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王宮では37

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『疲れた』
誰しも疲れる。寧ろ疲れない人間などこの世に存在しないだろう。しかし、アルフレッドと同じ疲れを持つものは誰もいない。気疲れでもなく、体が疲れたのでもなく、馬鹿な選択をしようとした王子と同じ疲れなど。

望めばほとんどのものを手にすることが出来る立場というのは厄介だ。それも、望む前に。
優秀な側近に婚約者。彼らがその立場に辿り着くまでにどのような過程があったのか、ざっと文字で追うだけで手に入れてしまったアルフレッド。様々な努力をするのは、アルフレッドに近付く為には当然だと思っていた。

しかしシシリアは違う。用意されたアルフレッドの周りにいる人間とは違い新鮮だった。何よりスカーレットのように人前で感情を隠すことがなかった。否、貴族家の令嬢だ、大っぴらに感情を出さないようにしているのだろうがスカーレットには及ばないというのが正しい表現だったのだろう。その姿がアルフレッドにはとても可愛らしく、そして好ましく見えた。

気付けば欲しいと渇望していた。喉の酷い渇きを鎮めるように。ところがそんな喉の渇き方をしない日常に戻れば、それまでのように潤す程度の水分で足りてしまう。余裕のある心で周りをみれば、本来色など付いていない空気が変わっていたのだ。

アルフレッドの前でだけ黄色が好きだと言ったスカーレット。何かが狂い出す前までは、アルフレッドとスカーレットが共いる空間は明るい黄色だったというのに。今は、王宮のどこにもその色はない。あの色に包まれたのならば、この疲れも幾分違っていたのだろうか。そもそも、手放さなければ今のこの状況はやって来なかったが。

そしてアルフレッドはまた一色、この王宮から色を失わなければならない。
悪天候で王都への戻りが遅れた時に全てを話さなかったジョイス。しかし、ファルコールで足止めを食らったジョイスならば謝罪の為にスカーレットに会いに行ったのではないかとアルフレッドは思っていた。
その予想が当たっているかどうかを確認することは簡単だ。けれど、正しい答えが返ってくるかは分からない。だから怖かった。側近を外されるジョイスがアルフレッドに対しどういう対応をするかで、築き上げた関係全てが崩れ去ってしまうだろうから。


『ところで、ここでの仕事が終わったら、直ぐにファルコールへ向かうのか?』
日中ジョイスにした質問は確証のない、けれど確信していたこと。ジョイスが鎌をかけたことに引っ掛かる人間でないことは分かっている。だから、どういう答えが返ってくるのか怖かった。しかし聞かないことには、ジョイスとの繋がりすら切れそうで怖かった。

これも確信だが、今日のジョイスの言葉は全て真実。幼馴染としてアルフレッド、テレンス、そしてスカーレットを大切に思っているということは。ただスカーレットに対しては他の気持ちが混ざっているのもまた真実。
だから王宮に居ながらも、アルフレッドにダニエルへの質問内容を考えるよう言ったのだろう。スカーレットの心を守る為に。

アルフレッドはジョイスが羨ましいと思った。王都で全てを失い、これから本当に欲しいものへ向かおうとするジョイスが。そして手元の書類を見つめながら、日数を数えた。そろそろテレンスの結果が分かる頃だと。


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色々なことがちょうど重なりそうで、自分で書いていながら書き漏れがないか
心配になります。。。
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