前世の君にさようなら

老人の正体

　老人を包み込む雰囲気は、やわらかく優しかったものの、厳格で頑固そうなあの見た目、あの低い落ち着いた声、菖蒲の父親に間違いなかった。


あれ、親父ってあんなだったっけ？

あんなに優しくてあたたかかったっけ？

何が「ただいま。」だ。もうあの家には帰れないはずなのに。






俺は………親父を憎んでるはずだろ？



そうだ、俺は親父を憎んでる。憎んでる…。憎んでる。




親父への一瞬の懐かしさは、強引に菖蒲の憎しみへと変わっていった。



そして俺は決めたんだ。

菖蒲の代わりに、俺が親父に復讐してやると…。