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第3部 私達でなければならない
回転椅子
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最近続いていたひとつの悩みが晴れたおかげでかシオンの長い背筋は幾分か真っ直ぐに伸びた。
予想通りにジーナの時はヘイムの方が意思の主になるのか、会話がより昔に、より幼稚なものになる。
ここにいるほとんどの皆は、もう龍身としか見ていないだろうからか緊張しぱなっしで辛いだろうな、と。
シオンは次回以降はジーナがいる時は女官らは不出席としようかと考えた。
刺激が、強すぎる。
龍の口から叱責や悪口が出てきたら普通のものは苦しくて堪らないであろうに。
ジーナは身内だけの時に、私やハイネがいる時にだけ。そうしよう。
「そういえば手紙は続けるようにな。ここの仕事が終わったら書いて明日持ってくるようにな。引き続き報告をするように」
「必要あります? これからこのように会うのに。そもそもあれは前線と戦場の様子を報告することも意味がありましたが」
「そうだ。多方面から報告を受けた方が前線の状態の把握がよりクリアになるであるからな。そなたのは、良かった」
「良い報告だと言っていただければ書いた甲斐がありましたが、これから私がいる前線というか勤務先は、ここですよね。あなただってよく知っていることで」
ジーナの表情は不審さと幾分かの不安の色になっているというのにヘイムの表情は自信に溢れ安堵の笑みさえ浮かべていた。
「そんなのは、分かっておる。だが、そなたと妾では心が違うし視点も違う。ここだって前線で戦場だ。おまけに手紙でしか伝えられぬこともあるだろうに」
「今日のこのことも書くべきですか?」
「書かない理由とは何だ、言え?」
「こんなに話しているし一緒じゃないですか」
「あのな、人の話を聞いておるのか! 妾とそなたは違う存在だぞ。見ているもの聞いているもの感じていること、その全てが違う、その相違に差異をな」
「そこまで難しく考えて報告書は書きたくはないのですけど」
机を大きく叩く音がし例の四人を除いた他全員の心臓は龍に叩かれたような衝撃とともに止り、かけた。
「いい加減にしろ。妾は! そなたからの! 報告者を読みたいと言っているのだ! つべこべ言わずになんで喜んでお書きしますと言わんのだ、ええ、おい!」
「特別に深い喜びはありませんのでそうは言えません」
反論に対してそこにいる誰もが、なんでこの人はいちいち逆らっているのか、と心配になり龍身に祈った。早くこの人の口を塞いでくださいと。
「ああいやだいやだ。そなたと話すと必ず会話が座礁してスムーズにいかん。もういい命令だ、明日報告書を持ってこい、ついでに命令だ反論するな、以上」
「分かりましたヘイム様」
ジーナがこう答えるとヘイムは優しく微笑み一同の口から安堵の息が漏れて場は朗らかな雰囲気に包まれた。
敵が屈服し傾いて倒れたことにより龍身の機嫌が治り平和が戻った、やはり龍は偉大だと。
「はじめからそう従っておれば簡単に話は終わるのにそなたは難儀だ。その点この椅子はスムーズで便利だな。微妙に角度を好きなように変えられるのが気に入った。妾は大勢の人を見るのが仕事だからな。首を動かし過ぎて疲れる日もあるからこれは最適であるぞ」
ヘイムは回転椅子を左右に揺らしてみせた。
「西にはそのようなものがありましてちょっと作ってみました。お気に召されたのなら良かった」
「今日の無礼の大半はこれで許してやる。ついでだちょっと一周回してみろ」
立ち上がったジーナは回転いすの背もたれに手を掛け右に回すとヘイムは笑い声をあげた。
「よしいいぞ次は逆方向でやれ。左右のバランスをとらんと気持ち悪くなりそうだからな」
言われるがままジーナは逆方向にヘイムを回し、また反対と。
その光景を全員が見ておりそして思う、初日からこんなものを見ているが、もしかして毎日をこれを?
こうして歓迎の儀というべき初回は終わった。
予想通りにジーナの時はヘイムの方が意思の主になるのか、会話がより昔に、より幼稚なものになる。
ここにいるほとんどの皆は、もう龍身としか見ていないだろうからか緊張しぱなっしで辛いだろうな、と。
シオンは次回以降はジーナがいる時は女官らは不出席としようかと考えた。
刺激が、強すぎる。
龍の口から叱責や悪口が出てきたら普通のものは苦しくて堪らないであろうに。
ジーナは身内だけの時に、私やハイネがいる時にだけ。そうしよう。
「そういえば手紙は続けるようにな。ここの仕事が終わったら書いて明日持ってくるようにな。引き続き報告をするように」
「必要あります? これからこのように会うのに。そもそもあれは前線と戦場の様子を報告することも意味がありましたが」
「そうだ。多方面から報告を受けた方が前線の状態の把握がよりクリアになるであるからな。そなたのは、良かった」
「良い報告だと言っていただければ書いた甲斐がありましたが、これから私がいる前線というか勤務先は、ここですよね。あなただってよく知っていることで」
ジーナの表情は不審さと幾分かの不安の色になっているというのにヘイムの表情は自信に溢れ安堵の笑みさえ浮かべていた。
「そんなのは、分かっておる。だが、そなたと妾では心が違うし視点も違う。ここだって前線で戦場だ。おまけに手紙でしか伝えられぬこともあるだろうに」
「今日のこのことも書くべきですか?」
「書かない理由とは何だ、言え?」
「こんなに話しているし一緒じゃないですか」
「あのな、人の話を聞いておるのか! 妾とそなたは違う存在だぞ。見ているもの聞いているもの感じていること、その全てが違う、その相違に差異をな」
「そこまで難しく考えて報告書は書きたくはないのですけど」
机を大きく叩く音がし例の四人を除いた他全員の心臓は龍に叩かれたような衝撃とともに止り、かけた。
「いい加減にしろ。妾は! そなたからの! 報告者を読みたいと言っているのだ! つべこべ言わずになんで喜んでお書きしますと言わんのだ、ええ、おい!」
「特別に深い喜びはありませんのでそうは言えません」
反論に対してそこにいる誰もが、なんでこの人はいちいち逆らっているのか、と心配になり龍身に祈った。早くこの人の口を塞いでくださいと。
「ああいやだいやだ。そなたと話すと必ず会話が座礁してスムーズにいかん。もういい命令だ、明日報告書を持ってこい、ついでに命令だ反論するな、以上」
「分かりましたヘイム様」
ジーナがこう答えるとヘイムは優しく微笑み一同の口から安堵の息が漏れて場は朗らかな雰囲気に包まれた。
敵が屈服し傾いて倒れたことにより龍身の機嫌が治り平和が戻った、やはり龍は偉大だと。
「はじめからそう従っておれば簡単に話は終わるのにそなたは難儀だ。その点この椅子はスムーズで便利だな。微妙に角度を好きなように変えられるのが気に入った。妾は大勢の人を見るのが仕事だからな。首を動かし過ぎて疲れる日もあるからこれは最適であるぞ」
ヘイムは回転椅子を左右に揺らしてみせた。
「西にはそのようなものがありましてちょっと作ってみました。お気に召されたのなら良かった」
「今日の無礼の大半はこれで許してやる。ついでだちょっと一周回してみろ」
立ち上がったジーナは回転いすの背もたれに手を掛け右に回すとヘイムは笑い声をあげた。
「よしいいぞ次は逆方向でやれ。左右のバランスをとらんと気持ち悪くなりそうだからな」
言われるがままジーナは逆方向にヘイムを回し、また反対と。
その光景を全員が見ておりそして思う、初日からこんなものを見ているが、もしかして毎日をこれを?
こうして歓迎の儀というべき初回は終わった。
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