迷宮の果てのパラトピア

hakusuya

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クインカ・アダマス大迷宮調査日誌(ペテルギア辺境の森 プレセア暦2817年11月)

レヴィと顔のない女

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 夕食は昨晩同様アング、サーシャら五人の子らとともにした。そして酒を振る舞われた。
 明日にそなえて鋭気を養うように言われた。
 そして夜。私はまたしても金縛りにあい、悪夢を見た。
 疲労は前の夜ほどでないのに二日続けて金縛りにあうのは珍しい。そしてまた男女の話し声を聞いたのだ。
 男はやはりレヴィだった。女に顔はない。
「夜が明けたらザリーラの討伐に向かう」レヴィが言った。
 ザリーラとは討伐対象の魔物の名だ。
「騎士たちを連れていくのね?」
「彼らが望んだことだ」
「あの幻術に惑わされて味方同士討ち合わなければ良いけれど」
「注意すべきことは彼らに伝えた。一気にけりをつける」
「ザリーラが早い段階で戦いを放棄して逃げる道を選択した方が厄介だけれど」
「その手も打っておいた」
 これは夢の中の会話なのか?
 私の脳が作り出した虚構なのか?
「もしもの時は私を討て」レヴィの顔がこちらに向けられていた。それはあたかも私に向かって言ったかのように。
 力を振り絞り、足掻いて私は目覚めた。
 やはり夢だった。
 隣のベッドでルークが寝ている。
 私はまたしても寝汗をかいていた。
 レヴィの言葉を頭の中で反芻する。あれはどのような意味だったのか。
 そしてもう一つ気になることがあった。目覚める直前、顔のない女が何か言い残したのだ。間違いなくそれは私に向けられた言葉だった。
 しかし私はそれを聞き逃した。いや、聞いたような気がするが覚えていないのだ。これをただの夢の話として無視しても良いのだろうか。
 私は耳をすませた。昨夜は起き上がった後に、夢ではなく本当に謎の男女の会話を聞いたのだ。
 しかし今夜は、壁をつたって話し声が聞こえることはなかった。
 私は再び眠りについた。
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