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前途多難……。2

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 自分で言っておいて気まづくなる、するとサディアスが少し思案して、私に助け舟を出してくれる。

「いいんじゃないか?団体戦は多くの場合リーダーがカギを持ち、攻撃の標的になる。基本的には、クレアを守りながら戦うが、それが手薄になって、クレアが逃げ回らなければならない事態もあるだろう。圧倒的に戦力差のある相手から、狙われ続けるというのは心労がかかる。しかしクレアは、昨日の決闘を見る限り、肝だけは座っているだろう。諦めないという事に関しては、俺はクレアを買っている…………それに、クレアに相手チームが注目している隙に、俺たちは、カギを取りに動ける。クレアをリーダーにするのは、利点が大きい」

 カギというのは確か、団体戦特有の勝敗の付け方だ。チームに一人それを体の見える場所につけている人がおり、それを他チームに奪われるもしくは奪えば勝敗が決するということだ。文字通り勝敗を分ける“カギ”となるのだ。

 しかしサディアスの言い方では、私がリーダーになれば攻撃の囮になって便利!といってるように聞こえる。存外酷いことを言ってくれる。
 彼の説明に、二人は一応納得したような表情を見せた。

「サディアス様がそう仰るのでしたら」
「そうですねっ、リーダーは確かに標的になる、余程の精神力がなければ務まらないですから!流石ですっサディアス様」

 チェルシーがペンを取り出してリーダーのところに私の名前と既にサポーターに決まっているヴィンスの名前をそれぞれの欄に書き込んだ。

「……サディアス……様」

 私はサディアスに声をかけようとして、思わずまた反感を買わないようにと敬称をつける。
 するとサディアスは、ギクッと嫌そうな顔をして、ぎこちなく作り笑いをうかべた。

「俺たちは同じチームだ、出来れば敬称は付けずに呼んでくれると嬉しい」

 チェルシーとシンシアに向かってそういい、それぞれの名前を呼ぶ。するとまた「サディアス様がそう仰るのだったら」という具合に二人は納得する。

「それから、俺は最初の試合ではまったく結果を残せなかったが、アタッカー志望だ、二人はどうだ」

 そう問いかけられて、チェルシーは、決定事項とばかりにアタッカーの欄にサディアスの名前を記入する。
 けれどやはり二人とも自分のポジションについては言及しない。

「……私から決めるべきだと言っておいて申し訳ないのですけどっ、今日一日、時間をください。少し考えたいことがあるんです!」

 思い切ったようにチェルシーがそういい、シンシアもその方がいいと思ったのか、何も言わない。

「わかった、俺たちの授業が遅れているのは今更だからな。ポジションは明日決めることとしよう……ただし、教室の掃除当番、日直、の役回りは今日中に決めていいか?」
 
 サディアスは自分のカバンの中からバサッと紙束を出す。

「チームごとにクラス内で役回りが回ってくるが、それぞれ誰がやるのか決めておこう。ちなみに一周目は既に回ってきていていてな、すべて俺がやったが」

 そんな役回りがあったとはゆづ知らず、私は知らぬうちにサディアスに仕事を押し付けてしまっていたらしい。そしてそれはチェルシーもシンシアも同じなようで、すっと彼から二人とも目を逸らした。

「それから、チーム練習の場所取りやら、武器の貸し出し、教師への俺たちのチームの状況説明、あぁ、クレアは俺に決闘の手続きまでさせたな?」
 
 サディアスは笑みを深めて、それからイラつきからか、机を人差し指でカッカッとノックする。
 
「すべて君らが、仲違いを起こしていたせいだとは、言いきらないけどな、俺は」

 ……確かにサディアスから見ればそうなんだろうな。ヴィンスはまったく協調性がなく、私は訳あり、ほか二人は私を辞めさせるために画策。

「……何か言うことがあるだろ?」
「申し訳ありませんでした」
「本当にご迷惑お掛けしましたっ!」
「ごめんさない」

 ヴィンス以外の全員がただ一人で真面目にやっていたサディアスへと謝罪し、しばらくの間は四人で当番を回すこととになった。



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