67 / 137
本当の家族 8
しおりを挟むベティーナの事を見捨てる覚悟をしてほしいと考えているのではないかと、フィーネは仮説をたてた。
そうであるなら、このタイミングでフィーネに会いに来て、そして血縁だと主張する意味も理解できる。彼女も同じ力と血筋の持ち主、王族に搾取される側だということをフィーネに強調して、協力を効率的に求めるためのマリアンネの行動なのかもしれない。
……そうなると、確かに真剣に考えなければならないわ。フィーネ。ベティーナは私とは道をたがえる。それにいつまでたっても寄り添ってはいられないわ。
こうして、警告しに来てくれる血縁がいてくれる、私にも血の繋がりのある人がいる。本来そういう人間と繋がって大切にしていくものだ。ベティーナとの関係性は、フィーネにとって重要ではない父を同じくしているだけの異母姉妹だ。ほぼ他人といっても差し支えない。
けれどもそれを分かっていつつも、フィーネは物事はそんなに単純ではないと、考え直す。暫く沈黙したフィーネの事をうかがうマリアンネににっこり微笑んで彼女の問いに真摯に答えようとした。
(読まなくて大丈夫)
「血縁というのはたしかに、重要視する点ね。それは私もその通りだと思う。それに、どうやら、この力は汎用性も高くて私の知らない多くの人から望まれているのだと思う。必ず必要で、それが人生にも関わるのだからより確実な方法でその恩恵を受けたいと多くの人が望んでいるはず、けれども血は途絶えて家はなくなった。でも後継ぎがいない事によって途絶えたと聞いていたのに教団には立派に成長した貴方がいる。つまりは、その上部組織と言い換えても問題のない、王族が何かしらの動きをしてことによる結果だと思うの」
ペラペラと言葉を紡いで、フィーネは続ける。
(読まなくて大丈夫)
「だから、同じ王族に権利を奪われることになる私と貴方は同じベクトルではなくとも、同じような損失を受けることになるのね。だから、そのことについて共闘して、立ち向かうためには確かにベティーナの存在は貴方にとって障害と感じるかもしれない。愛情というものがあったら、確かに、不安要素だと思うかもしれない。でもそこまで盲目ではないわ、私だって愛し方については考えることができるわ。それに、同じぐらいマリーを大切にしてくれるかという質問だったわよね。それはもちろん、同じ尺度をもってあなたにも接するわ、でも私思うのだけど、大切にするとは一体どういうことかという問題についてよ━━━━
「お姉ちゃん、簡潔に言って」
「…………ベティーナのことは、考えるわ。もちろん貴方のことは同じ血を持つ人間として接する」
なぜかマリアンネに説明を打ち切られて、簡潔にフィーネは整理して言った。しかし、これでは伝わらないと思うし、正しさに欠けると思うのだが、と少し不安になった。
マリアンネは、じっとフィーネの事を見据えて、それから、何故か腹に手を当てて、それから口を開く。
「私はベティーナより、大切じゃない?」
「大切の定義にもよるわね。重要視するべきと、考えたらそうするし……それになにより……私は多分、目の前にいる人の事を最重要視するわ。割と情に弱いのよ」
「……」
「だから、また会いに来て、貴方がどんな風に私に関わりたいのか教えて、あ、ハンス達に怪しまれない程度でね」
それに、人が人を大切にする要因として、血の繋がりや関係性ももちろん大切だが、それらは要素に過ぎず大切にしたいと思うだけの共に過ごした記憶が最も重要だと思う。
だから、仲良くなりたいと望むのなら、まずは会うことが重要だ。フィーネは持論だけどねと心の中で予防線を張って、マリアンネの反応をうかがった。
「会いに来れば、私を妹にしてくれる?」
「……妹にはできないけれど、家族みたいに大切に貴方に接することは出来ると思うわよ」
「ふぅん。……へー。お姉ちゃんって変わってる、こんなこと急に言われて、私のこと気持ち悪くないの」
「どうして? 何か筋道の通らない理論があったかしら」
「……」
フィーネは首をかしげて、何か考え違いをしていたかと考えを巡らす。
そんな彼女を見て、マリアンネは、自分がいかに非常識で、多くの場合に理解されない要望を言っているのかわかっていたので、当たり前のようにそう反応する従妹の姉を理屈っぽいのに、非常識だと言ったりははしないのだな、と不思議に思った。
それはそれで好都合であり、望んでいたことであるのだが、こうもあっさり受け入れられると、その後にこのマリアンネの事を大切にしてくれると宣言してくれた彼女に対する要望も特に思い浮かばなくて、出された華やかなお菓子を口にして「……そんなことなかった」とぽつりと言うのだった。
「そうよね。でもこうして来てくれて早速で悪いんだけど、なにか魔物の襲撃の原因になっていそうなこと知らない? 実はもう後ろ盾は手に入れることは出来ていて、後はそこに頼るだけなんだけれど、やっぱりベティーナの為に出来る事をやりたくて」
フィーネは最初から今まで、マリアンネがフィーネの状況を伝えてこの状況を打破するために、今までの質問ややり取りがあったのだと考えていたから当たり前にそんな話題を振った。
10
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します
珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。
そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。
それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。
さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる