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第一章 なぜ私であるのか
だから同じものであるな・違う
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ジーナが扉を開けるとそこは見慣れた龍の間の光景が広がる。
この時間の部屋に入る陽の角度による光の加減に空気それと少し位置を変えている調度品。全てを知っているはずなのに正面に座っているものだけが違った。
龍身がそこにいた。
身体全体を正面に向けている。ジーナは思い出す、これはあの日の出会った最初の日と同じであると。
これはあの日以来自分とヘイムが避け続けてきたものであると。ジーナの胸が黒い感情に湧き立つ。あの日覚えた心の衝動のまま部屋の中心へ、龍身へ向かう。
湧き上がる憎悪としかいえない高鳴りを胸にしそこへ近づいて行く。龍身は不動の姿勢のままジーナを待ち見続け、見上げた。
右のヘイムの顔に左の龍身の顔。以前のあの時はジーナは顔を見ることをすぐに避けたがこの時は目を背けなかった。
龍身も黙ったままでありジーナも口を開けなかった。聞こえているのは胸の不規則な鼓動、リズムの異なるふたつの音。決して重ならない音であるのに同じ音にしか聞こえない、その二つのもの。
ズレにより痛みを伴いながらジーナは聞いている。これはいったいなにであるのか?
鼓動は収まらず響いている中でジーナは思う、この音はヘイムに聞こえているのではないか? 私の憎しみの音ともう一つの重ならない癖に離れない意味不明な音を。
この人は私の心を知っているというのに、何故こうも黙って見ていられるのか? 音が大きく聞こえだすなかで予定通りかジーナの両手が動きだす。
左手がヘイムに向かい右手が龍身へと。首を目指してゆっくりと迫って来るというのにヘイムは眉ひとつ動かさずにジーナを見つめたまま、語りもしない。
両手は髪に触れその揺れる音すら聞こえるほどの静けさの中、ジーナの胸に激痛が走り手が止まる。
今度はさっきまでとは異なる音が聞こえてきた。それはあの二つの音がぶつかり合っているかのような音であり、怒りと憎しみと何故か悲しみさえ感じられ、混乱した意識の中でジーナは自分の目からなにかが落ちたことに気づき、それがヘイムの頬に落ちたのを見た。
ただ、涙が落ちた。それが何の意味であるのか分からぬままもう一つ零れまたヘイムの目の下に落ちる。
それでもヘイムは無反応のままであり涙さえも受け入れているように見え、男は左手だけヘイムの首ではなく顎と頬に手を添え、聞いた。
「こんなに変わってしまって……」
ヘイムは言葉で答える代わりか三度瞬きをした。
「あなたは龍となるのですね」
「そうだ」
分かり切っている問いにヘイムの正面から答えジーナは息が詰まる。
違う言葉を聞きたいとでもいうのか?
自分はどんな言葉を望んでいるのか分からないまま男はまた聞いた。
「何故なるのですか」
「龍命であるからだ」
愚問であるというのにヘイムは確信を込め答える。それが揺るぎない事実であることを、確実であるということを示す為に。真実のみを告げるように。
「妾は中央へ行き龍となるのだ」
言葉で以って胸を貫かれ苦痛によってまた涙が溢れこぼれ落ちヘイムの顔をまた濡らした。
「そうであるのだから。そんなことは分かっていたから」
手は首の後ろへ回りそれからジーナは跪き引き寄せる。
「私は会いたくなかったのかもしれない。そうすればこんな感情など生まれずに」
「純粋なままでいられたとでも言うのか? 妾はな」
女は言った。
「会いたかったぞ。さすればこのような感情が芽生えたからな」
「私が」
と男は低い声をあげた。
「これほどまでに苦しんでいるのに、あなたはそのようなことを言うのか」
怒りによって手に力が入っているというのに女の眼は返事をする前に色でよって応えた。ジーナはその色を嘲りの光りと見た。
「そうだな。この感情を喜びと言ってやる。そなたがそのような心になるのを見るのが妾には心地良い。妾の目を睨むその眼、心まで読み取れる眼、妾に曝け出すその本性。良いぞ思うが侭やるがよい。全部受け止めてやる」
激情が血を巡り苦しみからの解放のために衝動的にその首に両手をかけようとするが、どうしても無理であった。
ジーナの頭の片隅に絶えず消えずに残っていた可能性がよぎる。龍になれば討てる、は同時に龍になるまで討つことはできない、ではないのか? と。
そしてもうひとつジーナの頭の片隅に絶えず消えずに残っていた可能性がよぎる。もしかしたら中央の龍こそが……一層深みの苦しみの中に入ったジーナはまたヘイムの目を見る。
そこにはまだ消えない挑発の色が、愉悦の輝きが。自分を苦しめる美しさがそこにあり、この女はそれを理解した上で、向けてくる。
「出会わなければ、私は何も知らずに何も思わずに進めたのに」
「試練だ。これはお互いにとってのな」
意外な言葉を聞きジーナはヘイムの眼を見るがそこに嘲笑の色ではない元の理智の光りを宿していた。
だがジーナには冗談にしか聞こえない。試練とはこの先にあるものでありここではない。ましてや龍身という半分の存在などでは断じてない。
「お互いに、というわけがない」
「お互いにな、似たものではあるだろう」
眼の色に変わりはなくそう語る女に男は憤りを募らせる。
「何を言っているんだ」
「同じものであるな」
「違う」
だからジーナは考えるよりもすぐ言葉を返すが、気圧され冷たいものを背負ったような恐怖の念が身体に染み込み支配されていくように感じられた。
こんなふざけたことを言うのにどうしてその瞳は少しも変わらないのか、とジーナは女の目をいまだ見つめながら不安をも抱きだす。
「違う。同じものではない」
「何が違うのだ」
「なにもかもだ」
女の言葉を一蹴しようと否定すればするほど不安は広がり声も言葉も荒くなるも女の眼の色は変わらない。何故変わらない?
それどころか女の瞳は大きくなりそれに捕われたように動けなくなっていく自分をジーナは発見する。逆にやられているという感覚のなかで声を聞く。
「頑なに否定をするのか。では今度はこちらが問おう」
問うな、とジーナは心中で叫んだ。
「そなたはそれになるのか? 金色の瞳をし頬に印のような傷痕を露わにする、その名のものに」
「そうだ」
なにを言っているんだこの女は? と恐慌に駆られた声が心の底かで暴れ出すも、それに反し声は聞き覚えのあるはっきりした声が出た。
「何故そのものになろうとしているのだ?」
「私はそういう存在であるからだ」
なぜそこに触れるのだ? なぜこの口から言葉が勝手に漏れていくとジーナはもがこうとするも身体は微動だにしない。まるでさっきのヘイムの如くに、同じに近づいていく。
「私は中央へ龍を目指し向かっている」
これもさっき聞いた声であった。
「そなたがそうであり、そのようなものであることは分かっていたから」
いつしかジーナは女の声だけが聞こえていた。
『会いたかったぞ。さすればこのような感情が芽生えたからな』
その言葉を自分の声と同じ響きだとジーナは感じ取った。言葉の芯の部分が、その言葉を貫く感情が、だがその貫く芯の心をなんというのか、ジーナには分からない。分かってはならない。
なにかが迫って来るものをジーナは感じ取った。女の右手が、来る。
お前はここに来るな、お前は近寄って来るな、悲鳴と怒声がジーナの内部から無限に反響するも、逃げることも抗することすらできないまま、ヘイムの手はジーナのいつかのように左頬の痕を覆う。
「おぞましいな」
心中で湧く叫びのなかでジーナの右手も自動的にヘイムの左側を覆いに動きだし、触れると男は声を漏らした。
「あぁ……」
もしも、と男は想像する。もしも龍身でなかったら、もしも龍がなかったら、もしもここにいるのが……
次の妄想へ言葉に繋げようとすると右手の指の間から、だれかが男を見つめていた。
眼の前に見知らぬ女がいた。覆われた手の隙間には龍身はなく、そこには……だが断末魔のごとき声がジーナを掴みかかり、闇を以て命じる。
開くな、思うな、それを、見るな。ジーナは瞼を閉じ立ち上がりかつてない声を出した。
「違う」
それからジーナは扉まで走り龍の間から逃げ出す、一度も振り返ることなく廊下を階段を門を駆け抜け、遠くへまるで果てにまで向かうように走っていく。
背景がジーナから離れるように後方へ去っていく。龍の館の壁も道も森も寄り添わず離れそれらが二度と出会わないもののようにジーナは振り向かない。
それでいいと思った。もうそれでいいと願う、それこそがいまジーナが心の底から思う願いの如くに。
なにもかもをこうして投げ捨て見捨て私はやはり世界の果てに行ければ。
「ちょっと止まって!」
ジーナが走り出してはじめて人の声が聞こえ、追いかけて来る。
「待ってったらジーナさん!」
この時間の部屋に入る陽の角度による光の加減に空気それと少し位置を変えている調度品。全てを知っているはずなのに正面に座っているものだけが違った。
龍身がそこにいた。
身体全体を正面に向けている。ジーナは思い出す、これはあの日の出会った最初の日と同じであると。
これはあの日以来自分とヘイムが避け続けてきたものであると。ジーナの胸が黒い感情に湧き立つ。あの日覚えた心の衝動のまま部屋の中心へ、龍身へ向かう。
湧き上がる憎悪としかいえない高鳴りを胸にしそこへ近づいて行く。龍身は不動の姿勢のままジーナを待ち見続け、見上げた。
右のヘイムの顔に左の龍身の顔。以前のあの時はジーナは顔を見ることをすぐに避けたがこの時は目を背けなかった。
龍身も黙ったままでありジーナも口を開けなかった。聞こえているのは胸の不規則な鼓動、リズムの異なるふたつの音。決して重ならない音であるのに同じ音にしか聞こえない、その二つのもの。
ズレにより痛みを伴いながらジーナは聞いている。これはいったいなにであるのか?
鼓動は収まらず響いている中でジーナは思う、この音はヘイムに聞こえているのではないか? 私の憎しみの音ともう一つの重ならない癖に離れない意味不明な音を。
この人は私の心を知っているというのに、何故こうも黙って見ていられるのか? 音が大きく聞こえだすなかで予定通りかジーナの両手が動きだす。
左手がヘイムに向かい右手が龍身へと。首を目指してゆっくりと迫って来るというのにヘイムは眉ひとつ動かさずにジーナを見つめたまま、語りもしない。
両手は髪に触れその揺れる音すら聞こえるほどの静けさの中、ジーナの胸に激痛が走り手が止まる。
今度はさっきまでとは異なる音が聞こえてきた。それはあの二つの音がぶつかり合っているかのような音であり、怒りと憎しみと何故か悲しみさえ感じられ、混乱した意識の中でジーナは自分の目からなにかが落ちたことに気づき、それがヘイムの頬に落ちたのを見た。
ただ、涙が落ちた。それが何の意味であるのか分からぬままもう一つ零れまたヘイムの目の下に落ちる。
それでもヘイムは無反応のままであり涙さえも受け入れているように見え、男は左手だけヘイムの首ではなく顎と頬に手を添え、聞いた。
「こんなに変わってしまって……」
ヘイムは言葉で答える代わりか三度瞬きをした。
「あなたは龍となるのですね」
「そうだ」
分かり切っている問いにヘイムの正面から答えジーナは息が詰まる。
違う言葉を聞きたいとでもいうのか?
自分はどんな言葉を望んでいるのか分からないまま男はまた聞いた。
「何故なるのですか」
「龍命であるからだ」
愚問であるというのにヘイムは確信を込め答える。それが揺るぎない事実であることを、確実であるということを示す為に。真実のみを告げるように。
「妾は中央へ行き龍となるのだ」
言葉で以って胸を貫かれ苦痛によってまた涙が溢れこぼれ落ちヘイムの顔をまた濡らした。
「そうであるのだから。そんなことは分かっていたから」
手は首の後ろへ回りそれからジーナは跪き引き寄せる。
「私は会いたくなかったのかもしれない。そうすればこんな感情など生まれずに」
「純粋なままでいられたとでも言うのか? 妾はな」
女は言った。
「会いたかったぞ。さすればこのような感情が芽生えたからな」
「私が」
と男は低い声をあげた。
「これほどまでに苦しんでいるのに、あなたはそのようなことを言うのか」
怒りによって手に力が入っているというのに女の眼は返事をする前に色でよって応えた。ジーナはその色を嘲りの光りと見た。
「そうだな。この感情を喜びと言ってやる。そなたがそのような心になるのを見るのが妾には心地良い。妾の目を睨むその眼、心まで読み取れる眼、妾に曝け出すその本性。良いぞ思うが侭やるがよい。全部受け止めてやる」
激情が血を巡り苦しみからの解放のために衝動的にその首に両手をかけようとするが、どうしても無理であった。
ジーナの頭の片隅に絶えず消えずに残っていた可能性がよぎる。龍になれば討てる、は同時に龍になるまで討つことはできない、ではないのか? と。
そしてもうひとつジーナの頭の片隅に絶えず消えずに残っていた可能性がよぎる。もしかしたら中央の龍こそが……一層深みの苦しみの中に入ったジーナはまたヘイムの目を見る。
そこにはまだ消えない挑発の色が、愉悦の輝きが。自分を苦しめる美しさがそこにあり、この女はそれを理解した上で、向けてくる。
「出会わなければ、私は何も知らずに何も思わずに進めたのに」
「試練だ。これはお互いにとってのな」
意外な言葉を聞きジーナはヘイムの眼を見るがそこに嘲笑の色ではない元の理智の光りを宿していた。
だがジーナには冗談にしか聞こえない。試練とはこの先にあるものでありここではない。ましてや龍身という半分の存在などでは断じてない。
「お互いに、というわけがない」
「お互いにな、似たものではあるだろう」
眼の色に変わりはなくそう語る女に男は憤りを募らせる。
「何を言っているんだ」
「同じものであるな」
「違う」
だからジーナは考えるよりもすぐ言葉を返すが、気圧され冷たいものを背負ったような恐怖の念が身体に染み込み支配されていくように感じられた。
こんなふざけたことを言うのにどうしてその瞳は少しも変わらないのか、とジーナは女の目をいまだ見つめながら不安をも抱きだす。
「違う。同じものではない」
「何が違うのだ」
「なにもかもだ」
女の言葉を一蹴しようと否定すればするほど不安は広がり声も言葉も荒くなるも女の眼の色は変わらない。何故変わらない?
それどころか女の瞳は大きくなりそれに捕われたように動けなくなっていく自分をジーナは発見する。逆にやられているという感覚のなかで声を聞く。
「頑なに否定をするのか。では今度はこちらが問おう」
問うな、とジーナは心中で叫んだ。
「そなたはそれになるのか? 金色の瞳をし頬に印のような傷痕を露わにする、その名のものに」
「そうだ」
なにを言っているんだこの女は? と恐慌に駆られた声が心の底かで暴れ出すも、それに反し声は聞き覚えのあるはっきりした声が出た。
「何故そのものになろうとしているのだ?」
「私はそういう存在であるからだ」
なぜそこに触れるのだ? なぜこの口から言葉が勝手に漏れていくとジーナはもがこうとするも身体は微動だにしない。まるでさっきのヘイムの如くに、同じに近づいていく。
「私は中央へ龍を目指し向かっている」
これもさっき聞いた声であった。
「そなたがそうであり、そのようなものであることは分かっていたから」
いつしかジーナは女の声だけが聞こえていた。
『会いたかったぞ。さすればこのような感情が芽生えたからな』
その言葉を自分の声と同じ響きだとジーナは感じ取った。言葉の芯の部分が、その言葉を貫く感情が、だがその貫く芯の心をなんというのか、ジーナには分からない。分かってはならない。
なにかが迫って来るものをジーナは感じ取った。女の右手が、来る。
お前はここに来るな、お前は近寄って来るな、悲鳴と怒声がジーナの内部から無限に反響するも、逃げることも抗することすらできないまま、ヘイムの手はジーナのいつかのように左頬の痕を覆う。
「おぞましいな」
心中で湧く叫びのなかでジーナの右手も自動的にヘイムの左側を覆いに動きだし、触れると男は声を漏らした。
「あぁ……」
もしも、と男は想像する。もしも龍身でなかったら、もしも龍がなかったら、もしもここにいるのが……
次の妄想へ言葉に繋げようとすると右手の指の間から、だれかが男を見つめていた。
眼の前に見知らぬ女がいた。覆われた手の隙間には龍身はなく、そこには……だが断末魔のごとき声がジーナを掴みかかり、闇を以て命じる。
開くな、思うな、それを、見るな。ジーナは瞼を閉じ立ち上がりかつてない声を出した。
「違う」
それからジーナは扉まで走り龍の間から逃げ出す、一度も振り返ることなく廊下を階段を門を駆け抜け、遠くへまるで果てにまで向かうように走っていく。
背景がジーナから離れるように後方へ去っていく。龍の館の壁も道も森も寄り添わず離れそれらが二度と出会わないもののようにジーナは振り向かない。
それでいいと思った。もうそれでいいと願う、それこそがいまジーナが心の底から思う願いの如くに。
なにもかもをこうして投げ捨て見捨て私はやはり世界の果てに行ければ。
「ちょっと止まって!」
ジーナが走り出してはじめて人の声が聞こえ、追いかけて来る。
「待ってったらジーナさん!」
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