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私も大概、トラブルメーカー……。10
しおりを挟む「……」
無言で怒っている、サディアスと目が合う。
オスカーはディックをなだめて落ち着かせて「信じてたぞ」と笑っているのにえらい違いだった。
いや、私が悪いんだけどね。
「ごめんなさい」
「……」
「怒ってる?……よね?」
「……」
「……」
「……はぁ……説明しろ、すべて全員がわかるように」
「はい」
下ろされて、しょんぼりしつつ、取り敢えず元の席へと戻る。
シンシアとチェルシーは苦笑を浮かべていて、何となくいたたまれなかったが、魔法玉をテーブルの上に置いて私は改めて、皆を見回した。
「……えっと……改めて……お騒がせしました。ごめんなさい。説明ちゃんとしたいんだけど……私がさっき言った事がすべてって言うか。それ以上の事は私にも分からくて……なので、質問形式でもいい?」
「……はぁ……構わない。挙手制にしよう」
どうせ上手く説明できないし、なんなら怒り心頭のサディアスに見つめられながらだと、しどろもどろになってしまうので提案した。
すると早速オスカーが手をあげる、ピッとオスカーをさすと、彼は少し言いづらそうに首を摩りつつ言う。
「……その前に、さっきのポーズ何だ?」
「……その質問には返答を控えさせていただきます」
「オスカー、関係ないことを聞くな、ただでさえ今は話が散らかっている」
ジャパニーズ土下座は、やはり彼らにはまったく馴染みが無いらしく、変なポーズを突然とりながら謝罪をした事になってしまい今更ながら恥ずかしい。
というか、サディアス、今日はあんまり無理してない感じがする、なんだろう、オスカー相手だからか?確かに気軽な仲だけれども。
「……喋ってもいい?」
睨み合うオスカーとサディアスにディックがおずおずと手をあげる。サディアスは片眉をあげて反応し「構わない」と言う。
「僕が話をしようか?君のその固有魔法、冷静になれば少し検討がついて……きて、いるような……いないような」
曖昧にそう言い、私とサディアスを交互に見た。私がうんうんと頷くと、サディアスもそれを見て首肯する。
「……じゃあ、オスカー、あの時の魔法、使っててね」
「お、おう?」
ふー、と息を吐いてディックは目を瞑る。それから開いた、サーチを使う時は、いつも瞑っているものだと思ったけど、そうでも無いのかな?
ディックはぐっと口を引き結んで、眉間に皺を寄せる。その表情は苦しげで目を瞑ってしまいそうなのを必死に我慢しているようだった。
それを見たオスカーは、はっと気がついたように魔法を使い、肩に手を触れる。すると少し楽になったのか、無言でじっとディックは、私を見つめた。
「……」
私の魔力が自分の魔法玉からするすると抜けていく。現在も魔法を起動した状態で特に込めているという訳でも無いのに、ズルズルと熱が引っ張られていく。
その相手は多分ディックにだ。
「……っ……はあっ、…………わかったよ君の固有魔法」
「ほ、本当?」
「うん……これは相当、ややこしかった。君は一体、なにを望んだらこうなるの」
「ディック、全員にわかるように言ってくれ」
魔法を弱めて、ディックは頭を抱える。サディアスに言われて少し考えを整理した後、私たちチームみんなに向けてディックは言う。
「クレアは多分、望んだ相手を強化する魔法だよ。条件は、クレアが望んで僕にしたみたいにコアに触れる事」
「それは……」
「うん、クレアは相変わらず一人で戦えない。固有魔法は適正があればすぐに固定されるから、クレアと話し合った方がいい。クレアの魔法は分の悪い賭けだよ」
チェルシーがゴクッと唾をのみ、サディアスは頭を抱えてしまった。
……確かに願った。私が望んだ魔法だ。
他人を補うということは、私の欠点はそのままだ。一人では何も出来ない。
葬式みたいな雰囲気になったこの場で、それでもディックは、いつもの調子を取り戻したらしく、キュッと口角をあげた。
「今回僕は巻き込まれただけだからね、本当ならサーチしてあげるだけで、大サービスなんだけど……もうひとつ、助言を聞きたい?」
そう言って私を見る。
「き、聞きたい!」
「えー、どうしようかな……僕、君のせいで醜態を晒したしなぁ」
「お願いっ」
私がパチンと手を合わせて頼みこむと、ディックはさらににっこり笑って、口を開こうとする。と、その瞬間に、オスカーがディックの肩をポンポンと叩いて、じっと睨んだ。
ディックがビクッと跳ねて、しょぼしょぼとしぼんでいく。
余程、オスカーに普段から怒られているのだろう。
「……効果はすごく高いよ、長年使っていたように完成度が高い。クレアはちょうどよくリーダークラスだ。使いようによっては化けるかもね。それだけ」
言い終わってディックは席を立つ。それからオスカーの手を引いた。
「行こう、あとはチームで話をする事だよ」
「ああ……サディアス、邪魔をしたな。健闘を祈ってる」
「こちらこそ、疑ってしまってすまないな。助言感謝する」
最後までサディアスとオスカーはバチバチと睨みを利かせあいながら、部屋を退室して行った。
残されたのは私たちだけで、ただひたすらに重たい沈黙が辺りを包んでいた。
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