91 / 656
ファルコール手前の町1
しおりを挟む
デズモンドとその従者のリアムは宿に馬を預けると、街中にある酒場へやって来た。
「酒場で良かったのか?」
「ああ。あと少しとはいえ、やんちゃをし過ぎて馬に乗れなくなったら困るからな」
「案外真面目だよな、デズモンドは」
「おまえもな」
リアムは男爵家の次男でデズモンドの悪友だ。学生の頃は、将来は二人で適当にキャリントン侯爵領のどこかで面白可笑しく暮らしていければ良いと本気で思っていた。自分達はどうせその程度の人間なのだからと。
しかし、人生何が起こるか分からない。デズモンドはマーカム子爵という立場に早々になってしまったのだ。その時、従者としてデズモンドを支える気はないかとリアムは聞かれて以来、もう何年も面白可笑しくはないが共に時間を共有している。
そして、今回のファルコール行きにも付いて来た。
ファルコールまで馬車ならば五~六泊の行程。自ら騎乗しやって来れば三泊くらい。そこを今回二人は四泊の予定で向かうことにした。
理由は簡単。ファルコール到着日に疲れ切った姿を見せない為だ。そしてファルコールにはない歓楽街に立ち寄る為でもあった。国境の町まで後少し、というところにある歓楽街。ただでさえ様々な人間が滞留しやすい場所に歓楽街までとなると面倒だから、敢えて手前の町に作られたのはキャスト―ル侯爵の思惑だろう。何よりこの造りの歓楽街ならば私兵達も警備し易い。
「侯爵がお姫様をファルコールへ送ったのは、自然しかない安全なところだからっていうのもあるんだろうな」
「かもな。どこにいるんだか分からないが、早々にお宝探しを終わせて、ファルコールで適当に過ごすか」
「お宝のお姫様の居所はだいたい見当がついているんだろ?」
「まあな。遠くから見掛けたことがあるが、ニコリともしないお姫様人形だから侯爵家の館の中に飾ってあるんだろう。見つけたら、俺はこんな年で今更お人形遊びだ」
「違いない。まあ頑張れ。とんでもない美人なんだろ?」
「ああ。ところでリアム、おまえ、本当にいいのか?」
「何が?」
「俺に付いて来ちまって。戻りたければいつでも言えよ、兄貴に爵位が戻ったら口を利くことも出来る」
「いや、その気遣いは要らない。俺もそろそろ適当に過ごせそうな町に落ち着きたいと思っていたから」
「おまえも大概付き合いがいいよな」
デズモンドとリアムはこれから向かうファルコールで温かく迎えられないことは分かっている。それでも、キャリントン侯爵の手前遣るべきことは熟さなくてはならない。キャスト―ル侯爵の領内という環境であれ。
「なあ、リアム、いざとなったら隣国へ美人探しの旅に向かうか」
「いいな、それ」
軽口を叩きながらも、二人はそれぞれ今後どうするか考えを巡らせるのだった。
「酒場で良かったのか?」
「ああ。あと少しとはいえ、やんちゃをし過ぎて馬に乗れなくなったら困るからな」
「案外真面目だよな、デズモンドは」
「おまえもな」
リアムは男爵家の次男でデズモンドの悪友だ。学生の頃は、将来は二人で適当にキャリントン侯爵領のどこかで面白可笑しく暮らしていければ良いと本気で思っていた。自分達はどうせその程度の人間なのだからと。
しかし、人生何が起こるか分からない。デズモンドはマーカム子爵という立場に早々になってしまったのだ。その時、従者としてデズモンドを支える気はないかとリアムは聞かれて以来、もう何年も面白可笑しくはないが共に時間を共有している。
そして、今回のファルコール行きにも付いて来た。
ファルコールまで馬車ならば五~六泊の行程。自ら騎乗しやって来れば三泊くらい。そこを今回二人は四泊の予定で向かうことにした。
理由は簡単。ファルコール到着日に疲れ切った姿を見せない為だ。そしてファルコールにはない歓楽街に立ち寄る為でもあった。国境の町まで後少し、というところにある歓楽街。ただでさえ様々な人間が滞留しやすい場所に歓楽街までとなると面倒だから、敢えて手前の町に作られたのはキャスト―ル侯爵の思惑だろう。何よりこの造りの歓楽街ならば私兵達も警備し易い。
「侯爵がお姫様をファルコールへ送ったのは、自然しかない安全なところだからっていうのもあるんだろうな」
「かもな。どこにいるんだか分からないが、早々にお宝探しを終わせて、ファルコールで適当に過ごすか」
「お宝のお姫様の居所はだいたい見当がついているんだろ?」
「まあな。遠くから見掛けたことがあるが、ニコリともしないお姫様人形だから侯爵家の館の中に飾ってあるんだろう。見つけたら、俺はこんな年で今更お人形遊びだ」
「違いない。まあ頑張れ。とんでもない美人なんだろ?」
「ああ。ところでリアム、おまえ、本当にいいのか?」
「何が?」
「俺に付いて来ちまって。戻りたければいつでも言えよ、兄貴に爵位が戻ったら口を利くことも出来る」
「いや、その気遣いは要らない。俺もそろそろ適当に過ごせそうな町に落ち着きたいと思っていたから」
「おまえも大概付き合いがいいよな」
デズモンドとリアムはこれから向かうファルコールで温かく迎えられないことは分かっている。それでも、キャリントン侯爵の手前遣るべきことは熟さなくてはならない。キャスト―ル侯爵の領内という環境であれ。
「なあ、リアム、いざとなったら隣国へ美人探しの旅に向かうか」
「いいな、それ」
軽口を叩きながらも、二人はそれぞれ今後どうするか考えを巡らせるのだった。
22
恋愛にたどり着くまでが長くて…。それなりに登場人物がいますので、『誰なの?相手は』と思いながら読んでいただければ幸いです。
それと、エール、ありがとうございます。励ませていただきます!
ついでに、アルファポリスさんの『しおり』という制度は上手く出来ていますね。わたしが見る画面では、しおりが挟んであるのが見えるんです!新しい話を投稿して、しおりがそこへ進んでくれていると次へのモチベーションになります!しおりを挟んで下さって、ありがとうございます。
それと、エール、ありがとうございます。励ませていただきます!
ついでに、アルファポリスさんの『しおり』という制度は上手く出来ていますね。わたしが見る画面では、しおりが挟んであるのが見えるんです!新しい話を投稿して、しおりがそこへ進んでくれていると次へのモチベーションになります!しおりを挟んで下さって、ありがとうございます。
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?
naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。
私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。
しかし、イレギュラーが起きた。
何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。

魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します
もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!

攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。

【完結】公女さまが殿下に婚約破棄された
杜野秋人
恋愛
突然始まった卒業記念パーティーでの婚約破棄と断罪劇。
責めるのはおつむが足りないと評判の王太子、責められるのはその婚約者で筆頭公爵家の公女さま。どっちも卒業生で、俺のひとつ歳上だ。
なんでも、下級生の男爵家令嬢に公女さまがずっと嫌がらせしてたんだと。
ホントかね?
公女さまは否定していたけれど、証拠や証言を積み上げられて公爵家の責任まで問われかねない事態になって、とうとう涙声で罪を認めて謝罪するところまで追い込まれた。
だというのに王太子殿下は許そうとせず、あろうことか独断で国外追放まで言い渡した。
ちょっとこれはやりすぎじゃねえかなあ。公爵家が黙ってるとも思えんし、将来の王太子妃として知性も教養も礼儀作法も完璧で、いつでも凛々しく一流の淑女だった公女さまを国外追放するとか、国家の損失だろこれ。
だけど陛下ご夫妻は外遊中で、バカ王太子を止められる者などこの場にはいない。
しょうがねえな、と俺は一緒に学園に通ってる幼馴染の使用人に指示をひとつ出した。
うまく行けば、公爵家に恩を売れるかも。その時はそんな程度しか考えていなかった。
それがまさか、とんでもない展開になるなんて⸺!?
◆衝動的に一晩で書き上げたありきたりのテンプレ婚約破棄です。例によって設定は何も作ってない(一部流用した)ので固有名詞はほぼ出てきません。どこの国かもきちんと決めてないです(爆)。
ただ視点がちょっとひと捻りしてあります。
◆全5話、およそ8500字程度でサラッと読めます。お気軽にどうぞ。
9/17、別視点の話を書いちゃったんで追加投稿します。全4話、約12000字………って元の話より長いやんけ!(爆)
◆感想欄は常に開放しています。ご意見ご感想ツッコミやダメ出しなど、何でもお待ちしています。ぶっちゃけ感想もらえるだけでも嬉しいので。
◆この物語も例によって小説家になろうでも公開しています。あちらも同じく全5話+4話。

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる