悪魔に魅入られて。

壱馨裏 “M”

弐

先に話しておいた方がいいな
俺は悪魔じゃない、人間だ。
だが特殊な体質をしている
自分でもよく理解していないが、どうやら俺がみる夢は予知夢のようなものらしい。
だが必ずしも望むものが夢に出てくる
という訳ではない
明日の天気や電車の遅延なんて夢もあれば
浮気をされるなんて夢もある。
昔から見たくない事まで見えて苦労した。
だが悪い事ばかりという訳でもない。

あいつとの出会いもそうだった。
見知らぬ女と出会う夢を見た
その女があいつだ。
夢の中で俺に抱かれるあいつは
俺の理想そのものだった。
だから近付いた
手に入れる為に。


俺たちはパラフィリアだ。
一纏めにしたが
俺は嗜虐症。
あいつは被虐症。
わかりやすく言えばSとMの関係だな。

あいつの苦痛に歪む顔は壊したいほど興奮する
誰の目にも映らないように閉じ込めたい。
あいつも俺に縛られ、酷くされればされるほど
とても甘い声で鳴く。
互いに望むものが合っているんだろう。
初めて欲の全てを受け止めた相手。
それがこの厄介な女だった。

なぜ厄介か
あいつは俺を信用しようとしない。
俺にはたくさんの遊び相手がいると思っている
最初はお前だけだと何度も言って聞かせたが、あいつが俺を信じる事はなかった。
俺を警戒する姿が威嚇した子猫のようで愛らしく思え、そばに居るならそれでいいかと俺自身諦めてしまった。
そしてこの関係だ。

そろそろ俺も我慢の限界なんだが..
上手くやれない俺も悪いな。
まぁ、これが今の現状だ。