275 / 450
王都オランデール伯爵家15
しおりを挟む
時間の猶予がないことにジャスティンは焦り出していた。
今まで全て上手く行っていたというのに、何故このタイミングでこんなことになってしまったのか。貴族学院でサブリナに白羽の矢を立てた時から、ジャスティンの計画が狂うことは無かったというのに。
子爵家の令嬢のくせに成績優秀なサブリナ。外国語、算術は特に素晴らしいという話が耳に入る度にジャスティンは忌々しく思っていた。よりによってジャスティンが苦手とする教科を得意とするとは嫌味にしか思えないと。
優秀な成績を鼻に掛けそれこそひけらかしてくれたなら、子爵家出身だから行いが卑しいと貶すことでも出来ただろうが、サブリナはそんな人物ではなかった。誰かが困っていれば、手を差し伸べるような優しい女性だったのだ。
それならばその優しさをジャスティンにも差し伸べてもらえばいい。切っ掛けはそんな思いからだった。
『ありがとう、助かったよ、リッジウェイ子爵令嬢』
『お役に立てたなら何よりです』
親切なサブリナはある日ジャスティンが仕掛けた罠にまんまと嵌った。ジャスティンを助けることで、底なし沼に足を踏み入れてしまったのだ。
助けてくれた礼にと贈り物を渡し、恐縮するサブリナにそれでは男性が入り難い店に一緒に行ってくれないかと洒落た店へ連れて行く。そんなことを繰り返すうちに、ジャスティンはサブリナにとり一番仲が良い男性の友人というポジションを築き上げていった。
婚約を結ぶには、子爵家の割にはリッジウェイ子爵家に力があり伯爵家としての圧が掛け辛く思いの外時間を要したが、それ以外はほぼジャスティンの思惑通り進んでいったのだった。
『面白いくらいにシナリオ通りで、勉強しか出来ないお馬鹿さんなのかもしれないと思える』
『でも、悔しい。その女はジャスティンと外を堂々と歩けるなんて』
『仕方ないだろ。母は俺に貴族の娘以外を娶ることなど許さない。それも伯爵家以上の爵位でないと』
『だったらその女は、条件に合わないじゃない』
『だからいいんだよ。オランデール伯爵家に嫁いできたらサブリナは母にたっぷり躾けられる。それに、母が実家から連れてきたあのメイド長も子爵家出身なんだ』
『悪いのねぇ、ジャスティン。可哀そう、その女。メイド長からも事細かに指導されるんじゃない。ふふ、面白そう』
『ああ、だから俺だけが優しくしてあげないと。俺の言うことに何でも従うように。そうだ、オリアナ、サブリナが来たらおまえが侍女になれるようメイド長に伝えておいてやるよ』
『なんでわたしが世話しなきゃならないのよ。顔も見たくないのに』
『オリアナが好きなように世話出来るチャンスをあげようと思った俺の優しさを理解しろよ』
『ふふ、そういうことね』
ジャスティンの恋人は取引先の商家から奉公に来ているオリアナ。可愛らしく人懐こいが、ジャスティンの隣に立つ決定的な条件、貴族の娘を満たしていない。商家の娘なので金もちょっとした伝手も持っているというのに、絶対に妻として迎えられない女性なのだ。しかし手放すには惜しい存在。
だからオリアナにはサブリナは都合がいいだけの妻にすると伝えた。本当に愛しているのはオリアナだけだと。ジャスティンはオリアナのどうにも出来ない自分の立場への苛立ちやサブリナへの嫉妬心まで利用しようとしたのだ。
様々な要素が絡み合い、真っ黒な泥濘を作り、サブリナが抜け出せないようにしたというのに…。
これでは困るのだ。ジャスティンは再び父と話し合う時間を設けるようにと執事に言い渡したのだった。
**************************
そろそろジャスティンの人物像を
ジャスティンの名前の由来はジャスティス、正義です。
今まで全て上手く行っていたというのに、何故このタイミングでこんなことになってしまったのか。貴族学院でサブリナに白羽の矢を立てた時から、ジャスティンの計画が狂うことは無かったというのに。
子爵家の令嬢のくせに成績優秀なサブリナ。外国語、算術は特に素晴らしいという話が耳に入る度にジャスティンは忌々しく思っていた。よりによってジャスティンが苦手とする教科を得意とするとは嫌味にしか思えないと。
優秀な成績を鼻に掛けそれこそひけらかしてくれたなら、子爵家出身だから行いが卑しいと貶すことでも出来ただろうが、サブリナはそんな人物ではなかった。誰かが困っていれば、手を差し伸べるような優しい女性だったのだ。
それならばその優しさをジャスティンにも差し伸べてもらえばいい。切っ掛けはそんな思いからだった。
『ありがとう、助かったよ、リッジウェイ子爵令嬢』
『お役に立てたなら何よりです』
親切なサブリナはある日ジャスティンが仕掛けた罠にまんまと嵌った。ジャスティンを助けることで、底なし沼に足を踏み入れてしまったのだ。
助けてくれた礼にと贈り物を渡し、恐縮するサブリナにそれでは男性が入り難い店に一緒に行ってくれないかと洒落た店へ連れて行く。そんなことを繰り返すうちに、ジャスティンはサブリナにとり一番仲が良い男性の友人というポジションを築き上げていった。
婚約を結ぶには、子爵家の割にはリッジウェイ子爵家に力があり伯爵家としての圧が掛け辛く思いの外時間を要したが、それ以外はほぼジャスティンの思惑通り進んでいったのだった。
『面白いくらいにシナリオ通りで、勉強しか出来ないお馬鹿さんなのかもしれないと思える』
『でも、悔しい。その女はジャスティンと外を堂々と歩けるなんて』
『仕方ないだろ。母は俺に貴族の娘以外を娶ることなど許さない。それも伯爵家以上の爵位でないと』
『だったらその女は、条件に合わないじゃない』
『だからいいんだよ。オランデール伯爵家に嫁いできたらサブリナは母にたっぷり躾けられる。それに、母が実家から連れてきたあのメイド長も子爵家出身なんだ』
『悪いのねぇ、ジャスティン。可哀そう、その女。メイド長からも事細かに指導されるんじゃない。ふふ、面白そう』
『ああ、だから俺だけが優しくしてあげないと。俺の言うことに何でも従うように。そうだ、オリアナ、サブリナが来たらおまえが侍女になれるようメイド長に伝えておいてやるよ』
『なんでわたしが世話しなきゃならないのよ。顔も見たくないのに』
『オリアナが好きなように世話出来るチャンスをあげようと思った俺の優しさを理解しろよ』
『ふふ、そういうことね』
ジャスティンの恋人は取引先の商家から奉公に来ているオリアナ。可愛らしく人懐こいが、ジャスティンの隣に立つ決定的な条件、貴族の娘を満たしていない。商家の娘なので金もちょっとした伝手も持っているというのに、絶対に妻として迎えられない女性なのだ。しかし手放すには惜しい存在。
だからオリアナにはサブリナは都合がいいだけの妻にすると伝えた。本当に愛しているのはオリアナだけだと。ジャスティンはオリアナのどうにも出来ない自分の立場への苛立ちやサブリナへの嫉妬心まで利用しようとしたのだ。
様々な要素が絡み合い、真っ黒な泥濘を作り、サブリナが抜け出せないようにしたというのに…。
これでは困るのだ。ジャスティンは再び父と話し合う時間を設けるようにと執事に言い渡したのだった。
**************************
そろそろジャスティンの人物像を
ジャスティンの名前の由来はジャスティス、正義です。
2
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
イケメン御曹司の初恋
波木真帆
BL
ホテル王の御曹司である佐原恭一郎はゲイを公言しているものの、父親から女性に会うようにと頼まれた。
断りに行くつもりで仕方なく指定されたホテルラウンジで待っていると、中庭にいた可愛らしい人に目を奪われる。
初めてのことにドキドキしながら、急いで彼の元に向かうと彼にとんでもないお願いをされて……。
イケメンスパダリ御曹司のドキドキ初恋の物語です。
甘々ハッピーエンドですのでさらっと読んでいただけると思います。
R18には※つけます。
【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?
氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、
「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
転生したらダンジョンコアだった件
葉月+(まいかぜ)
BL
神約・異世界ダンジョン生活
※かみにやくそくされたいせかいだんじょんせいかつ。
※主人公は男寄りの無性生物ですがメインの相手(受け)が男なので一応BLとしてあります。
※主人公は無性なのでTS、リバ風のシチュエーションがあったとしても厳密には違います。イメクラです。
※主人公は人間ではないので倫理観がちょっとどうかしていますがわりと善良な化け物です。理由もなく街を滅ぼすのはちょっとな~と思いつつ、犯罪者をモルモット扱いすることには抵抗がない程度の天・混沌・善。
※シリルさまのお楽しみ履歴:昏睡レイプ/睡姦/NTR/視姦/スライムオナホ/種付け(サセ)/
翠帳紅閨 ――闇から来る者――
文月 沙織
BL
有名な役者一家に生まれそだった竹弥は、美しいが、その春、胸に憂いを秘めていた。事情があって大学を休学し、古い屋敷で一人暮らしをはじめた。
そこには蔵があり、蔵の整理にやとわれた杉屋という男に、竹弥は手酷い凌辱を受ける。
危険な魅力を持つ杉屋から逃れられず、竹弥は夜毎、調教され、翻弄される。
誇りたかい梨園の貴公子が、使用人の手によって嬲られ、秘めていた欲望に火をつけられる、というお話です。
激しい性描写があります。ご注意ください。
現在では好ましくな表現も出てきます。苦手な方はご遠慮ください。
ブラックマンバ~毒蛇の名で呼ばれる男妾
零
BL
ブラックマンバ。
上半身に刻まれた毒蛇のTATTOOからそう渾名された青年。
抱くものを執着させ、魔性と言われるその青年の生い立ち、、、
義父、警察官、、、
彼の上にのった男達、、、
拙作『The King of Physical BABYLON』登場人物のスピンオフとして書き始めましたが、こっちの方がメインになりつつあります。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
貴方は好きになさればよろしいのです。
cyaru
恋愛
王妃となるべく育てられたティナベル。
第1王子エドゥアールとは成婚の儀を待つのみとなっていたが、そこに異世界からエリカという少女がやって来た。
エドゥアールはエリカに心を奪われてしまう。
しかしエリカには王妃という大役は難しく、側妃とするにも側妃制度はない。
恋愛感情のない結婚であっても寵愛を向ける女性がいると判っていて自分の人生を捧げる事は出来ない。エリカを手放せないエドゥアールにティナベルは「婚約を解消しましょう」と告げたが・・・。
ティナベルに煽られ怒りに任せてエドゥアールは禁断のロープを斬りティナベルは生涯を終えたはずだった。
目が覚めたティナベルは同じ時を過ごす2度目の人生だと直ぐに気が付く。
今度は誰にも自分の生き方を決めさせない。
ティナベルは自身の足で二度目の人生を歩き始める。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。10日 序章。11日、12日 本編です。
★2月10日投稿開始、完結は2月12日22時22分です。
★シリアスを感じ、イラァ!とする展開もありますが、出来るだけ笑って頂け・・・お察しください。一応、恋愛でして、最終話ではヒロイン「は」幸せになります。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる