50 / 305
前途多難……。2
しおりを挟む自分で言っておいて気まづくなる、するとサディアスが少し思案して、私に助け舟を出してくれる。
「いいんじゃないか?団体戦は多くの場合リーダーがカギを持ち、攻撃の標的になる。基本的には、クレアを守りながら戦うが、それが手薄になって、クレアが逃げ回らなければならない事態もあるだろう。圧倒的に戦力差のある相手から、狙われ続けるというのは心労がかかる。しかしクレアは、昨日の決闘を見る限り、肝だけは座っているだろう。諦めないという事に関しては、俺はクレアを買っている…………それに、クレアに相手チームが注目している隙に、俺たちは、カギを取りに動ける。クレアをリーダーにするのは、利点が大きい」
カギというのは確か、団体戦特有の勝敗の付け方だ。チームに一人それを体の見える場所につけている人がおり、それを他チームに奪われるもしくは奪えば勝敗が決するということだ。文字通り勝敗を分ける“カギ”となるのだ。
しかしサディアスの言い方では、私がリーダーになれば攻撃の囮になって便利!といってるように聞こえる。存外酷いことを言ってくれる。
彼の説明に、二人は一応納得したような表情を見せた。
「サディアス様がそう仰るのでしたら」
「そうですねっ、リーダーは確かに標的になる、余程の精神力がなければ務まらないですから!流石ですっサディアス様」
チェルシーがペンを取り出してリーダーのところに私の名前と既にサポーターに決まっているヴィンスの名前をそれぞれの欄に書き込んだ。
「……サディアス……様」
私はサディアスに声をかけようとして、思わずまた反感を買わないようにと敬称をつける。
するとサディアスは、ギクッと嫌そうな顔をして、ぎこちなく作り笑いをうかべた。
「俺たちは同じチームだ、出来れば敬称は付けずに呼んでくれると嬉しい」
チェルシーとシンシアに向かってそういい、それぞれの名前を呼ぶ。するとまた「サディアス様がそう仰るのだったら」という具合に二人は納得する。
「それから、俺は最初の試合ではまったく結果を残せなかったが、アタッカー志望だ、二人はどうだ」
そう問いかけられて、チェルシーは、決定事項とばかりにアタッカーの欄にサディアスの名前を記入する。
けれどやはり二人とも自分のポジションについては言及しない。
「……私から決めるべきだと言っておいて申し訳ないのですけどっ、今日一日、時間をください。少し考えたいことがあるんです!」
思い切ったようにチェルシーがそういい、シンシアもその方がいいと思ったのか、何も言わない。
「わかった、俺たちの授業が遅れているのは今更だからな。ポジションは明日決めることとしよう……ただし、教室の掃除当番、日直、の役回りは今日中に決めていいか?」
サディアスは自分のカバンの中からバサッと紙束を出す。
「チームごとにクラス内で役回りが回ってくるが、それぞれ誰がやるのか決めておこう。ちなみに一周目は既に回ってきていていてな、すべて俺がやったが」
そんな役回りがあったとはゆづ知らず、私は知らぬうちにサディアスに仕事を押し付けてしまっていたらしい。そしてそれはチェルシーもシンシアも同じなようで、すっと彼から二人とも目を逸らした。
「それから、チーム練習の場所取りやら、武器の貸し出し、教師への俺たちのチームの状況説明、あぁ、クレアは俺に決闘の手続きまでさせたな?」
サディアスは笑みを深めて、それからイラつきからか、机を人差し指でカッカッとノックする。
「すべて君らが、仲違いを起こしていたせいだとは、言いきらないけどな、俺は」
……確かにサディアスから見ればそうなんだろうな。ヴィンスはまったく協調性がなく、私は訳あり、ほか二人は私を辞めさせるために画策。
「……何か言うことがあるだろ?」
「申し訳ありませんでした」
「本当にご迷惑お掛けしましたっ!」
「ごめんさない」
ヴィンス以外の全員がただ一人で真面目にやっていたサディアスへと謝罪し、しばらくの間は四人で当番を回すこととになった。
1
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
悪役令嬢の居場所。
葉叶
恋愛
私だけの居場所。
他の誰かの代わりとかじゃなく
私だけの場所
私はそんな居場所が欲しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。
※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。
※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。
※完結しました!番外編執筆中です。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる