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デズモンドが教えてくれた一つの苗から沢山収穫できる野菜。種製造機で薫が最初出した種はシソだった。デズモンドはバジルと言ったが、バジルはシソ科。ピザにはバジルだが、薫にはシソだった。
唐揚げの上に細切りにしたシソを散らしたかったし、タルタルソースの中にも入れたかったのだ。それに何かで読んだことがある、シソは初心者向きだと。まあ、バジルの種は翌日には出来るだろうが。そして、この二つなら薫が種を蒔いて様子をみるだけで済みそうなのが有り難い。
ナスやトマトは既に栽培している領民に病気に強い種を分け与えればいいが、成長の過程でデズモンドに苗の間隔や追肥に関しては相談に乗ってもらいたい。収穫量を増やせるよう指導してもらいたいのだ。これは週に一度の夕食招待の交換条件、農業指導の一環に含まれるはず。試験作物には既に着手してもらったが、それ以外の作物育成への指導を同時に行ってもらうのもありだろう。
考えようによっては、農業指導という言葉はとても便利だ。農業に関わることに助言や助力をしてもらえば全て農業指導になるのだから。でも、そこは持ちつ持たれつ。薫がたまにお菓子の差し入れやお茶に招くなどすれば、デズモンドは追加料金を請求しないように思えた、たぶん。
そして領民に配る種に、病気に強いという効果以外を付与するつもりは薫にない。収穫量が多いや味の良いという効果を付けるのは何かが違うような気がするからだ。それは種が上手いこと勝手にそうなるよりは、デズモンドのような人の指導の下みんなで改善していく方が今後の為になる。
『コクがあるのにまろやかな醤油になる大豆』、『大粒枝豆が出来る大豆』、『灰汁のない砂糖大根』、それとそのうち育てたい『ペクチン豊富なイチゴ』の効果は薫だけが知っていればいいことだろう。
ケビンが見守る中、シソの種を蒔き終わると丁度ツェルカとナーサがノーマンに伴われ外に出てきた。
「出掛けるのね」
「はい。ツェルカと布を買いに行ってきます。キャロルの分も買ってきますね」
「そうしたら、わたしとナーサで色違いの布を買ってきて」
「いいですね!」
「そうだ、ツェルカ、わたしも何か作ってみたいから簡単なものを教えてくれる?社交シーズンで当分ホテルのお客様はやって来ないから時間があるの」
「では、キャロルさん、刺繍糸も買ってきましょうか?サビィに久し振りに習ってみては」
「そうね」
スカーレットから様々な記憶を貰った薫。この国の礼儀作法など体が覚えていた記憶まで頂けたのは、生活する上で非常に役立った。だから前世で刺繍など一度もやったことはないが、きっと出来ると思い薫はツェルカの申し出に頷いたのだった。
それにあまり上手く出来なかったとしても、サブリナからしっかり習える良い機会でもある。スカーレットの記憶の中のサブリナはその年齢の割にはとても素晴らしい腕前を持ち、教え方も上手かったのだから。
唐揚げの上に細切りにしたシソを散らしたかったし、タルタルソースの中にも入れたかったのだ。それに何かで読んだことがある、シソは初心者向きだと。まあ、バジルの種は翌日には出来るだろうが。そして、この二つなら薫が種を蒔いて様子をみるだけで済みそうなのが有り難い。
ナスやトマトは既に栽培している領民に病気に強い種を分け与えればいいが、成長の過程でデズモンドに苗の間隔や追肥に関しては相談に乗ってもらいたい。収穫量を増やせるよう指導してもらいたいのだ。これは週に一度の夕食招待の交換条件、農業指導の一環に含まれるはず。試験作物には既に着手してもらったが、それ以外の作物育成への指導を同時に行ってもらうのもありだろう。
考えようによっては、農業指導という言葉はとても便利だ。農業に関わることに助言や助力をしてもらえば全て農業指導になるのだから。でも、そこは持ちつ持たれつ。薫がたまにお菓子の差し入れやお茶に招くなどすれば、デズモンドは追加料金を請求しないように思えた、たぶん。
そして領民に配る種に、病気に強いという効果以外を付与するつもりは薫にない。収穫量が多いや味の良いという効果を付けるのは何かが違うような気がするからだ。それは種が上手いこと勝手にそうなるよりは、デズモンドのような人の指導の下みんなで改善していく方が今後の為になる。
『コクがあるのにまろやかな醤油になる大豆』、『大粒枝豆が出来る大豆』、『灰汁のない砂糖大根』、それとそのうち育てたい『ペクチン豊富なイチゴ』の効果は薫だけが知っていればいいことだろう。
ケビンが見守る中、シソの種を蒔き終わると丁度ツェルカとナーサがノーマンに伴われ外に出てきた。
「出掛けるのね」
「はい。ツェルカと布を買いに行ってきます。キャロルの分も買ってきますね」
「そうしたら、わたしとナーサで色違いの布を買ってきて」
「いいですね!」
「そうだ、ツェルカ、わたしも何か作ってみたいから簡単なものを教えてくれる?社交シーズンで当分ホテルのお客様はやって来ないから時間があるの」
「では、キャロルさん、刺繍糸も買ってきましょうか?サビィに久し振りに習ってみては」
「そうね」
スカーレットから様々な記憶を貰った薫。この国の礼儀作法など体が覚えていた記憶まで頂けたのは、生活する上で非常に役立った。だから前世で刺繍など一度もやったことはないが、きっと出来ると思い薫はツェルカの申し出に頷いたのだった。
それにあまり上手く出来なかったとしても、サブリナからしっかり習える良い機会でもある。スカーレットの記憶の中のサブリナはその年齢の割にはとても素晴らしい腕前を持ち、教え方も上手かったのだから。
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