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バーベキュー大会……? 5

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 最初は教師達も体面を保って、朗らかに談笑しながら、美味しいのお肉に舌鼓をうっていたが、段々と時間が経つに連れて、暑い気温のせいか、はたまたイベント事にあまり慣れていないせいか、会場はどんどん賑やかな居酒屋のようになって行った。

 私は何となく性分から、教師達の接待というか、小間使いというかをして、お酒を運んだり料理を運んだりしつつ、教師ってこんなに居たんだなぁと思う。

「お前はいいぞお、見込みがある!!」
「左様ですか、ありがとうございます」
 
 ニコニコして、バイロン先生の相手をしているヴィンスはお肉をちまちまと食べながら、酔っ払った彼の話をうんうんと聞いてあげていた。

「クレアさん、クレアさん!悪いねぇ、こんなに楽しませて貰っちゃって」

 謎のおじいちゃん先生達の元に発泡酒を運んでいくと、謎に手に金貨を握らされる。先程から断ろうと思っているのだが、だいぶ押しが強いので、今では「ありがとうございます」と言ってポケットにしまっていた。

「先生方はあまりこういった飲み会をしないんですか?」
「そ、そうさねぇ、やった事あるかな?」
「さぁ、俺はここに来てから一度だって君らと飲みに言ったことなんか無いな」
「そもそも、学園街に行くのも面倒だからな」

 お酒であまり頭が回っていないのか、皆ぼんやりとしながら、あんまり無いなぁと答えてくる。
 
 まぁ、皆逃亡者だとするならばそんなものだろう。距離だって縮めづらいだろうし。

「そうなんですね、オスカーがまだまだ宴会の用意があるって言ってましたから、気長に楽しんでいってください」
「ああ!悪いな!」
「ありがとう、クレアさん」

 ニコニコした先生たちは再度乾杯して、ごくごくをお酒を煽る。

 私は適当に会場を見て回るように、テーブルの周りをウロウロとし始める。

「君、この今日出ている発砲酒はどこのものかわかるかね」
「はい?」

 ふと呼び止められて、考えて瓶を見てみるが、私が酒屋で購入していたものとは別物のようでそういえば勝手にあったなと思う。

「う、うーん、どこのでしょう……」
「そうか、すまないな。君はまだ飲める年齢では無いな。気にしないでくれ」
「あ、はい」

 そういう事を加味してくれるのは、ありがたい。分からないから仕方がないとその席を離れようとすると、ふらっとオスカーがやってきて、一人で飲んでいた教師と私に声をかける。

「俺、分かりますよ、というか、クレアに相談されて卸して貰ったの俺ですから、商会の名刺置いておきますね」
「ああ、助かるな。私はあまり街にも降りなくてね、酒には詳しくないんだ、こうして良いものが知れて嬉しいよ」
「ありがとうございます、どうぞご贔屓に」

 彼は珍しくその教師にニカッとさわやかに笑いかけた。その表情は好青年そのものであり、とても好感が持てる。

「オスカー!!どこいってんの!!僕の友達だって皆に紹介するんだから!側にいてよ!!」
「おう、悪いな」

 ディックの何だか、甘えたような声がして、彼の方を見ると、身内なのか、物腰の柔らかい壮年の男性と共に居た。他にも数名の教師が周りを囲んでいる。
 オスカーは早足にディックの元へと向かって、彼と肩をくみ、笑いあった。

 ……ディックのお父さんかな?

 そう思ったのは、その男性が、彼によく似たふわふわとした茶髪をしていたからだ。オスカーと仲良くじゃれ合う姿をとても嬉しそうに見ている。

 ……楽しそうで良かったよ、ディック。まぁ、オスカーも楽しそうではあるのだが、先程の会話を聞いている限り、彼はちょっと営業しているのだろうと思う。

 まったく持って抜け目無いな。キレやすいし、不憫な目にあっている事も多いが、本当にいい意味で図太い人だと思う。

 それから特にトラブルがない事を確認して、私はヴィンスの側へともどる、そのテーブルには最初に来た、ベラとブレンダ先生、バイロン先生がいるのだ。

 私が戻ってくると、いつもは引っ詰めている髪を少し崩したブレンダ先生が「おかえりなさい」と頬を緩めた。

 バイロン先生は酔いが回りきって、テーブルに突っ伏して眠ってしまっていた。

「戻りました。ヴィンス、バイロン先生はもうダメそう?」
「ええ、相当なペースで飲まれていましたから」

 そこまで言って私の耳に顔を近づける。それからコソッと言った。

「ブレンダ先生の酔った姿が、余程応えていたようです。先生を見ないようにひたすら私に色々話されていました」

 ヴィンスは楽しそうにそう言い、ふふっと笑う。言われてみて、納得だ。普段から目線だけで、生徒たちに恋愛感情がバレてしまっているような人なのだ。それだけ一途な彼がこの状態のブレンダ先生を見て、平気なわけが無い。

 ……でも、せっかくチャンスなのにねぇ、飲みに誘う勇気がないのなら、こういう所でモノにしなければ、いつまでたっても発展しないものだ。

「難儀だね、好きならグイグイ行けばいいのに」
「……どうでしょうか、私は、バイロン先生のお気持ちもわかる気がしますよ」
「そう?」

 私たちがコソコソと話をしていると、ブレンダ先生はピシッと私を指さして言う。

「なんですか!そこ!私語厳禁!っ、じゃなくて、内緒話ですか?寂しいですね」

 教師の部分と、女性らしい部分が入り交じって、妙な事を言う先生に苦笑しつつ、私は先生の方を向き直った。

「いいえ、ただいつもと違う先生が素敵だねって話していたんです、ね、ヴィンス」
「ええ、いつもはとてもきっちりとしたまとめ髪なので、こういう崩した姿は新鮮で」
「ん、ええ、そうですね。生徒にこのような姿を見せることも……まぁ珍しいですね」
「そうよ、姉さん。まだこの子達は多感な時期なのだから、きっちりしておこうと言ったのは貴方ですよ!」
「そうでしたね。随分昔の事を覚えているのね、ベラ」

 少し顔を赤くしたベラも、暑いからかボタンを少し開けている。
 
 ……というか……姉さん?確かに似ているとは思っていたが、まさか姉妹?

「えっと、二人は、もしかして」
「あら、外見で気がつく子も多いのですけど、姉妹ですよ、ベラとは」
「そうよ、だから、あなた達の事も密に報告していますからね!まったく、クレアは毎度、毎度、寮でも消灯時間は守らない、他人の部屋に寝泊まりする、素行不良を何度姉さんに話したことか!」
「ええ、ええ、貴方は本当に頭の痛い生徒です」
「あはは……ごめんなさい」
「まったく」

 心当たりが多すぎて反論も出てこない。ぎこちなく笑って、ジュースを一口飲む。




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