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国内某所とある修道院2
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修道院での生活が始まり、既に五日が過ぎた。この何倍の月日をシシリアはここで過ごさなくてはいけないのだろうか。
考えるだけで、絶望なのか諦めなのか何と表せばいいのか分からない感情がこみ上げてくる。
夜、一人の狭い部屋でいくら泣いても誰も助けてはくれない。勿論泣いたところで状況は同じ。知らぬうちに眠り、また朝が来て、前日と同じような一日を送る。泣きはらしたシシリアの目が腫れていようと誰も気に留めない一日が。
慣れない食事作りに清掃や繕い物。皆、同じ道を辿っているのだろう、どうすればいいのか古参の修道女が分かり易く教えてくれる。それでも分からないことがあれば、質問すればいい。食材や大切な道具を無駄にしないよう、丁寧に教えてもらえる。しかし、日中の会話はこれだけ。皆、与えられた仕事を黙々と行うだけなのだ。
夕方の鐘が鳴り、早めの夕食後の片付けが終わると、修道女としての一日が終わる。だからと言って、それ以降の時間も修道女の時とあまり変わらないようにシシリアには思える。外出が出来るわけでもなければ、心弾む催し物が行われるわけでもない。日中と同じような無駄な会話のない時間が続く。
ところが、修道院に到着した翌日に様々なことをシシリアに教えてくれた修道女に言わせるとこの時間が大切なのだとか。本を読み知識を蓄えたり、自分と向き合ったりと、心に栄養を与えてくれる大切な時間だと教えてくれた。
もう外の世界に出ることがないシシリアに知識を蓄える必要性は感じられない。自分と向き合ったところで、心から欲しているアルフレッドに会えることもない。
夕食が早い分、眠るまでのこの時間はシシリアにとって無駄に長く、過去を思い出しては今との違いに悲しくなるだけの時間だった。
そしてシシリアをここに追いやったスカーレットの姿も時折浮かんでくる。アルフレッドから婚約破棄を突き付けられても優雅な身のこなしで会場を後にしたスカーレットの。
修道院での生活が一月も過ぎた頃、シシリアは漸く脳内で繰り返されるスカーレットの所作から解放され始めた。自分の所作がスカーレットの足元にも及ばないと認めてしまえばいいことだったのだ。
シシリアがアルフレッドに泣きついたスカーレットの威圧的な態度。しかしあれこそが未来の王妃に求められていた態度だったのだろう。そう、シシリアはアルフレッドに泣きついた段階で既に小者でしかなかった。あの雰囲気に押されていたのだから。
何よりスカーレットは威風堂々とした姿を見せていただけ、弱かったシシリアがそれを見て勝手に威圧的だと捉えてしまったに過ぎない。何処の世界に対面する人物の圧に押される弱い王妃がいるというのだろうか。
考えるだけで、絶望なのか諦めなのか何と表せばいいのか分からない感情がこみ上げてくる。
夜、一人の狭い部屋でいくら泣いても誰も助けてはくれない。勿論泣いたところで状況は同じ。知らぬうちに眠り、また朝が来て、前日と同じような一日を送る。泣きはらしたシシリアの目が腫れていようと誰も気に留めない一日が。
慣れない食事作りに清掃や繕い物。皆、同じ道を辿っているのだろう、どうすればいいのか古参の修道女が分かり易く教えてくれる。それでも分からないことがあれば、質問すればいい。食材や大切な道具を無駄にしないよう、丁寧に教えてもらえる。しかし、日中の会話はこれだけ。皆、与えられた仕事を黙々と行うだけなのだ。
夕方の鐘が鳴り、早めの夕食後の片付けが終わると、修道女としての一日が終わる。だからと言って、それ以降の時間も修道女の時とあまり変わらないようにシシリアには思える。外出が出来るわけでもなければ、心弾む催し物が行われるわけでもない。日中と同じような無駄な会話のない時間が続く。
ところが、修道院に到着した翌日に様々なことをシシリアに教えてくれた修道女に言わせるとこの時間が大切なのだとか。本を読み知識を蓄えたり、自分と向き合ったりと、心に栄養を与えてくれる大切な時間だと教えてくれた。
もう外の世界に出ることがないシシリアに知識を蓄える必要性は感じられない。自分と向き合ったところで、心から欲しているアルフレッドに会えることもない。
夕食が早い分、眠るまでのこの時間はシシリアにとって無駄に長く、過去を思い出しては今との違いに悲しくなるだけの時間だった。
そしてシシリアをここに追いやったスカーレットの姿も時折浮かんでくる。アルフレッドから婚約破棄を突き付けられても優雅な身のこなしで会場を後にしたスカーレットの。
修道院での生活が一月も過ぎた頃、シシリアは漸く脳内で繰り返されるスカーレットの所作から解放され始めた。自分の所作がスカーレットの足元にも及ばないと認めてしまえばいいことだったのだ。
シシリアがアルフレッドに泣きついたスカーレットの威圧的な態度。しかしあれこそが未来の王妃に求められていた態度だったのだろう。そう、シシリアはアルフレッドに泣きついた段階で既に小者でしかなかった。あの雰囲気に押されていたのだから。
何よりスカーレットは威風堂々とした姿を見せていただけ、弱かったシシリアがそれを見て勝手に威圧的だと捉えてしまったに過ぎない。何処の世界に対面する人物の圧に押される弱い王妃がいるというのだろうか。
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恋愛にたどり着くまでが長くて…。それなりに登場人物がいますので、『誰なの?相手は』と思いながら読んでいただければ幸いです。
それと、エール、ありがとうございます。励ませていただきます!
ついでに、アルファポリスさんの『しおり』という制度は上手く出来ていますね。わたしが見る画面では、しおりが挟んであるのが見えるんです!新しい話を投稿して、しおりがそこへ進んでくれていると次へのモチベーションになります!しおりを挟んで下さって、ありがとうございます。
それと、エール、ありがとうございます。励ませていただきます!
ついでに、アルファポリスさんの『しおり』という制度は上手く出来ていますね。わたしが見る画面では、しおりが挟んであるのが見えるんです!新しい話を投稿して、しおりがそこへ進んでくれていると次へのモチベーションになります!しおりを挟んで下さって、ありがとうございます。
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