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第3話「土蜘蛛」
3-03「自己完結型失恋」
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自宅最寄りの大型スーパー
夕方5時過ぎの一階食品売り場は「タイムセール」のお陰かまだまだ大勢の人で賑わっている、僕はカートを押しながら食材を選ぶ藤塚の後を付いて歩いていた
藤塚が次々と食材をカートに投入していく、この風景は見ようによってはまるで新婚夫婦の様で、僕は不意に訪れた有頂天な幸せの状況に思わず妄想を駆け巡らせる、これってやっぱり、藤塚も僕の事を満更でもなく思っていると言う証拠なんじゃないのだろうか?
「コレ位で良いか、お金払っておいて、」
「えっ、何買ったの?」
僕は予想外の展開にパニクって急いでカートと財布の中身を見比べる
「チッ!」……小市民な僕に藤塚が舌打ちをくれる、
僕はレジで今月の小遣いを使い切り、150円足りなくて藤塚に出してもらう?
「ホント甲斐性無しね、早く運びなさい、」
「ゴメン、」……何故僕は怒られているのだろう?
大体どうして僕が払わなきゃならないの?
……等と言う事は生まれ変わる迄言えそうに無い
ーーー
スーパーのビニール袋3つ、学校の鞄、藤塚の鞄を、何故か一人で引き受ける、それから手ぶらで先を歩く藤塚を早足で追いかける
「冴子にやられっぱなしって言うのが我慢ならないのよ、あのアマ一寸料理が上手い位で調子に乗って!絶対私の事馬鹿にしてるに決まってる、」
「藤塚さん、友達の事をそんな風に言うのは、良く無いと思うよ、」
処が期待した通りの形相で藤塚が僕を睨みつける
「私に友達は居ない、必要ない、」
ならどうして皆の前ではネコ被ってるのさ
……等と言う事は死んでも聞けそうにない
「それと今後二人きりの時は私の事を「ふみか」と呼びなさい、でももし皆の前で名前を呼んだら生まれ変わるのも嫌になる様な目に合わせるわよ、」
「わ、分った、」
それでも自分の事を「下の名前」で呼んで良いと言ってくれたのは事実だ、僕は両手が荷物で塞がったまま小躍りしたくなる様な感激を持て余す
「それから私はアンタの事、カズキって呼ぶから、」
藤塚は、再び背を向けて歩き出しながらぼそっと呟いた
「え?」
「なんか文句有る?」
「いえ、無いです、」
ーーー
20分程歩いて僕達は漸く家に到着した
藤塚の家、つまり僕の家の隣に荷物を運び込む、見覚えのある隣家は殆どの家具を運び出されてガランとした侭だった
「アンタも手伝いなさい、」
「お邪魔します、」
今、この家の中には藤塚と僕の二人きり、当然何かを期待してしまう僕の鼓動は時を待たずして高鳴って行く訳で、
「お帰り、」……吃驚する!!……突然の声に、、
真っ暗なリビングに唯一つポツンと残されたソファーに、
何故だかあの「巨人」が座って居た
早乙女光
「どうして、…早乙女クンが、此処に?」
「だって、俺はフミカと一緒に、暮らしてるんだから、」
早乙女の爬虫類の様な眼差しに僕は突然理解する、コイツも藤塚と同じだ、本性は見せかけと全然違う
「二人はどういう関係なの?」
「俺たちはイギリスで一緒に育った言ってみれば幼馴染なのさ、そしてお互いに「将来」を誓い合った仲でもある、」
身長210cmの巨漢が、勝ち誇ったかの様にほくそ笑む
「ヒカル、つまんない事言ってると追い出すわよ、」
あっと言う間に私服に着替えて来た藤塚が鉛色の眼光で巨漢を恫喝する
「御免よフミカ、でも俺の気持ちはあの時と少しも変わらない、フミカだってそうだろ? だから北条クン、もしもフミカに酷い事したらこの俺が黙っていないからね、君を壊す事くらい造作も無い事なのさ、」
早乙女の表情は学校で見るあの人懐っこい「草食系優等生」とはほど遠く「凶悪」と「残忍」に満ち溢れている
「でも、高校生の男女が一つ屋根の下に暮らしてるなんて、良いのかな、」
言ってて、自分で辛くなる、
「全く何を考えているのか知らないけど、アンタが気にする必要は無いわ、」
藤塚は僕の悩みなどまるで意にも介さないかの様にスルーする
「さてと、カズキは私を手伝いたいのでしょう?」
「え?」
「もう忘れたの? 返事はYesでしょう?」
「いえす、」
このルールって、もしかして本気の本気なのか?
「コレから「明日の弁当」を作るわよ、あの高慢ちきな東郷冴子を「ギャフン」と言わせる「究極のオカズ」を作るのよ、」
ーーー
2時間経過、試食タイム、
僕は思わず感動する! 藤塚の手料理を今僕は口にしているんだ、しかし……
「何とか言ったらどうなのよ? 少し位は役に立とうって積りは無い訳?」
「味がしない。」
「嘘!そんな筈は、レシピ通りに作った筈なのに!」
珍しく藤塚がアタフタしている
「大体フミカは、昔から味音痴だからな、」
早乙女がニヤニヤ笑う
「心配しなくても、明日も俺が弁当作ってやるよ、」
あのだし巻き卵、早乙女が作ってたのか
「ヒカルは黙ってて!これは私の問題なの、私が東郷冴子に「負け」を認めさせられなきゃ意味が無いのよ!」
「ほんと、フミカは負けず嫌いだな、」
少し嬉しい、いや安心する
藤塚にも苦手な物があるんだ、こんなにも可愛くて、スタイル良くて、良い匂いがして、頭が良くて、運動も得意で、人付き合いも(表面上)は完璧な「藤塚文華」も、料理だけは苦手だったんだ
ーーー
「ただいま、」……23時帰宅、
「遅かったわね、早くご飯食べちゃって、」
眉を顰めてプンスカする母親には悪いとは思うのだけれども、
「ああ、食べて来た、」
「そう言う事は先に連絡しなさい、何時迄も片付かないんだから、」
もう、お腹も胸もいっぱいで何も入りそうにない
結局「究極の弁当」とやらは完成しなかった、ベッドに横たわって窓から藤塚の部屋を見ると、カーテンの隙間から部屋の明かりが漏れているのが見える
「アソコに、藤塚が居るんだ、」
そして、早乙女も
「アンタには関係ない」
確かに藤塚が今あの巨人と何をしていようとも僕には何一つ言う権利は無いのだろう、何だか堪らなく胸が苦しくて、いつの間にか本当に僕はこんなにも藤塚の事が好きになってしまったのだろうか? 何の権利が有って藤塚を独占したいなんておこがましい事を想像してしまうのだろうか?
藤塚は今何をしているの? 僕と一緒じゃない時藤塚は何を想っているの? 僕はいつの間にか携帯を手に取って、藤塚から送られてきた「一言罵声メール」を繰り返し繰り返し読み返している
メール作成:「ふじつか、」
僕は、一体何をしているのだろう
メール作成:「すきだ、」
決して送られる筈の無い「藤塚への想い」が、狭い携帯のモニターいっぱいに次々と詰め込まれて行く
それから送信ボタンに指をかけて、僕は「疑似告白」の余韻に浸る
「フーン、…ラブレター?」……心臓が!!!!!!!
いつの間にか母親が僕の肩越しにメールの画面を盗み読みしていた!!
「相手は、だあれ?」
「カっ、勝手に、入ってクンなよ!」
「部屋のドア開けっ放しだったわよ、」
「プライバシーの侵害!」
「全く電気も点けないで、さっさと風呂入っちゃいなさい!」
母、部屋の扉を閉めかけて再度振り返る
「それと、ラブレター書くならもっと明るい文章にしたら~?」
母、満面のにやけ顏、、、、、
一貴:「出てけっ!」
一貴:「あ、」
一貴:「ああああああああっ!…送信、しちゃった?」
本当は送る積りの無かった赤裸裸な愛の告白、僕は突然の母親の侵入に動転してうっかり送信ボタンを押してしまったらしい
でも最早取り返しのつき様が無い、せめてもの救いはそれを知っている人間が「藤塚文華」ただ一人だと言う事だ、藤塚が誰かに「コノ事」をバラす事は無いと願う、寧ろ送っちゃったもんは今更しようがないと開き直る
ソレよりも何よりも続いて僕を苦しめるのは藤塚が何一つ反応してくれない事の方だった、暴言メールでも、残酷メールでも、何でも良かったのに、何時迄経っても僕の携帯が震える事は無かった
丁度携帯が手元に無いとか、じっくり何回も読み返しているとか、まるでスパム扱いだとか、本当は誰か他に好きな奴が居てそいつと一緒に憐れな道化を笑い者にしてるとか、、、
「もう、終わったかもな、色々、」
まだ10分も経っていないのに一人途方に暮れる僕だった
夕方5時過ぎの一階食品売り場は「タイムセール」のお陰かまだまだ大勢の人で賑わっている、僕はカートを押しながら食材を選ぶ藤塚の後を付いて歩いていた
藤塚が次々と食材をカートに投入していく、この風景は見ようによってはまるで新婚夫婦の様で、僕は不意に訪れた有頂天な幸せの状況に思わず妄想を駆け巡らせる、これってやっぱり、藤塚も僕の事を満更でもなく思っていると言う証拠なんじゃないのだろうか?
「コレ位で良いか、お金払っておいて、」
「えっ、何買ったの?」
僕は予想外の展開にパニクって急いでカートと財布の中身を見比べる
「チッ!」……小市民な僕に藤塚が舌打ちをくれる、
僕はレジで今月の小遣いを使い切り、150円足りなくて藤塚に出してもらう?
「ホント甲斐性無しね、早く運びなさい、」
「ゴメン、」……何故僕は怒られているのだろう?
大体どうして僕が払わなきゃならないの?
……等と言う事は生まれ変わる迄言えそうに無い
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スーパーのビニール袋3つ、学校の鞄、藤塚の鞄を、何故か一人で引き受ける、それから手ぶらで先を歩く藤塚を早足で追いかける
「冴子にやられっぱなしって言うのが我慢ならないのよ、あのアマ一寸料理が上手い位で調子に乗って!絶対私の事馬鹿にしてるに決まってる、」
「藤塚さん、友達の事をそんな風に言うのは、良く無いと思うよ、」
処が期待した通りの形相で藤塚が僕を睨みつける
「私に友達は居ない、必要ない、」
ならどうして皆の前ではネコ被ってるのさ
……等と言う事は死んでも聞けそうにない
「それと今後二人きりの時は私の事を「ふみか」と呼びなさい、でももし皆の前で名前を呼んだら生まれ変わるのも嫌になる様な目に合わせるわよ、」
「わ、分った、」
それでも自分の事を「下の名前」で呼んで良いと言ってくれたのは事実だ、僕は両手が荷物で塞がったまま小躍りしたくなる様な感激を持て余す
「それから私はアンタの事、カズキって呼ぶから、」
藤塚は、再び背を向けて歩き出しながらぼそっと呟いた
「え?」
「なんか文句有る?」
「いえ、無いです、」
ーーー
20分程歩いて僕達は漸く家に到着した
藤塚の家、つまり僕の家の隣に荷物を運び込む、見覚えのある隣家は殆どの家具を運び出されてガランとした侭だった
「アンタも手伝いなさい、」
「お邪魔します、」
今、この家の中には藤塚と僕の二人きり、当然何かを期待してしまう僕の鼓動は時を待たずして高鳴って行く訳で、
「お帰り、」……吃驚する!!……突然の声に、、
真っ暗なリビングに唯一つポツンと残されたソファーに、
何故だかあの「巨人」が座って居た
早乙女光
「どうして、…早乙女クンが、此処に?」
「だって、俺はフミカと一緒に、暮らしてるんだから、」
早乙女の爬虫類の様な眼差しに僕は突然理解する、コイツも藤塚と同じだ、本性は見せかけと全然違う
「二人はどういう関係なの?」
「俺たちはイギリスで一緒に育った言ってみれば幼馴染なのさ、そしてお互いに「将来」を誓い合った仲でもある、」
身長210cmの巨漢が、勝ち誇ったかの様にほくそ笑む
「ヒカル、つまんない事言ってると追い出すわよ、」
あっと言う間に私服に着替えて来た藤塚が鉛色の眼光で巨漢を恫喝する
「御免よフミカ、でも俺の気持ちはあの時と少しも変わらない、フミカだってそうだろ? だから北条クン、もしもフミカに酷い事したらこの俺が黙っていないからね、君を壊す事くらい造作も無い事なのさ、」
早乙女の表情は学校で見るあの人懐っこい「草食系優等生」とはほど遠く「凶悪」と「残忍」に満ち溢れている
「でも、高校生の男女が一つ屋根の下に暮らしてるなんて、良いのかな、」
言ってて、自分で辛くなる、
「全く何を考えているのか知らないけど、アンタが気にする必要は無いわ、」
藤塚は僕の悩みなどまるで意にも介さないかの様にスルーする
「さてと、カズキは私を手伝いたいのでしょう?」
「え?」
「もう忘れたの? 返事はYesでしょう?」
「いえす、」
このルールって、もしかして本気の本気なのか?
「コレから「明日の弁当」を作るわよ、あの高慢ちきな東郷冴子を「ギャフン」と言わせる「究極のオカズ」を作るのよ、」
ーーー
2時間経過、試食タイム、
僕は思わず感動する! 藤塚の手料理を今僕は口にしているんだ、しかし……
「何とか言ったらどうなのよ? 少し位は役に立とうって積りは無い訳?」
「味がしない。」
「嘘!そんな筈は、レシピ通りに作った筈なのに!」
珍しく藤塚がアタフタしている
「大体フミカは、昔から味音痴だからな、」
早乙女がニヤニヤ笑う
「心配しなくても、明日も俺が弁当作ってやるよ、」
あのだし巻き卵、早乙女が作ってたのか
「ヒカルは黙ってて!これは私の問題なの、私が東郷冴子に「負け」を認めさせられなきゃ意味が無いのよ!」
「ほんと、フミカは負けず嫌いだな、」
少し嬉しい、いや安心する
藤塚にも苦手な物があるんだ、こんなにも可愛くて、スタイル良くて、良い匂いがして、頭が良くて、運動も得意で、人付き合いも(表面上)は完璧な「藤塚文華」も、料理だけは苦手だったんだ
ーーー
「ただいま、」……23時帰宅、
「遅かったわね、早くご飯食べちゃって、」
眉を顰めてプンスカする母親には悪いとは思うのだけれども、
「ああ、食べて来た、」
「そう言う事は先に連絡しなさい、何時迄も片付かないんだから、」
もう、お腹も胸もいっぱいで何も入りそうにない
結局「究極の弁当」とやらは完成しなかった、ベッドに横たわって窓から藤塚の部屋を見ると、カーテンの隙間から部屋の明かりが漏れているのが見える
「アソコに、藤塚が居るんだ、」
そして、早乙女も
「アンタには関係ない」
確かに藤塚が今あの巨人と何をしていようとも僕には何一つ言う権利は無いのだろう、何だか堪らなく胸が苦しくて、いつの間にか本当に僕はこんなにも藤塚の事が好きになってしまったのだろうか? 何の権利が有って藤塚を独占したいなんておこがましい事を想像してしまうのだろうか?
藤塚は今何をしているの? 僕と一緒じゃない時藤塚は何を想っているの? 僕はいつの間にか携帯を手に取って、藤塚から送られてきた「一言罵声メール」を繰り返し繰り返し読み返している
メール作成:「ふじつか、」
僕は、一体何をしているのだろう
メール作成:「すきだ、」
決して送られる筈の無い「藤塚への想い」が、狭い携帯のモニターいっぱいに次々と詰め込まれて行く
それから送信ボタンに指をかけて、僕は「疑似告白」の余韻に浸る
「フーン、…ラブレター?」……心臓が!!!!!!!
いつの間にか母親が僕の肩越しにメールの画面を盗み読みしていた!!
「相手は、だあれ?」
「カっ、勝手に、入ってクンなよ!」
「部屋のドア開けっ放しだったわよ、」
「プライバシーの侵害!」
「全く電気も点けないで、さっさと風呂入っちゃいなさい!」
母、部屋の扉を閉めかけて再度振り返る
「それと、ラブレター書くならもっと明るい文章にしたら~?」
母、満面のにやけ顏、、、、、
一貴:「出てけっ!」
一貴:「あ、」
一貴:「ああああああああっ!…送信、しちゃった?」
本当は送る積りの無かった赤裸裸な愛の告白、僕は突然の母親の侵入に動転してうっかり送信ボタンを押してしまったらしい
でも最早取り返しのつき様が無い、せめてもの救いはそれを知っている人間が「藤塚文華」ただ一人だと言う事だ、藤塚が誰かに「コノ事」をバラす事は無いと願う、寧ろ送っちゃったもんは今更しようがないと開き直る
ソレよりも何よりも続いて僕を苦しめるのは藤塚が何一つ反応してくれない事の方だった、暴言メールでも、残酷メールでも、何でも良かったのに、何時迄経っても僕の携帯が震える事は無かった
丁度携帯が手元に無いとか、じっくり何回も読み返しているとか、まるでスパム扱いだとか、本当は誰か他に好きな奴が居てそいつと一緒に憐れな道化を笑い者にしてるとか、、、
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