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マグナワルダと「全世界魔法大全」 プレセア暦三〇四六年 コーネル辺境伯邸
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お茶の時間が終わると、それぞれの部屋で就寝することになった。
ロージーは話を聞きたがったが、ロージーを寝かせるためにエドワードが就寝時刻を宣言したのだ。
エイカー教授もエヴァンズも客用の部屋へと案内された。不服そうなロージーはマチルダに連れられて部屋へと向かった。
母パトリシアも含め、それぞれが部屋に向かったが、ロアルドは姉グレースとジェシカと三人、居間に残った。
「グレース姉さまは、聖王いやマグナワルダとその十二使徒についてどの程度ご存じですか?」ロアルドはそれが訊きたかった。
ジェシカも興味深げにしている。ジェシカがここに残ったのも同じ理由だろう。
「さあ、私も詳しくはないから……」相変わらずグレースはのらりくらりとかわす。
おっとりとした天然気質の衣を纏い、グレースはいつも彼女自身の本質を隠すのだ。
「あの『全世界魔法大全』もマグナワルダが記したとオズワルト叔父さんが言っていましたが」
「オズワルド叔父様のおっしゃることには真実でない話もたくさん混じっているわ。それはロアルドも知っているでしょう?」
「まあ、たしかに」そうではあるが。
「これはあくまでも巷での噂話だと思って聞いてちょうだい。決してソースはないの」グレースはそう前置きして語り始めた。「マグナワルダが七つの国を統一して全世界を一つにしたとき、彼もしくは彼女は全世界の魔法を手に入れたの……」
「彼もしくは彼女?」ロアルドとジェシカは声を揃えた。
「マグナワルダは男ということになってはいるけれど、女だったかもしれないの。実際、そう唱える学者もいるわ」
「マグナワルダを研究している学者がいるのですね?」
「学者とはそういうものよ。研究対象は多岐にわたる。誰も興味を示さないことでもその人が興味をもてば研究できるの」
「それで生活できるとしたら良いですね。僕も学者になりたいです」
「何をバカなことを言っているの」ジェシカの叱責が飛んだ。
「私は、この生まれついた記憶能力を生かして図書館の書籍を次々と記憶しているわ。今後も続けるでしょう。そのお蔭でアカデミーの先生方が、司書をしている神官ではなく私を頼って文献検索をしにくる。その関係でいろいろな研究をしている学者がいることを知っている。その先生方の話を総合すると、マグナワルダは全世界統一とともに全世界の魔法を手に入れた」
「全世界の魔法?」
「実は七つの国ごとにその国固有の魔法があったのよ。まさに門外不出の特殊な魔法。ほかの国からは理解できない類のもの。それをまとめて記したのが全世界魔法大全というわけ」
「なるほど……」
「魔法大全は十三巻からなっている。はじめの三巻が総論、四巻から十巻までが七つの国それぞれの魔法、最後の三巻がそれら七つの国の魔法の融合の話、となっているわ。先日王都学院図書館に寄贈した六巻は地の国の魔法を記したものだった」
「凄いですね。全部手に入れたら世界を統べることもできるのでは?」
「ところが大事なところは読めなくなっているのよ。私たち神官はそれを無意識的記憶しているだけ。鍵がないと中を意識して見ることはできない」
「例の三種の鍵というやつですね?」
「プレセア正教会が施した鍵、王国が施した鍵、そして編者自身が施した鍵。少なくとも三種の鍵がかけられていると言われているわ」
「編者とはマグナワルダなのですね?」
「マグナワルダが七つの国を統一したという伝説を信じるなら、魔法大全の著者はマグナワルダだと考えて差し支えないわね。プレセア正教会は否定するでしょうけれど」
「マグナワルダは全世界の魔法を手に入れて、それを十二使徒に分け与えたのでしょうか?」
「さあ、どうかしら。でももし全世界の魔法を手に入れたひとがいるとしたら、それをどうするかと考えれば、その先のことはある程度想像できるわね。ロアルドだったらどうする?」
「みんなで共有しようと思ったら本にするでしょうね」
「それでみんなが強力な魔法を手に入れて、反旗を翻すこともあるのよ。そうしたことができるかしら?」
「支配者ならできないでしょうね」
「マグナワルダがどのような人物だったかはわからない。プレセア正教会では悪の権化みたいに言われているけれど、カリゲル教においては聖王と崇められている。いや、聖王には名前がついていなかったわね。とにかくマグナワルダが全世界の魔法を独り占めにしようと思ったら本にはしないでしょうね、ひとつだけ例外的なケースを除いて」
「例外というのは?」
「後継者に残すためよ」
「後継者ですか……」
「一子相伝のように後継者をつくってその人物に残そうとしたか、あるいは自分自身が生まれ変わったときのために残したか、どちらかなら本として残す意味はあるわ」
「なるほど」
「魔法大全の肝心なところにたくさん鍵がかけられているところをみると、広くみんなに公開するつもりはなかったと思うの」
「一部の者にだけ残したということですね」
「そう、そしてそれは十二使徒でもなかった。十二使徒には全世界の魔法を分け与えたのであって、ひとりにすべて与えたわけではない。おそらく十二使徒の中に突出した力を持った者が出てくるのを恐れたのでしょう。彼らに均等に分け与え、お互い監視させる意味もあったのかもしれない」
「どうして十二使徒に分け与えたのでしょう?」
「本だけにすると、その本が焼失したら何も残らないでしょう? だから誰かが受け継ぐ必要があった」
「十二使徒はそれぞれ与えられた魔法を受け継いだまま何度も生まれ変わるというわけですね。聖王が復活して、魔法大全も焼失していた場合は、十二使徒から全世界の魔法を集める」
「そう考えるのが妥当かしら」
「だとしたらやっぱりマグナワルダは世界にとって脅威ですね。全世界の魔法を唯一手に入れることができるのですから」
「ねえ、グレースお姉さま」そこでジェシカが口をはさんだ。「先日、『全世界魔法大全』第六巻を奪いに来た連中、南の大陸の者たちだという話だったわね。彼らは地の国の人間ではないかという話だった。彼らはどうしてあの六巻を奪いに来たの? あの本は彼らの国の魔法について書かれていたわけよね」
「ひとつには、自分たちの魔法が他の国にわたるのを恐れたという可能性があるわ。彼らにとっては彼らだけが使える魔法だもの。よその国にその秘密は知られたくはないわね」
「そうね」
「でもそれだけではないと思うの。マグナワルダが全世界の魔法を手に入れたとき、おそらくそれぞれの国から、その固有の魔法を奪ったと思うの」
「奪った?」
「地の国の魔法を奪い、地の国の魔法師にその魔法を使わせないようにした。そうすることでマグナワルダに歯向かえないようにした」
「そんなことができるの?」
「できたのでしょうね、マグナワルダには。すべて使えないというレベルにはできないでしょうけれど、強大な魔法は使えないようにした。地の国の人間にとって、自分たちの強大な魔法が使えないのは我慢できないことだったでしょう。どうにかしてその魔法を取り戻し、使えるようになりたい。そう思うでしょうね。だから何らかの方法で魔法大全第六巻を手に入れた」
「でも、読めなかったのですね」ロアルドが言った。「鍵がかかっていて」
「そうよ。何とか解読できないか日々勤しんだでしょうね」
「そんな大事なもの、どうしてオズワルド叔父さまの手に渡ったのでしょう?」
「それがわからないのよ。オズワルド叔父さまは単に得体の知れない者から買い取ったようだけれど、その得体の知れない者の正体は全くわからないわね。そして彼らの目的も。何のために通りすがりの旅人に売ったのか」
「オズワルド叔父さまは何か知っているのではないでしょうか」ロアルドは呟くように言った。
「そうかもしれないわね」グレースは頷いた。
「オズワルド叔父さまはいつ来られるかわからないし、訊いても肝心なことは教えてくれないでしょうね」ジェシカが言う。「それに、叔父さまが言うことが正しいとも限らないし」
「ですよね」
本当のことを言うとは限らない。三人にとってオズワルド叔父とはそのような人物だった。
ロージーは話を聞きたがったが、ロージーを寝かせるためにエドワードが就寝時刻を宣言したのだ。
エイカー教授もエヴァンズも客用の部屋へと案内された。不服そうなロージーはマチルダに連れられて部屋へと向かった。
母パトリシアも含め、それぞれが部屋に向かったが、ロアルドは姉グレースとジェシカと三人、居間に残った。
「グレース姉さまは、聖王いやマグナワルダとその十二使徒についてどの程度ご存じですか?」ロアルドはそれが訊きたかった。
ジェシカも興味深げにしている。ジェシカがここに残ったのも同じ理由だろう。
「さあ、私も詳しくはないから……」相変わらずグレースはのらりくらりとかわす。
おっとりとした天然気質の衣を纏い、グレースはいつも彼女自身の本質を隠すのだ。
「あの『全世界魔法大全』もマグナワルダが記したとオズワルト叔父さんが言っていましたが」
「オズワルド叔父様のおっしゃることには真実でない話もたくさん混じっているわ。それはロアルドも知っているでしょう?」
「まあ、たしかに」そうではあるが。
「これはあくまでも巷での噂話だと思って聞いてちょうだい。決してソースはないの」グレースはそう前置きして語り始めた。「マグナワルダが七つの国を統一して全世界を一つにしたとき、彼もしくは彼女は全世界の魔法を手に入れたの……」
「彼もしくは彼女?」ロアルドとジェシカは声を揃えた。
「マグナワルダは男ということになってはいるけれど、女だったかもしれないの。実際、そう唱える学者もいるわ」
「マグナワルダを研究している学者がいるのですね?」
「学者とはそういうものよ。研究対象は多岐にわたる。誰も興味を示さないことでもその人が興味をもてば研究できるの」
「それで生活できるとしたら良いですね。僕も学者になりたいです」
「何をバカなことを言っているの」ジェシカの叱責が飛んだ。
「私は、この生まれついた記憶能力を生かして図書館の書籍を次々と記憶しているわ。今後も続けるでしょう。そのお蔭でアカデミーの先生方が、司書をしている神官ではなく私を頼って文献検索をしにくる。その関係でいろいろな研究をしている学者がいることを知っている。その先生方の話を総合すると、マグナワルダは全世界統一とともに全世界の魔法を手に入れた」
「全世界の魔法?」
「実は七つの国ごとにその国固有の魔法があったのよ。まさに門外不出の特殊な魔法。ほかの国からは理解できない類のもの。それをまとめて記したのが全世界魔法大全というわけ」
「なるほど……」
「魔法大全は十三巻からなっている。はじめの三巻が総論、四巻から十巻までが七つの国それぞれの魔法、最後の三巻がそれら七つの国の魔法の融合の話、となっているわ。先日王都学院図書館に寄贈した六巻は地の国の魔法を記したものだった」
「凄いですね。全部手に入れたら世界を統べることもできるのでは?」
「ところが大事なところは読めなくなっているのよ。私たち神官はそれを無意識的記憶しているだけ。鍵がないと中を意識して見ることはできない」
「例の三種の鍵というやつですね?」
「プレセア正教会が施した鍵、王国が施した鍵、そして編者自身が施した鍵。少なくとも三種の鍵がかけられていると言われているわ」
「編者とはマグナワルダなのですね?」
「マグナワルダが七つの国を統一したという伝説を信じるなら、魔法大全の著者はマグナワルダだと考えて差し支えないわね。プレセア正教会は否定するでしょうけれど」
「マグナワルダは全世界の魔法を手に入れて、それを十二使徒に分け与えたのでしょうか?」
「さあ、どうかしら。でももし全世界の魔法を手に入れたひとがいるとしたら、それをどうするかと考えれば、その先のことはある程度想像できるわね。ロアルドだったらどうする?」
「みんなで共有しようと思ったら本にするでしょうね」
「それでみんなが強力な魔法を手に入れて、反旗を翻すこともあるのよ。そうしたことができるかしら?」
「支配者ならできないでしょうね」
「マグナワルダがどのような人物だったかはわからない。プレセア正教会では悪の権化みたいに言われているけれど、カリゲル教においては聖王と崇められている。いや、聖王には名前がついていなかったわね。とにかくマグナワルダが全世界の魔法を独り占めにしようと思ったら本にはしないでしょうね、ひとつだけ例外的なケースを除いて」
「例外というのは?」
「後継者に残すためよ」
「後継者ですか……」
「一子相伝のように後継者をつくってその人物に残そうとしたか、あるいは自分自身が生まれ変わったときのために残したか、どちらかなら本として残す意味はあるわ」
「なるほど」
「魔法大全の肝心なところにたくさん鍵がかけられているところをみると、広くみんなに公開するつもりはなかったと思うの」
「一部の者にだけ残したということですね」
「そう、そしてそれは十二使徒でもなかった。十二使徒には全世界の魔法を分け与えたのであって、ひとりにすべて与えたわけではない。おそらく十二使徒の中に突出した力を持った者が出てくるのを恐れたのでしょう。彼らに均等に分け与え、お互い監視させる意味もあったのかもしれない」
「どうして十二使徒に分け与えたのでしょう?」
「本だけにすると、その本が焼失したら何も残らないでしょう? だから誰かが受け継ぐ必要があった」
「十二使徒はそれぞれ与えられた魔法を受け継いだまま何度も生まれ変わるというわけですね。聖王が復活して、魔法大全も焼失していた場合は、十二使徒から全世界の魔法を集める」
「そう考えるのが妥当かしら」
「だとしたらやっぱりマグナワルダは世界にとって脅威ですね。全世界の魔法を唯一手に入れることができるのですから」
「ねえ、グレースお姉さま」そこでジェシカが口をはさんだ。「先日、『全世界魔法大全』第六巻を奪いに来た連中、南の大陸の者たちだという話だったわね。彼らは地の国の人間ではないかという話だった。彼らはどうしてあの六巻を奪いに来たの? あの本は彼らの国の魔法について書かれていたわけよね」
「ひとつには、自分たちの魔法が他の国にわたるのを恐れたという可能性があるわ。彼らにとっては彼らだけが使える魔法だもの。よその国にその秘密は知られたくはないわね」
「そうね」
「でもそれだけではないと思うの。マグナワルダが全世界の魔法を手に入れたとき、おそらくそれぞれの国から、その固有の魔法を奪ったと思うの」
「奪った?」
「地の国の魔法を奪い、地の国の魔法師にその魔法を使わせないようにした。そうすることでマグナワルダに歯向かえないようにした」
「そんなことができるの?」
「できたのでしょうね、マグナワルダには。すべて使えないというレベルにはできないでしょうけれど、強大な魔法は使えないようにした。地の国の人間にとって、自分たちの強大な魔法が使えないのは我慢できないことだったでしょう。どうにかしてその魔法を取り戻し、使えるようになりたい。そう思うでしょうね。だから何らかの方法で魔法大全第六巻を手に入れた」
「でも、読めなかったのですね」ロアルドが言った。「鍵がかかっていて」
「そうよ。何とか解読できないか日々勤しんだでしょうね」
「そんな大事なもの、どうしてオズワルド叔父さまの手に渡ったのでしょう?」
「それがわからないのよ。オズワルド叔父さまは単に得体の知れない者から買い取ったようだけれど、その得体の知れない者の正体は全くわからないわね。そして彼らの目的も。何のために通りすがりの旅人に売ったのか」
「オズワルド叔父さまは何か知っているのではないでしょうか」ロアルドは呟くように言った。
「そうかもしれないわね」グレースは頷いた。
「オズワルド叔父さまはいつ来られるかわからないし、訊いても肝心なことは教えてくれないでしょうね」ジェシカが言う。「それに、叔父さまが言うことが正しいとも限らないし」
「ですよね」
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