転生悪役令嬢は今日も運命の相手を探しまわる

悪役令嬢、共謀する

「お嬢様、やはりお医者様をお呼び致しましょうか？」

私の話を聞き終えたアルの第一声。
うーん、想像通りですわ。


「そもそもお嬢様が悪役令嬢という所からおかしいのですよ。
お嬢様はそんな悪事を考えつくような知恵も頭もありませんし、どうせ無謀に突っ込んでいって終了でしょう。
それにその………えっと、ひろいん？でしたっけ？」

「アリーナ・アールグレイ嬢よ。
隣国の王女なのだけれど、暗殺者に追われて身分を捨ててこの国に逃げてくるの。物語の中では男爵令嬢と身分を偽っていて、身分差を攻略対象と共に乗り越えるのがミソになっているの。」

「どんだけ波乱万丈な半生送ってんですか、その人。隣国でそんな事件があったとも聞いておりませんし、まず婚約者がいる男に近づく時点でアウトです、見境なしのとんでもない女に決まってます。」

乙女ゲームの設定を現実的かつ着実にぶっ壊していくアル。
これはまずいわ！！やはり思った通り信じてもらえていませんし、さらに頭の心配をされていますわ！！！！
私はどうにか打開策を考えようと視線をウロウロ。


そんな私を見て、アルははぁ、とため息をついて私を見下ろしました。

「…………まあ、協力は致しますよ。お嬢様の話を信じてはいませんけどね。」

「！？」

アルの言葉に私はばっと顔を上げる。

本当に？本当に協力してくれますのっ？

「お嬢様に無理やり付き合わされるのは初めてじゃありませんし、どうせ私が嫌だと言ってもお嬢様１人で無理やり突っ込んでいくんでしょう？」

「アルっ、」

思わず幼い頃のくせでアルにとびつこうとしてしまったのをはっ、となって抑えましたが、行き場のない手がこの上なく気まずいですわっ！

出しかけた腕をそろりそろりと戻して、背中の後ろに隠す。
アルの顔を伺うと、何とも言えない微妙な顔で私を見ていましたわ。



「えっと、それじゃあ改めて、えいえいおーー！！！！」
「おー………」



やる気満々で拳を天高く突き上げる私と、呆れたような顔で肩ぐらいの高さまでしか拳をあげないアル。


かくして、私とアルの共謀関係はここに始まったのですわ！！



…………あら、何だか意味が違うような気が…。