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3 媚びる女
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家にいる時は、スマホを弄らないようにしている。どうしても部長からの連絡を待ってしまうからだ。
来ない連絡を待つのは虚しくて侘しい。
でも、スマホを弄らないようにする、とか考えている時点で、部長のことを考えているとも言える。
堂々巡りな想いを投げ捨て、電気を消してベッドに入る。
暗闇のなかで、今日の木庭さんの言葉を思い出し、閉じていた目を少し開けた。
自分を大事にしたほうがいい、って……言ってたな。
自分に素直になることは、自分を大事にしていないのかな。
きっと、木庭さんの彼女は、木庭さんに大事にしてもらっているんだろう。
「あ、飲まなきゃ……」
忘れるわけにはいかない、ピル。
部長が毎月の通院代を出してくれているし、避妊具を使う事はもうないから欠かせない。
キッチンまで歩き、グラス片手に口に錠剤を放り込み、水で流し込む。
この事が、このピルが、部長が私を大事にしてくれている証だと思いたいけど……。
毎日毎日飲まなきゃいけないのに、会える日の方が断然少ないのが寂しい。
翌日。簡単にフレンチトーストを作ってサラダを盛り付け、コーヒーを飲む。部長に倣い、朝食はきっちり取ろうと決めている。
部長のマンションにいる朝も、朝食を用意する。
「玲は料理上手だね」と言ってくれたが、元々、部長と同僚だった奥様は、今やパン教室の先生をしているほどの腕前だ。
早めに家を出て、混雑する地下鉄で、景色の見えない暗い窓の外を見ながら、駅に着く。
人の波に流され改札を出た。はぁ、と一息つき歩き出すと、背の高い木庭さんの後ろ姿を見つけてしまった。
声……かけなくてもいっか……。
朝から話すのも面倒かもしんないし。
木庭さん低血圧っぽいし。
それにしても、木庭さんも朝早いなぁ。
歩道橋の上で、木庭さんが道路の車の往来を見ながら歩く。植込みの枯れ木に目線をやったり、ビルの隙間から漏れる太陽を見上げたり、まだ人の少ない朝のオフィス街を歩く姿を見つめる。
木庭さんがしているように私も太陽を見上げた。冬の光は、思いの外眩しく、胸がすっと澄むように思えて、じっと見上げていた。
「…都築さん、なにやってんの」
気づけば木庭さんが、きょとんとした顔で私に振り向いていた。
「い、いや、おはようございます」
木庭さんの真似だったんだけど、恥ずかしい。あくびをしながら木庭さんが歩き出した。
「今日は早えーんだな」
「はい、寝付けなくて…早く起きれたので」
そういうと、木庭さんが顔をしかめた。
「ちゃんと寝ろよ?」
「そうなんですけど…昨日の叩きが気になって」
「俺次第だな。今から見るわ」
会社は、チノパンやジーンズじゃなければ、カジュアルな服装でもいい。
木庭さんのファッションは好きだ。シャツにカーデ、細身のパンツ。一方部長は、ブランドのスーツをスマートに着こなしている。
「木庭さん、いつもかわいい格好してますよね」
「あ~? 褒めても仕事で甘い顔しねぇよ?」
「そんなつもりじゃないですよ!」
またやってしまった…!媚びてると思われたかもしれない。
二人でエレベーターに乗り、ボタンを押す。人付き合いの下手くそな自分にため息が出る…。
ちらりと木庭さんを見たら、じっと見下ろされていてどきりと胸が鳴った。
「髪。絡まってる」
「え…」
「ここ」
木庭さんの骨ばった手が近づき、小指で私の髪をすくった。
「解けた」
「あ…」
どきん、どきんと全身が心臓になったみたいに、締め付けられて声が出ないまま、エレベーターがポーンと音がなり、フロアに着いた。
「おはよーございまーす」
「おはようございます…」
木庭さんが歩く後ろをついてデスクに向かうと、部長席にはすでに部長が来ていた。
「おはよう。早いね。二人で出勤?」
悠然とにっこりとした余裕のある笑顔で、部長が顔を上げる。
「さっき歩道橋で会いました。部長もお早いですね」
「僕は昨日の帰りが早かったからね」
木庭さんと部長は軽妙に会話を続け、私は話に入らないようにしながらパソコンを立ち上げ、コンビニに行こうと財布を持って立ち上がった。
「あぁ…っ。だめです」
「何がだめなの?」
「誰かが来たら…!」
コンビニまで何かを買いに行こうとしてエレベーターを待っていたのに、すぐに部長が追いかけてきて、空き会議室に呼ばれてしまった。
ドアを閉めるとすぐに胸を揉まれる。会社でこんなことする人じゃないので驚いた。
「木庭に色目使ってるだろ? 木庭も玲のこと抱きたいと思っているはずだよ。よかったね…」
「あっ…!」
後ろから右胸をぐっと掴まれ、上にぐにぐにと揉まれてしまう。
木庭さんが?
そんなことはない。木庭さんは、部長とは違う。
「木庭さんはそんなことしないです。彼女いますし…」
「……僕も奥さんいるよ。そんなことしないって、こんなことする僕はどうなるの?」
「あーッ…」
両胸を丸出しにされ、机に座らされた。ブラジャーをさっと外され、パンティの中に指を入れられた。
「いや、部長、ここじゃいや」
「…すぐ済むから」
息荒く、カチャカチャとベルトを外す部長。
こんな人だった?
不利な体勢と、恐怖で逃げ出すこともできないままに、部長は私を机に押し倒し、怒張で私の奥を貫いた。
来ない連絡を待つのは虚しくて侘しい。
でも、スマホを弄らないようにする、とか考えている時点で、部長のことを考えているとも言える。
堂々巡りな想いを投げ捨て、電気を消してベッドに入る。
暗闇のなかで、今日の木庭さんの言葉を思い出し、閉じていた目を少し開けた。
自分を大事にしたほうがいい、って……言ってたな。
自分に素直になることは、自分を大事にしていないのかな。
きっと、木庭さんの彼女は、木庭さんに大事にしてもらっているんだろう。
「あ、飲まなきゃ……」
忘れるわけにはいかない、ピル。
部長が毎月の通院代を出してくれているし、避妊具を使う事はもうないから欠かせない。
キッチンまで歩き、グラス片手に口に錠剤を放り込み、水で流し込む。
この事が、このピルが、部長が私を大事にしてくれている証だと思いたいけど……。
毎日毎日飲まなきゃいけないのに、会える日の方が断然少ないのが寂しい。
翌日。簡単にフレンチトーストを作ってサラダを盛り付け、コーヒーを飲む。部長に倣い、朝食はきっちり取ろうと決めている。
部長のマンションにいる朝も、朝食を用意する。
「玲は料理上手だね」と言ってくれたが、元々、部長と同僚だった奥様は、今やパン教室の先生をしているほどの腕前だ。
早めに家を出て、混雑する地下鉄で、景色の見えない暗い窓の外を見ながら、駅に着く。
人の波に流され改札を出た。はぁ、と一息つき歩き出すと、背の高い木庭さんの後ろ姿を見つけてしまった。
声……かけなくてもいっか……。
朝から話すのも面倒かもしんないし。
木庭さん低血圧っぽいし。
それにしても、木庭さんも朝早いなぁ。
歩道橋の上で、木庭さんが道路の車の往来を見ながら歩く。植込みの枯れ木に目線をやったり、ビルの隙間から漏れる太陽を見上げたり、まだ人の少ない朝のオフィス街を歩く姿を見つめる。
木庭さんがしているように私も太陽を見上げた。冬の光は、思いの外眩しく、胸がすっと澄むように思えて、じっと見上げていた。
「…都築さん、なにやってんの」
気づけば木庭さんが、きょとんとした顔で私に振り向いていた。
「い、いや、おはようございます」
木庭さんの真似だったんだけど、恥ずかしい。あくびをしながら木庭さんが歩き出した。
「今日は早えーんだな」
「はい、寝付けなくて…早く起きれたので」
そういうと、木庭さんが顔をしかめた。
「ちゃんと寝ろよ?」
「そうなんですけど…昨日の叩きが気になって」
「俺次第だな。今から見るわ」
会社は、チノパンやジーンズじゃなければ、カジュアルな服装でもいい。
木庭さんのファッションは好きだ。シャツにカーデ、細身のパンツ。一方部長は、ブランドのスーツをスマートに着こなしている。
「木庭さん、いつもかわいい格好してますよね」
「あ~? 褒めても仕事で甘い顔しねぇよ?」
「そんなつもりじゃないですよ!」
またやってしまった…!媚びてると思われたかもしれない。
二人でエレベーターに乗り、ボタンを押す。人付き合いの下手くそな自分にため息が出る…。
ちらりと木庭さんを見たら、じっと見下ろされていてどきりと胸が鳴った。
「髪。絡まってる」
「え…」
「ここ」
木庭さんの骨ばった手が近づき、小指で私の髪をすくった。
「解けた」
「あ…」
どきん、どきんと全身が心臓になったみたいに、締め付けられて声が出ないまま、エレベーターがポーンと音がなり、フロアに着いた。
「おはよーございまーす」
「おはようございます…」
木庭さんが歩く後ろをついてデスクに向かうと、部長席にはすでに部長が来ていた。
「おはよう。早いね。二人で出勤?」
悠然とにっこりとした余裕のある笑顔で、部長が顔を上げる。
「さっき歩道橋で会いました。部長もお早いですね」
「僕は昨日の帰りが早かったからね」
木庭さんと部長は軽妙に会話を続け、私は話に入らないようにしながらパソコンを立ち上げ、コンビニに行こうと財布を持って立ち上がった。
「あぁ…っ。だめです」
「何がだめなの?」
「誰かが来たら…!」
コンビニまで何かを買いに行こうとしてエレベーターを待っていたのに、すぐに部長が追いかけてきて、空き会議室に呼ばれてしまった。
ドアを閉めるとすぐに胸を揉まれる。会社でこんなことする人じゃないので驚いた。
「木庭に色目使ってるだろ? 木庭も玲のこと抱きたいと思っているはずだよ。よかったね…」
「あっ…!」
後ろから右胸をぐっと掴まれ、上にぐにぐにと揉まれてしまう。
木庭さんが?
そんなことはない。木庭さんは、部長とは違う。
「木庭さんはそんなことしないです。彼女いますし…」
「……僕も奥さんいるよ。そんなことしないって、こんなことする僕はどうなるの?」
「あーッ…」
両胸を丸出しにされ、机に座らされた。ブラジャーをさっと外され、パンティの中に指を入れられた。
「いや、部長、ここじゃいや」
「…すぐ済むから」
息荒く、カチャカチャとベルトを外す部長。
こんな人だった?
不利な体勢と、恐怖で逃げ出すこともできないままに、部長は私を机に押し倒し、怒張で私の奥を貫いた。
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