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王都オランデール伯爵家5
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「あなた、もう一度おっしゃって下さる。荒唐無稽な話過ぎて、わたくし理解が追い付かないわ」
夫人が怒りを堪えながら、伯爵に出来るだけ冷静な態度で再度説明を求めた。それもそうだろう、夫である伯爵が大切に育ててきた娘に社交シーズンだというのに修道院で奉仕活動をさせると言っているのだから。しかも、理由は謝罪の為。
アルフレッドの側近であるジョイスへいずれ嫁げるよう様々な教育を施したクリスタルが誰かに謝罪をするようなことがあるはずがないと夫人は断言出来る。それは身分的にも有り得ない。クリスタルはリプセット公爵派閥のオランデール伯爵家の娘なのだ。
「今、話した通りだ。クリスタルは謝罪の為に修道院で奉仕活動をさせる」
「謝罪の理由が分からないわ」
「クリスタルはキャストール侯爵令嬢に貴族学院で暴言を吐いていた。数日前にそれを匂わせる手紙が届いた。差出人は定かではないが、貴族学院でのこと、多くの者が見聞きしていただろう。これから徐々に様々なことが明らかになる前に、自ら奉仕活動へ向かったほうが印象はまだ良い」
「そんな、あの子が、そんなこと…。それこそ誰かに陥れられたのよ」
「そうだったとしても、行ったことが許されるはずがない。キャストール侯爵家へは詫び状を既に詫びの品と共に手配した。それと、サブリナを話し相手候補としてリプセット公爵へ伝えようと思う」
「それではサブリナの教育が遅れます」
「ここは嫁の教育よりも、家のことを考えるべきだ」
夫人はクリスタルを修道院で奉仕活動させることにも、サブリナをスカーレットの話し相手候補とすることにも猛反対した。しかし、如何に状況が悪いのか伯爵が理解させると渋々頷いたのだった。
夫人は心の中でサブリナが一候補に過ぎないと何度も呟いた。可哀そうなクリスタルが貴族学院で陥れられたが故に仕方なく候補にするだけ、元々子爵家出身のサブリナに侯爵令嬢の話し相手が務まるとは思えないと高を括りながら。
侯爵家から断りの書状が届いたのなら、寧ろ慰めてあげなくてはならなくなる。可哀そうなサブリナに優しく接してあげなくては。所詮子爵家出身なのだから、身の程を分からせてあげると同時に憐れみという優しさをたっぷり注いであげなくてはいけないと思った。
伯爵は次にジャスティンを執務室に呼び、サブリナを話し相手候補にすることを伝えた。
「あの手紙が本物であれば、サブリナが話し相手に選ばれる可能性は高い。クリスタルの未来を思うならば、次期伯爵夫人としてこの邸であまり役に立たないサブリナを、社交シーズンの終わりを待つことなくファルコールへ送ろうと思う」
「ですが、そうするとわたしが夜会へ一人で参加しなくてはなりません」
「大丈夫だ。その時はサブリナが選ばれたからだと周囲は理解するだろう」
「しかし、サブリナには様々な教育が必要です」
「おまえはわたしの決定に意見するのか?」
「…いえ、勿論父上の決定に意見など」
「では、その歯切れの悪さはなんだ。まあ、まだサブリナが選ばれるとは限らない。手紙の送り主も確定していないのだから」
伯爵のこの決定が、これからオランデール伯爵家にいくつかの痛みをもたらすことになる。六年の歳月を掛け夫人とジャスティンが当たり前としてきたことがこれから崩れようとしていたのだ。
夫人が怒りを堪えながら、伯爵に出来るだけ冷静な態度で再度説明を求めた。それもそうだろう、夫である伯爵が大切に育ててきた娘に社交シーズンだというのに修道院で奉仕活動をさせると言っているのだから。しかも、理由は謝罪の為。
アルフレッドの側近であるジョイスへいずれ嫁げるよう様々な教育を施したクリスタルが誰かに謝罪をするようなことがあるはずがないと夫人は断言出来る。それは身分的にも有り得ない。クリスタルはリプセット公爵派閥のオランデール伯爵家の娘なのだ。
「今、話した通りだ。クリスタルは謝罪の為に修道院で奉仕活動をさせる」
「謝罪の理由が分からないわ」
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「そんな、あの子が、そんなこと…。それこそ誰かに陥れられたのよ」
「そうだったとしても、行ったことが許されるはずがない。キャストール侯爵家へは詫び状を既に詫びの品と共に手配した。それと、サブリナを話し相手候補としてリプセット公爵へ伝えようと思う」
「それではサブリナの教育が遅れます」
「ここは嫁の教育よりも、家のことを考えるべきだ」
夫人はクリスタルを修道院で奉仕活動させることにも、サブリナをスカーレットの話し相手候補とすることにも猛反対した。しかし、如何に状況が悪いのか伯爵が理解させると渋々頷いたのだった。
夫人は心の中でサブリナが一候補に過ぎないと何度も呟いた。可哀そうなクリスタルが貴族学院で陥れられたが故に仕方なく候補にするだけ、元々子爵家出身のサブリナに侯爵令嬢の話し相手が務まるとは思えないと高を括りながら。
侯爵家から断りの書状が届いたのなら、寧ろ慰めてあげなくてはならなくなる。可哀そうなサブリナに優しく接してあげなくては。所詮子爵家出身なのだから、身の程を分からせてあげると同時に憐れみという優しさをたっぷり注いであげなくてはいけないと思った。
伯爵は次にジャスティンを執務室に呼び、サブリナを話し相手候補にすることを伝えた。
「あの手紙が本物であれば、サブリナが話し相手に選ばれる可能性は高い。クリスタルの未来を思うならば、次期伯爵夫人としてこの邸であまり役に立たないサブリナを、社交シーズンの終わりを待つことなくファルコールへ送ろうと思う」
「ですが、そうするとわたしが夜会へ一人で参加しなくてはなりません」
「大丈夫だ。その時はサブリナが選ばれたからだと周囲は理解するだろう」
「しかし、サブリナには様々な教育が必要です」
「おまえはわたしの決定に意見するのか?」
「…いえ、勿論父上の決定に意見など」
「では、その歯切れの悪さはなんだ。まあ、まだサブリナが選ばれるとは限らない。手紙の送り主も確定していないのだから」
伯爵のこの決定が、これからオランデール伯爵家にいくつかの痛みをもたらすことになる。六年の歳月を掛け夫人とジャスティンが当たり前としてきたことがこれから崩れようとしていたのだ。
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