあるだけ。その先は未定ということだ」
「分かっている」
「俺達が今話し合わなければならないのは、この事実を如何に有用に使うかだ」
友人の婚約を祝うのではなく、為政者として今後のことを側近と相談する。それがアルフレッドのなすべきこと。
ジョイスを駒として使うと決めた時から、アルフレッドに許される発言は決まっていた。今更権利がどうとか考えている場合ではない。

為政者として…。今後テレンスからこの婚約報告をされたとしても、アルフレッドが言うべき言葉は『おめでとう』や『ありがとう』ではない。本来の役目を全うするよう、更なる一言を告げなければならない。血の通った友人よりも、血の通わない国、そして顔も知らない国民達をアルフレッドは優先しなければならないのだ。

考えようによっては、この婚約者という立場も悪くない。たまたま開催されるキャリントン侯爵家の晩餐会で上手い演出の下発表されればインパクトがある。キャリントン侯爵はこれを皮切りに彼の国までの道のりという名の通商を確保しようとするはずだ。テレンスが婚約者から確実に婿になれるよう。それが父親だからなのか、侯爵という地位だからなのかはアルフレッドには分からないが。ただ確実に言えるのは、物流の為に街道整備は必要だ。後はアルフレッドが上手くキャリントン侯爵にキャストール侯爵家からの祝いに街道を整備する技術者を受け入れさせるまで。

「王宮からは外務部門の者達と警備の為に騎士だけとしていたが、キャリントン侯爵の晩餐会に俺も参加しようと思う」
「分かった、早急に調整しておく。席次のこともあるからな」
「外務部門の者達には俺が侯爵へ挨拶をしたくなったから程度で伝えておいてくれ。テレンスのことは知られないように。キャリントン侯爵へは俺が事前に伝えておく。テレンスの婚約発表が当日の大きなイベントになるよう取り計らってもらわなければ。ここまで侯爵に花を持たせれば、街道整備にキャストール侯爵家からの技術者を受け入れるだろう。しかも、それは国としての祝いでもあると言えば」

広い面積を持つキャリントン侯爵領で最初にキャストール侯爵家からの技術者を投入して街道整備が出来れば、国から派遣する者達も多くの経験が得られる。そうすれば、その者達を他地域へ派遣しやすくなるとアルフレッドは考えた。

「大凡の流れはこんな風に考えているが、細部の足りないところは補っておいてくれ」
ジョイスにそう伝えるとアルフレッドはもう一つ、今がその機会なことを話そうとした。大枠を伝えるだけで、細部を細かく詰めてくれるジョイスを手放す時が来たと。
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