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27 予期せぬ言葉
しおりを挟む今日のお散歩の予定はなくなってしまったがその件についてルイーザは一切フィオナ様を責めたりしなかった。
だって、彼女がルイーザの事を思いやってくれていることを知っているし、庭園に人がいてこちらをうかがっているような様子も見せていた。
外に出ようと今まで考えていなかったから、気がつかなかっただけで元からいたかもしれない。
そうだったら、いつか必ずそうなっていただろうと思うし、残念だけど気落ちしてしまっているフィオナ様の事が心配で今日は一緒に眠ることにした。
決してお昼に見た騎士様が怖くて、こちらを見る視線が忘れられないからではない。
あくまでフィオナ様が心配だからルイーザが一緒に眠ってあげるだけ。
そういう風に言い訳をして、ルイーザはベッドに座ってフィオナ様の事を待っていた。
彼女は昼の件があってからずっと深刻そうな顔をしたまま無言で悩んでいた、だから眠る時間になってもお風呂に入り忘れていたのだ。
そういうわけで眠る前にお風呂に入ってこようと、いつもより遅い時間に浴室に向かっていった。
フィオナ様が帰ってくるまでルイーザは暇なので、本を読んで待っていた。
するとノックの音がして、驚いて体が縮みあがった。部屋に待機していた侍女が外に出ていき、少ししてから侍女はノア王子殿下を連れて部屋の中へと入ってきた。
「あれ、君はいるんだ」
彼はベッドにいるルイーザを見て不思議そうに口にした。
それを見てルイーザはすぐにベッドから飛び降りた。もう夜も遅い眠たくなってきていたルイーザだったが、突然の来訪にすっかり目が覚めてしまう。
きっとフィオナ様に会いに来たけれど、彼女が今は部屋にいないので彼女を待つために部屋に入れてもらったとかそんなところだろうとあたりをつけつつ、前々から考えていたことを実行した。
「せ、先日はきちんとご挨拶できず申し訳ありませんでしたッ、私は、カルデコット子爵家のルイーザと申します、よろしくお願いします。ノア王子殿下」
少し緊張してどもってしまったけれど、ルイーザは小さくお辞儀をして、達成感に包まれた。
……前回会った時は突然すぎて驚いてしまったけど、次あったら必ずちゃんと挨拶をするって心に決めてたの!
それが予期せぬ形だったけれど達成できて良かった。
フィオナ様を通じてだけどルイーザはノア王子殿下のお世話になっている。ちゃんと失礼がないようにしないとならない、ルイーザはそのぐらいはちゃんとできる良い子なのだ。
そんな風に自分を褒めているとノア王子殿下は侍女に案内されてティーテーブルに座り、すこしだけ親しみやすいような笑みを浮かべた。
「そんなに固くならなくていいよ。私も突然現れて驚かれることはしょっちゅうだから気にしてないし、あ、そうだ。フィオナが来るまで暇だから君、話し相手になってくれる?」
突然の提案にルイーザはやっぱり驚いてしまう。
だってきっとフィオナ様を欲望のはけ口にするためにこんな時間にフィオナ様のお部屋に来たはずだ。だから寂しいし心配だけどルイーザは何も言わずに粗相をしないうちに自分のお部屋に帰るのが当たり前だと思っていた。
しかし呼び止められたからには拒否することはできないし選択肢にない。
「……はい」
けれども何と言ったらいいのかわからずに、ルイーザは彼と向かいの席に座った。
「……」
落ちてきた桃色の髪を耳にかけて正面からノア王子殿下と向き合う、彼は不思議な雰囲気を持っているとても高貴な身分の方だ。
フィオナ様とルイーザを助けてくれた良い人、でも怖い大人で欲望を持った男の人だ。
敬うべきではあるけれど素直にフィオナ様に会いに来たことについて嬉しいとは思えないのは自然な事だろう。
なんせ彼女は今日はとても思い悩んでいる様子だった。
あまり負担をかけるのは可哀想だ。
ルイーザがフィオナ様の今日の様子を伝えようかと考えていると、ふとノア王子殿下が先に口を開いた。
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