オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではございますが~

五十嵐

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ファルコール手前の町1

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デズモンドとその従者のリアムは宿に馬を預けると、街中にある酒場へやって来た。
「酒場で良かったのか?」
「ああ。あと少しとはいえ、やんちゃをし過ぎて馬に乗れなくなったら困るからな」
「案外真面目だよな、デズモンドは」
「おまえもな」

リアムは男爵家の次男でデズモンドの悪友だ。学生の頃は、将来は二人で適当にキャリントン侯爵領のどこかで面白可笑しく暮らしていければ良いと本気で思っていた。自分達はどうせその程度の人間なのだからと。

しかし、人生何が起こるか分からない。デズモンドはマーカム子爵という立場に早々になってしまったのだ。その時、従者としてデズモンドを支える気はないかとリアムは聞かれて以来、もう何年も面白可笑しくはないが共に時間を共有している。
そして、今回のファルコール行きにも付いて来た。

ファルコールまで馬車ならば五~六泊の行程。自ら騎乗しやって来れば三泊くらい。そこを今回二人は四泊の予定で向かうことにした。
理由は簡単。ファルコール到着日に疲れ切った姿を見せない為だ。そしてファルコールにはない歓楽街に立ち寄る為でもあった。国境の町まで後少し、というところにある歓楽街。ただでさえ様々な人間が滞留しやすい場所に歓楽街までとなると面倒だから、敢えて手前の町に作られたのはキャスト―ル侯爵の思惑だろう。何よりこの造りの歓楽街ならば私兵達も警備し易い。

「侯爵がお姫様をファルコールへ送ったのは、自然しかない安全なところだからっていうのもあるんだろうな」
「かもな。どこにいるんだか分からないが、早々にお宝探しを終わせて、ファルコールで適当に過ごすか」
「お宝のお姫様の居所はだいたい見当がついているんだろ?」
「まあな。遠くから見掛けたことがあるが、ニコリともしないお姫様人形だから侯爵家の館の中に飾ってあるんだろう。見つけたら、俺はこんな年で今更お人形遊びだ」
「違いない。まあ頑張れ。とんでもない美人なんだろ?」
「ああ。ところでリアム、おまえ、本当にいいのか?」
「何が?」
「俺に付いて来ちまって。戻りたければいつでも言えよ、兄貴に爵位が戻ったら口を利くことも出来る」
「いや、その気遣いは要らない。俺もそろそろ適当に過ごせそうな町に落ち着きたいと思っていたから」
「おまえも大概付き合いがいいよな」

デズモンドとリアムはこれから向かうファルコールで温かく迎えられないことは分かっている。それでも、キャリントン侯爵の手前遣るべきことは熟さなくてはならない。キャスト―ル侯爵の領内という環境であれ。

「なあ、リアム、いざとなったら隣国へ美人探しの旅に向かうか」
「いいな、それ」

軽口を叩きながらも、二人はそれぞれ今後どうするか考えを巡らせるのだった。
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恋愛にたどり着くまでが長くて…。それなりに登場人物がいますので、『誰なの?相手は』と思いながら読んでいただければ幸いです。

それと、エール、ありがとうございます。励ませていただきます!

ついでに、アルファポリスさんの『しおり』という制度は上手く出来ていますね。わたしが見る画面では、しおりが挟んであるのが見えるんです!新しい話を投稿して、しおりがそこへ進んでくれていると次へのモチベーションになります!しおりを挟んで下さって、ありがとうございます。
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