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しおりを挟む問いかけると、彼は瞬きをしてちらと視線を逸らす。
滑剤を掬いとって後孔にあてがった。
「ひでぇ事すんの?……っ」
ぐぷり、と中に指を埋めれて、体が強ばる。
一本だけならそれほどきつくないで受け止められるようになって来た、まだまだ慣らさなければ玩具なんかは入らない。それでも、体は少しずつ行為に慣れてきている。
「酷くするつもりは無いが……なるかもしれないな」
「……っ、ぅ。どっち、だよ」
「あぁ、すまないね。キチンと慣らせば問題ないはずだ」
「なに、が」
「……」
答える気がないらしく、指を抽挿されて、膝が震える。
緩く持ち上がった俺の性器を反対の手でしごく。
普段はこんなすぐに触ってくれないのに、どういう風の吹き回しだろう。
「ッ、う、あぁ……ヴァれ、る、すぐ、イきそ、っ!」
「いいよ」
「あくっ、はっ、う、ん」
そうは言われても、まだまだ始まったばかりで、どうせイっても終わらないと思うので、できる限り我慢する。
大きく呼吸をして何とか、快感を落ち着けようとしていれば、見かねたヴァレールは、指を増やして、深く奥まで挿れる。
「ゔ、っ……まだぁ、っ!キツっ、あぅ、ン、っ」
それから腹の裏側を擦るみたいに出し入れされて、排泄感と前に与えられる刺激にすぐに精を吐き出す。
「ッつ~~!!……っ、くう、はぁ」
タオルで拭き取られて、余韻に浸っていると、すぐに前立腺を刺激するようにトントンと気持ちいい場所を突かれて、声をあげる。
「あ゛あっ!?っ、あ、つぅ、う!、ん、ン」
「気持ちいいね」
「ぐぅ、っ。……良い、けどっ」
無理やり攻められるのはいつもの事なので、できるだけ快感を逃がして、きつく目を閉じる。
腰が引けて、シーツを掴んだ。
「はっ、うぅ、はぁ……、はっうぅ……」
「指を増やすよ、力をぬいて」
「ん、ン……うぅう゛」
相変わらず力の抜きかたは分からないけれど、息を深く吐いておく、すると、入口を押し広げて指が侵入してくる。
入ってきた指に押し出されるように、呻き声が漏れた。
もっと愛嬌のある声で、喘げたら良かったがそんな事を言っている余裕はない。
「……こんな細い体に、自分のものを突き入れるなんて、壊してしまいそうで、今までしてこなかったんだ」
「っあ……はぁ、っ、くうっ、ううっ」
「今日も、指だけでこれでは……諦めた方が無難かな」
乱暴に出し入れされて肩を丸めて異物感と、前立腺を擦りあげられる快楽に耐える。
でも、いつもなら、そんな事言わねぇだろ。口に出さねぇだろ。
第一にそういう風に見てくれていたのだと思うと嬉しい。
痛いのは嫌だと思ったが、そういう事なら話は別だ、きつくても、良い。
「っつ!……っあ、ゔぁ、れーる。いい、から、っうあ、。あくっ、……はぁ、きもちい、から」
「……今日は、余裕が無い。逃がしてあげられないよ」
「っ、ははっ、ンン、っぁ、いつも、だろ」
一度だって逃がして貰えた事など無い、それでも、壊れていないのだから安心して欲しい。こう見えて俺は頑丈にできているんだ。
俺の言葉に、彼は苦笑して、内腿にキスをする。
それから指を引き抜かれて、うつ伏せで膝を立てるような体制を取らされる。
既に膝が笑って、上手く体勢を保てない。背中をゆっくりと撫でられて、ぞわぞとして顔から火が出そうだった。
今から犯されるのに自ら、こんなポーズを取っていて、それを心待ちにしている自分にどうしても羞恥心が勝って彼の方を首だけで振り向こうとすると、ガチと音がして、主人の指輪が奴隷証へと触れる。
『解除』
カシャと音がして、俺の首から、それが滑り落ちた。
「あうっ」
無防備になった項を舌が舐められて、彼の顔など見ることが出来ずに、シーツに顔を埋めた。
軽く歯を立てられただけで、いつかのプレイを覚えているのか、自分のモノが熱を持ち始める。
「挿れるよ」
耳元でそう聞こえて、思わず待ってと言いそうになったが、同時に唇を強く噛んだ。
熱くて、玩具など比べ物にならない圧迫感のものが押し入ってくる。
「ッ゛っ、……っぁぁ」
体を引き寄せて、反射的にその行為から逃れようとすると、背を手で押されて、その場所に縫い止められる。
動け無くなると、ゆっくりと俺の中を押し広げてそれが突き入れられる。ほんの数センチ進んだだけで、自分の体の内部を差出している実感が湧いてくる。
自分の中身も紛うことなく、血の通った人間で、殺した人間達のように大事な器官が沢山詰まっているのだ。
それは骨で守られていなければ柔らかくて、壊れやすい。
危機感を感じて体が硬直する。
下手に動けば、死ぬかもなんて思った。
「ッ、ははっ、あぁ……きついな」
「ッぐ、……っ!ふ……、ぅう」
ヴァレールの声だ、いつもより、少し荒っぽい気がする。
彼の声が聞けた事が嬉しくて、圧迫感に押し負けてアホになっている俺の感情は、箍が外れて涙をこぼした。
背を舐められ、少し強く項を噛まれる。目の前には白いものがぱちぱちと弾けていて、それと同時に、ヴァレールが容赦なく、全てを押し入れるのでだらしなく開けっ放しにしていた口から声が漏れる。
「アァ、あぁぁ、っはぁ、ううっ、あ」
「ん、これで全部だ、偉いな、シリル」
「ふっ、あう」
褒める気があるのかないのか、後ろから俺の口に指を入れて、舌を挟んで引っ張る。
「あうう、うぇ。ぁえ」
「声を出している方が、楽そうだ。そのまま、身体を預けて」
「はっん、あぁっ、ゔぁれる」
「ッ……、はぁ、動くよ」
熱いものが引き抜かれ、滑剤で滑りが良くなっているおかげか、痛みは無いが、刺激が強すぎる。
セックスというのはもっと微睡むように気持ちがいいだけのものだと思ったが、そうでも無いらしい。前後不覚になってしまいそうな程の体を掻き乱す感覚と、誰かと繋がっているという違和感。それと同時に相手に対する愛情があってこその、お互いが相手の事を感じていると強く感じる幸福感。
感情が降り混ざって、また押し入ってくる性器に感情が追いつかず、嬌声をもらす。
「ああっ、っア、はあ。っ、ヴァ、れーる」
「ん、なんだい」
「ッ、あたま、っ、あぐ、うぅぅ」
「撫でればいいのかな」
髪を掬い上げるように、優しく撫でられて、やっぱりこうして撫でられるのが好きだと思う。
こんなにたくさんの感情が渦巻いているのに、それだけは素直に感じて、気持ちいいと思う。
ゆっくりと抽挿されていたのが、段々と早くなって、圧迫感から、奥を突かれて、内壁を擦られるのに言いようのない感覚が強くなる。
気持ちいいと言うには、複雑すぎて、ただただ教授して身をふるわせることしか敵わない。
「ッンん、っ、あ、っはぁ、くっ」
「少しっ……慣れてきたな」
体の緊張が溶けてきたと察すると、俺の性器に手を伸ばす。強すぎる感覚に感じる事が出来ていないので、反応はしていないが彼の手が触れた事によって意識が集中する。
ッ、ダメだ。触られると、多分。変なことになる。
直感的にそう感じて、彼の手を制す。
「やめっ、だめ、むりっ、ごめんな、さい」
「……どうして、気持ちいいに越したことはないだろう。無理をさせている、自覚はある」
「だけどっ、怖ぇ、から」
腰をゆすられ、内蔵がかき混ぜられるような感覚に蹂躙されながらも、必死で彼の手を掴んだ。
確かに、気持ちいい方がいい、けど。それだけじゃない、こんな状態で、これが気持ちいいんだと体が知ってしまえば、後ろを突かれている感覚が全部、気持ちいい事に変わってしまえば、どうなるか分からない。
「大丈夫だ、シリル。イかせてあげるから、今日は妙な加虐心を向けたりしない」
俺の言葉を虐められるのが怖いと解釈したらしく、弁解して、緩く触れる。
鈴口に指をはわせて先走りを亀頭に塗り広げる。
ゆるゆるとした快楽が広がって自分のものは簡単に熱を持つ。
震える手では彼を制することは出来ずに、快感が腰に伝わってビリビリと気持ちいい。膝が震えて、つま先をぎゅうと握った。
「ああぁ!っやだ、いや、っ、あうっ、あ、あっ」
「ちゃんと感じているね、良かった」
止まっていた抽挿を再開されるが、先程と違って奥を軽く突くだけの行為はいとも容易く、言い様のない感覚から、快楽へと置き換わる。
気持ちいいというものがどんどんと腹の底に溜まって行って、強く動かれても、鞭を打たれて感じた時と同じで、電気を流されるようにそれが全身に伝わり力が入らなくなる。
「くぅっ、う!っあ、ああっ、くひっ」
「中でも感じて、っ、君の好きな場所、擦ってあげよう」
彼は急に少し向きを変えていつも弄る前立腺を擦りあげるように腰を動かす。
「え、ぅ、……やっ、あ、?んあっ!!」
何がどうなったのか分からないほど、気持ちが良くて、腹に変に力が入ったまま射精感がないのにすぐに達してしまう。
「あ?っう、え、んだ、これっ、!はぁ」
「さぁ、な、っ、そろそろ、私も」
ぐぷんとまた熱く大きなものを突き入れられて、中を抉られると、痛みも一切なく、快楽に嬲られているように声をあげる。
「あうぅ゛っ、うう!っあっああ」
前を擦られ、射精をしていないせいか全く萎えていない自分のものは異常なほど気持ちよく、抵抗しようと手を伸ばせば、肉のついてない下腹を掌で力任せに押し込まれる。
そうされると、中が圧迫されて彼のものが鮮明に自分の中にあると思えた。そしてそれが与える快楽も一層大きくなる。
ごりごりと、前立腺を刺激されて、足を動かせる限り動かして快楽を逃がすのに、まったく意味をなさずに体が震える。
「ああ!、っか、ふぁ、うう!っん、んんっ」
「っ、」
熱いものが脈打って、腹の中に熱を広げる。同時に強く擦られ、自分も、やっと精を吐き出す。
「っあうぅう!!っく……っぅ、ぁ、ふ」
出し切ると同時に引き抜かれ、支えを全く失うと倒れ込むように膝を崩して突っ伏した。
っ、やべ、腹あちぃ。
まだ繋がっているような気がして、腹の中が熱を持っている。初めは苦しかったはずなのに、頭がぼんやりとしていて、心地良さが抜けない。
俺がぼんやりしていると、彼に仰向けに転がされ、視界にヴァレールを捉える。
彼は胸焼けしそうな程、甘ったるい顔をしていて俺の頬を撫でる。今キスをされたら、もれなく砂糖の味がしそうだ。
「……愛してるよ。シリル、私のために生きてくれないか」
「っ……」
ずりぃよ、あんた。
そんな風に言われたら、頷いてしまう。俺もあんたの側にいたい。
こんな自分の考えに忌避感が無いわけじゃないけれど、ヴァレールを傷つけるぐらいなら、そんなものは飲み込んでしまおう。
口で言うのが、気恥ずかしいし、余計な事を言ってしまいそうだったので、体を起こして、俺も彼の頬に手を添える。
それから、唇を重ねた。砂糖の味がした気がしたのは、自分の中にもある甘ったるい感情がそう錯覚させたのだと思う。
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