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私も大概、トラブルメーカー……。1

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 今朝方、昨日我流セラピーでサディアスを寝かしつけたせいか、彼はまたサンドイッチを持って私の部屋に来た。それはいい。

 ヴィンスがお昼ご飯を用意してくれないので、少し面倒に感じていた昼食まで賄えるサンドイッチをとっても喜んだ。そのまま私は大事なことを忘れたまま登校した。

 サディアスと一緒に登校すると、既にヴィンスは居て、相変わらずの傷心っぷりだった。そして問題はチェルシーである。

 まだ彼女の何とも言えない表情が忘れられない。

「それでさ、私って本当になんというか、節操がない女だと思われたんじゃないかって」

 頭を抱える私に、ディックはさして興味が無いといった感じで「ふぅん」と返す。

「それ以前に、ありえないよね。忘れてたんだよ?そりゃ、サディアスとは……話をしなければならなかったし、毎回恒例行事というか、メンタルヘルスと言うか……」
「どーでもいい。きょーみない」
「そ、そんな事言わないでよぉ、ディックと私の貴方の仲でしょー!」
「どんな仲?僕は別に君の悩み事なんて聞いてあげる義理もないんだけど」

 ……し、辛辣っ。

 ディックの反応に寂しく感じつつも、隣にいてそんな風に言いながらも話を聞いてくれているということは割と嬉しい。

 ギィィンッ!!
 
 金属が強くぶつかる音がして、オスカーと、元リアちゃんのチームメイト女子との決着がつく。
 オスカーはサポーター、相手はアタッカーだったのでオスカーが負けると思っていたのだが彼は案外、攻守のバランスがよく、隙がない。

 それが勝敗を分けたのだと思う。

「……すごいねオスカー」

 私がそういうと、ディックはこちらをちらりと見て、ふんっと目をそらす。

「当たり前だよ。僕のチームメイトだし」

 私はそういった彼の顔が少しにやけていたのを見逃さなかった。ディックはすこし天邪鬼な性格をしているが、オスカーに対してはとても素直だ。
 
 オスカーは女子生徒と握手をして、互いに少し顔を綻ばせて話をしている。

「……オスカーの事、信頼してるんだね」
「してない……別に」

 ……うーん、してないんだね。
 
 いじり倒して、追求したい気持ちもあったがそれで二人の仲がこじれたら面倒なので、それ以上話をする事は無い。

 さてね、私のチームメイト達はどうなってるかな。

 大きな練習場を見回す。

 今日は、待ちに待った固有魔法の授業の日だ。
 この授業だけは、クラス内のチーム混合で作られたグループで行うことになっており、それぞれ普段接する事の少ない別チームの子達と練習試合をしつつ自分たちのグループに、ブレンダ先生が回ってくるのを待っている。

 グループは、ブレンダ先生が適当に作成したもので、私はチームメイトとはぐれて一人になってしまったが、ディックとオスカーがいたので話し相手に困ることは無かった。

 今ブレンダ先生が教えているグループでは、炎が上がったり、水が出たり、打ち合っている子達がいたりとカオス状態だ。ちなみにシンシアとチェルシーもそこに居て、彼女たちはひたすら模擬戦をしている。

 遠目から見てもチェルシーの猛攻は素晴らしい。彼女の動きはなめらかで重力を感じさせない。シンシアはディフェンダーと言うだけあって、その攻撃にもビクともせずに耐え忍んでいる。

 ……?あれ、でもなんか盾の魔法……形が少し違うかも。

 固有魔法だろうか、回復だったり盾だったり、火だったり水だったり、固有魔法と言うのは本当に幅が広いらしい。

 チェルシーやサディアスは、どんな魔法になるのかな。

 少し気になってサディアスとヴィンスのいるグループに目をやる。彼らは壁際に二人並んで何やら重たい表情をしている。

 サディアスは片手で水を生み出し続けているのが、これまたシュールだ。

 ……しかし、ヴィンスは私とは話をしてくれないけれど、私以外と話をするようになった。自分一人で判断に困っているという事は無いようで、多分ヴィンスの中には、ずっとちゃんと自分の考えがあったのだと思う。

 ヴィンスが何をしたいのかっていうのは今でもやっぱり変わっていないのかな。
  
 私が眺めているとサディアスが急に水をびゃっと吹き出す。……本当に何話してるんだろ、気になる。

「君たちって本当に、忙しいね」

 隣にいるディックがぽつりと言う。なんの事だろうと首を傾げて彼を見ると、彼は左右にユラユラ揺れた。

「喧嘩したり、落ち込んだり、決闘したり」
「……まぁ、そうだね」
「あのクラリス様がこんなに情緒的な人だとは……僕も思ってなかったけど」

 そういえば彼は、それを知っているんだった。私はクラリスじゃないと言いたかったけれど口を閉ざす。

「恋愛とか、嫉妬したりも……その忙しさの範疇でしょ」
「……どういう意味?」

 ディックの言いたいことが分からなくてさらに首を傾げる、するとディックは口をへの字にして、クルクルモコモコの自分の髪をぎゅっと握って言う。

「君達の問題なんて日常茶飯事なんだから!いちいち悩んでたら、頭なおかしくなるぞって……いってんの」
「……もしかして、さっき私が言ってたこと?聞いててくれたんだ」
「聞いてないっ」
「ありがとね」
「知らないっ」

 ディックは私をキッと睨んで、いかにも自分は怒っているとばかりに腕を組んだ。ものすごく回りくどい言い方だったが、それほど落ち込むなという意味の言葉だったと受け取っておくことにしようと思う。

 ……何だかディックを見てると、思春期を感じるね。年相応って感じがして、学校って感じがする。

「おーい、終わったぞー!ディック!クレアと喧嘩してないだろうな」
「してないっ!喋ってないっ」

 オスカーの軽口に完全に嘘で返すディック。私は見守るような心地で二人を見つめる。やいのやいのと二人は話し始めて、その後ろを同じグループになった二人の女子が少し気まずそうに着いてくる。



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