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「なぜ私の婚約者を抱きしめているのか、
貴様そこへ直れ。」
第二王子は、冷たい眼差しを溶かすことなく腰にある見事な意匠の剣に手を向ける。
そのセリフに続く言葉は手打ちにいたす、しかないので、焦ったチェリッシュは
「お待ちください、私がつまづいてしまったのを支えてくれただけなのです!」
急いで叫びながら、ジャンの腕から離れ立ち上がる。
ジャンも顔を冷や汗だらけにしながら
「そうです!なんなら抱きつかれた被害者っす!」
なんて失礼なことを言い出す。
「ほう、私の愛する婚約者殿がだれかれ構わず抱きつく淫乱だと言いたい訳か?」
ジャンの発言は火にに油を注ぐ結果となり、
第二王子の顔が険しくなるに連れて、私たちの顔は比例して青ざめてゆく。
せっかく真実を知る人間が増え味方になってくれるかも、なんとか上手く誤解を解けるかもと、思ったのにこのままでは何しないままジャンの首と胴体は仲違いしてしまう。
ジャンを追い出すことでなんとかこの場を納めるしか無いと思い、
「で、殿下がこちらにいらしたということは、何か私に要件がございますよね、ジャン先輩のご挨拶はもうして頂きましたので、殿下とのお時間を過ごさせて頂きたいのですが。」
案に、二人きりにしろというような意味合いに取れるような言動は、勘違いを加速させてしまう自覚はあったが、今はそれよりも安全を優先すべきと判断した。
チェリッシュからの言葉を聞いた第二王子は、完全にジャンへの興味を無くした様で、桃色に頬を染めながら、立ったままのチェリッシュをソファーへエスコートし、その隣にピッタリと腰を掛ける。
今の内に!という視線を一瞬、ジャンに投げかけ戻すと、一瞬でも自分から目を離したことを責めるかの様に甘すぎる顔がチェリッシュを見つめていた。
距離感もおかしい上に、彼が前世で憧れていた彼の今世と知ってしまった今、チェリッシュは恥ずかしさと、そんな彼を騙してしまっているこの状態に罪悪感で胸がひりついていく。
「やはり私が護衛に付くのがよいではないでしょうか?
あの様な輩を貴方の側に置こうとしたなんて、愚かな選択でした。」
どこの世界に王族を護衛として使える平民がいるのか、やはり前世を勘違いしているだけでなく、第二王子は前世の地位に引きずられすぎていないだろうか。
確かに無念を残したまま生まれ変わり、その挽回のチャンスが巡ってきたとなったら誰だってそうなってしまうのかもしれない。
しかし、あくまでそれらは前世での事柄であり、今世を蔑ろにしてまでする事ではないとチェリッシュは考えている。
それは本当の姫が生まれ変わっていたとしても。
チェリッシュも気になり調べようとしていたことは否定しない。
思い出してすぐは引きずられすぎていたとも今は思う。
しかし愛する家族、大事な使用人達、守るべき領内の人達、
今世の大切なものだって大切にしていいのだ、すべきなのだ。
「私はそもそも護衛をつけていただけるような身分ではありません。
ましてや王族の方をわずらわせるなど、恐れ多いことです。
聖女としての力もあります、守ってもらわずとも大丈夫なのですよ。」
なれない距離感に戸惑いながらも、説得と誤解を解く為にも
「いえ、ずっと貴方を自分の手で守りたいと思っていたのです。
その願いがまさか今世で叶うなんて、前世の多くの苦行はこの為だったのだと感じています。」
どんどん勘違いを訂正するタイミングを失ってゆく気がするチェリッシュは嬉しい気持ちもある自分を戒めながら頭を抱える事しかできなかった。
貴様そこへ直れ。」
第二王子は、冷たい眼差しを溶かすことなく腰にある見事な意匠の剣に手を向ける。
そのセリフに続く言葉は手打ちにいたす、しかないので、焦ったチェリッシュは
「お待ちください、私がつまづいてしまったのを支えてくれただけなのです!」
急いで叫びながら、ジャンの腕から離れ立ち上がる。
ジャンも顔を冷や汗だらけにしながら
「そうです!なんなら抱きつかれた被害者っす!」
なんて失礼なことを言い出す。
「ほう、私の愛する婚約者殿がだれかれ構わず抱きつく淫乱だと言いたい訳か?」
ジャンの発言は火にに油を注ぐ結果となり、
第二王子の顔が険しくなるに連れて、私たちの顔は比例して青ざめてゆく。
せっかく真実を知る人間が増え味方になってくれるかも、なんとか上手く誤解を解けるかもと、思ったのにこのままでは何しないままジャンの首と胴体は仲違いしてしまう。
ジャンを追い出すことでなんとかこの場を納めるしか無いと思い、
「で、殿下がこちらにいらしたということは、何か私に要件がございますよね、ジャン先輩のご挨拶はもうして頂きましたので、殿下とのお時間を過ごさせて頂きたいのですが。」
案に、二人きりにしろというような意味合いに取れるような言動は、勘違いを加速させてしまう自覚はあったが、今はそれよりも安全を優先すべきと判断した。
チェリッシュからの言葉を聞いた第二王子は、完全にジャンへの興味を無くした様で、桃色に頬を染めながら、立ったままのチェリッシュをソファーへエスコートし、その隣にピッタリと腰を掛ける。
今の内に!という視線を一瞬、ジャンに投げかけ戻すと、一瞬でも自分から目を離したことを責めるかの様に甘すぎる顔がチェリッシュを見つめていた。
距離感もおかしい上に、彼が前世で憧れていた彼の今世と知ってしまった今、チェリッシュは恥ずかしさと、そんな彼を騙してしまっているこの状態に罪悪感で胸がひりついていく。
「やはり私が護衛に付くのがよいではないでしょうか?
あの様な輩を貴方の側に置こうとしたなんて、愚かな選択でした。」
どこの世界に王族を護衛として使える平民がいるのか、やはり前世を勘違いしているだけでなく、第二王子は前世の地位に引きずられすぎていないだろうか。
確かに無念を残したまま生まれ変わり、その挽回のチャンスが巡ってきたとなったら誰だってそうなってしまうのかもしれない。
しかし、あくまでそれらは前世での事柄であり、今世を蔑ろにしてまでする事ではないとチェリッシュは考えている。
それは本当の姫が生まれ変わっていたとしても。
チェリッシュも気になり調べようとしていたことは否定しない。
思い出してすぐは引きずられすぎていたとも今は思う。
しかし愛する家族、大事な使用人達、守るべき領内の人達、
今世の大切なものだって大切にしていいのだ、すべきなのだ。
「私はそもそも護衛をつけていただけるような身分ではありません。
ましてや王族の方をわずらわせるなど、恐れ多いことです。
聖女としての力もあります、守ってもらわずとも大丈夫なのですよ。」
なれない距離感に戸惑いながらも、説得と誤解を解く為にも
「いえ、ずっと貴方を自分の手で守りたいと思っていたのです。
その願いがまさか今世で叶うなんて、前世の多くの苦行はこの為だったのだと感じています。」
どんどん勘違いを訂正するタイミングを失ってゆく気がするチェリッシュは嬉しい気持ちもある自分を戒めながら頭を抱える事しかできなかった。
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