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未来への岐路
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「この辺りに、面白い公園があるんだ」
少し寄って行こうと、東野君が提案した。
「面白い?」
「うん、面白いって言うか、ちょっとしたロマンかな」
ロマン。
つまり、夢、だろうか。
あれこれ考える私に、とにかく行ってみようと彼は言い、アクセルを踏んだ。
コンビニから少し移動した道沿いに、その公園はあった。
――分水嶺公園――
「ぶんすい……れい、かな?」
「そう、分水嶺。水系の分かれ目で、境界線となっている山稜のこと」
「?」
「まあ、つまり……見てみようか」
公園は緑豊かで、自然園といった趣だった。数台分の駐車場を前にした入り口は小さめで、入ると直に小川があり、それに沿って散策道が奥へと続いている。
「ああ、なるほど。こうなってるのか」
東野君は、何ごとか記された石碑の前にしゃがんだ。石碑のところまで流れてきた小川が、そこで二手に分かれている。
「なにがあるの?」
彼の隣に同じようにしゃがむと、石面の白い塗料を目でなぞった。矢印が左右に描かれ、文字が添えられている。
左の矢印には「太平洋」
右の矢印には「日本海」
と、ある。
「つまり、山で湧き出た水が、ここのところで二手に分かれ、太平洋と日本海に流れ行くというわけだ」
「え、この、小川の水が?」
目の前の小さな水の流れを、あらためて見やった。
「看板があるな。佐奈、こっちに来て」
手招きされて行くと、“水の旅だち”と書かれた看板があり、川の流れが分かりやすく略図で示されていた。
「ひとつの流れは庄川を経て日本海へ。もうひとつは長良川を経て太平洋へと注ぐ」
「……あ、だから分水嶺」
東野君はにこりとすると、私の手を取り歩き出した。
小川に沿って、林の散策路を進んで行く。
熊笹の葉も青々として、その中に百合の一種だろうか、きれいな花が一輪、思い出したように咲いている。
緑の小道を、二人でゆっくりと歩いた。
「静かだな。今は、俺達だけみたいだ」
「う、うん」
ほかに散策する人の姿はなく、そういえば駐車場も空だった。夕暮れも迫り、観光するには遅い時間帯なのかもしれない。
だけど、二人きりなのは心地が良かった。なんだかとても不思議な場所にいる気がして、東野君とその感覚を共有できるのが嬉しかった。
「旅だちの、分かれ目に来ている。俺と」
「え」
立ち止まり、私を見つめた。
一陣の風が、ざわざわと木立ちを揺らす。その後には静けさが際立ち、東野君の佇まいも、すっかり落ち着いたものになっている。
いつもより、大人びているような――
(旅だちの、分かれ目? 俺とっ……て、どういうことだろう)
不安げに見返す私に、東野君は立ち止まったまま、続けた。
「俺と君の行く先を、見極めたいと思う」
「東野君と、私の?」
「そう、俺達がともに旅だつ、今が岐路だと感じている。そのことを、話しておきたいと思って連れて来たんだ」
小川の流れる先へ、私の視線を導いた。
石碑の手前で左右に分かれている。東野君が今言ったこと、そのままの流れだった。
「ちょっとした、ロマンだろ」
少し照れた様子で、だけどしっかりと手を握りなおして、岐路へと進んだ。
「明日話すつもりだったけど、今日の、今この時がいいって思い直した。君がくれたから」
「え……」
「眠ってる俺に」
しばし考えて、唐突に理解した。
昼寝の後、東野君がどうしてあんなにもすっきりとした表情だったのか、どうして急に、食事のついでにドライブしようと誘ったのか、何か目的がありそうな素振りだったのか。
『大事なことだから』
彼らしくも無く、せっかちで慌てた動きだった。
「昂って、勢いづいて君をここまで引っ張ってきたんだ」
東野君に握られていないほうの手で、熱くなった頬を押さえる。
私は、彼の寝顔に口付けた。起こさないようにとそーっと触れたつもりだったのに、気付かれていたのだ。いつまでも見つめていたい、傍にいたいと願いをこめて、彼の唇に愛情を捺したことを。
「お、起きてたの?」
「うん……いや、正しくはあれで目が覚めた。感激のあまり、寝たふりを続けたけど」
彼の手も、じんわりと熱くなった。隠しようの無いお互いの感情に、意外なほど恥ずかしい気持ちが湧きあがる。
(あああ、もう、なんてことだろう!)
「嬉しかったよ、だから」
東野君はグイと私を引き寄せると、さっきのように大人びた眼差しになり、そのことを切り出した。
「佐奈、聞いて」
「……はい」
恥ずかしがっている場合ではないと、私は自分を律する。この人は、二人の行く先を見極める、今がその岐路だと言った。旅だちの岐路とは、今立っている場所にほかならない。
「俺は、ふたつの道を考えてる」
「はい」
繋いだ手と絡み合う視線に強力な電気が走り、私達は緊張する。
「ひとつは、東野珈琲店を今のまま、親父から引き継ぐ道。もうひとつは、将来自分の店を持ち、経営していく道。どちらも、よく考え抜いた上での未来構想だ。いずれにせよ、今の俺には現実的に勉強も経験も必要な、険しい道だけれど」
「東野君はお店を継ぐの?」と、軽い気持ちで訊いてしまった私の浅慮を思い出す。だけど東野君はあの時、「俺が君とのことを走り過ぎているんだ」と言って、許してくれた。
今、その大切なことを、二人の問題として話してくれるのだ。
「親父の店には25年の歳月をかけて築き上げた歴史と、実績がある。接客もサービスも、傍から眺めるよりも、実は簡単じゃない。それを踏まえた上で、親父とお袋が完成させたハウスブレンドを継ぎ、保つだけではなく、新しい方向へと伸ばして行かなければならない。そうでないと、既に遅れを取ってる個人経営の店なんて、今主流のカフェ文化がさらに進化するだろう世の中ではいずれ埋もれてしまう」
事実、東野珈琲店の売り上げは年々減少しているとのこと。あんなに賑わっているお店なのにと、信じられないけれど。
「自分で新しく店を持つのは、さらに努力も時間も必要になる。尤も、その努力は俺の望むところだけれど、君には多分、かなりの負担がいくかもしれない。イチから何もかもを造り上げるのは、ある意味ギャンブルに近いものがあるからね」
私は眉を曇らせる。
私に負担がくるかもしれないと、その可能性にではない。むしろ反対で、そんな心配をさせている自分の頼りなさが情けないから。
「どちらも大変だ。いや、何をするのも大変だと、つくづくと思う。どんな道にもリスクは常に、それなりにある」
薄暮のなか、神妙に話す東野君の横顔は真剣で、将来についても、私のことも、いい加減に考えていない。
目を凝らし、耳をそばだて、神経を集中させた。一生懸命に話を聞くしかできないもどかしさを感じながら。
「以上です」
東野君は最後に、ちょっぴりおどけた言い方で締めると、いつものように笑った。
「聞いてくれて、ありがとう」
「東野君」
今は本当に、聞くだけしか出来ない。
彼に何かを言う、それだけのものが無かった。
「ゆっくりでいいよ、佐奈」
俯きかける私の頬をつついた。愛おしい仕草に、ほうっと心が和らいでいく。
「さあ、美味い蕎麦でも食べに行こうぜ。腹が減ったな」
励ますように元気よく、私の背中をぽんぽんと叩く。サッカークラブでの彼が、新米マネージャーである私を、明るく頼もしく、盛り立ててくれている。私のほうが、応援しなきゃいけないのに。
「うんっ、行こう」
せめてものエールに張り切った声を出す。今はこんなことしかできないけれど、いつかきっと、あなたを支える私になりたい。
彼の歩調はゆるやかで、思いやるように優しかった。
「まだ君には、話すべきことがある。ゆっくりでいいんだ」
「え?」
「夢の話だよ」
これから夜をともに過ごし、朝を迎えるのだ。
何かが分かるかもしれない。二人きりの朝を迎えることで、この答えが出るかもしれない。
東野君の考えるふたつの道。
そして、夢。
夜明けの香り。
未来への岐路に、私達は辿り着いた――
少し寄って行こうと、東野君が提案した。
「面白い?」
「うん、面白いって言うか、ちょっとしたロマンかな」
ロマン。
つまり、夢、だろうか。
あれこれ考える私に、とにかく行ってみようと彼は言い、アクセルを踏んだ。
コンビニから少し移動した道沿いに、その公園はあった。
――分水嶺公園――
「ぶんすい……れい、かな?」
「そう、分水嶺。水系の分かれ目で、境界線となっている山稜のこと」
「?」
「まあ、つまり……見てみようか」
公園は緑豊かで、自然園といった趣だった。数台分の駐車場を前にした入り口は小さめで、入ると直に小川があり、それに沿って散策道が奥へと続いている。
「ああ、なるほど。こうなってるのか」
東野君は、何ごとか記された石碑の前にしゃがんだ。石碑のところまで流れてきた小川が、そこで二手に分かれている。
「なにがあるの?」
彼の隣に同じようにしゃがむと、石面の白い塗料を目でなぞった。矢印が左右に描かれ、文字が添えられている。
左の矢印には「太平洋」
右の矢印には「日本海」
と、ある。
「つまり、山で湧き出た水が、ここのところで二手に分かれ、太平洋と日本海に流れ行くというわけだ」
「え、この、小川の水が?」
目の前の小さな水の流れを、あらためて見やった。
「看板があるな。佐奈、こっちに来て」
手招きされて行くと、“水の旅だち”と書かれた看板があり、川の流れが分かりやすく略図で示されていた。
「ひとつの流れは庄川を経て日本海へ。もうひとつは長良川を経て太平洋へと注ぐ」
「……あ、だから分水嶺」
東野君はにこりとすると、私の手を取り歩き出した。
小川に沿って、林の散策路を進んで行く。
熊笹の葉も青々として、その中に百合の一種だろうか、きれいな花が一輪、思い出したように咲いている。
緑の小道を、二人でゆっくりと歩いた。
「静かだな。今は、俺達だけみたいだ」
「う、うん」
ほかに散策する人の姿はなく、そういえば駐車場も空だった。夕暮れも迫り、観光するには遅い時間帯なのかもしれない。
だけど、二人きりなのは心地が良かった。なんだかとても不思議な場所にいる気がして、東野君とその感覚を共有できるのが嬉しかった。
「旅だちの、分かれ目に来ている。俺と」
「え」
立ち止まり、私を見つめた。
一陣の風が、ざわざわと木立ちを揺らす。その後には静けさが際立ち、東野君の佇まいも、すっかり落ち着いたものになっている。
いつもより、大人びているような――
(旅だちの、分かれ目? 俺とっ……て、どういうことだろう)
不安げに見返す私に、東野君は立ち止まったまま、続けた。
「俺と君の行く先を、見極めたいと思う」
「東野君と、私の?」
「そう、俺達がともに旅だつ、今が岐路だと感じている。そのことを、話しておきたいと思って連れて来たんだ」
小川の流れる先へ、私の視線を導いた。
石碑の手前で左右に分かれている。東野君が今言ったこと、そのままの流れだった。
「ちょっとした、ロマンだろ」
少し照れた様子で、だけどしっかりと手を握りなおして、岐路へと進んだ。
「明日話すつもりだったけど、今日の、今この時がいいって思い直した。君がくれたから」
「え……」
「眠ってる俺に」
しばし考えて、唐突に理解した。
昼寝の後、東野君がどうしてあんなにもすっきりとした表情だったのか、どうして急に、食事のついでにドライブしようと誘ったのか、何か目的がありそうな素振りだったのか。
『大事なことだから』
彼らしくも無く、せっかちで慌てた動きだった。
「昂って、勢いづいて君をここまで引っ張ってきたんだ」
東野君に握られていないほうの手で、熱くなった頬を押さえる。
私は、彼の寝顔に口付けた。起こさないようにとそーっと触れたつもりだったのに、気付かれていたのだ。いつまでも見つめていたい、傍にいたいと願いをこめて、彼の唇に愛情を捺したことを。
「お、起きてたの?」
「うん……いや、正しくはあれで目が覚めた。感激のあまり、寝たふりを続けたけど」
彼の手も、じんわりと熱くなった。隠しようの無いお互いの感情に、意外なほど恥ずかしい気持ちが湧きあがる。
(あああ、もう、なんてことだろう!)
「嬉しかったよ、だから」
東野君はグイと私を引き寄せると、さっきのように大人びた眼差しになり、そのことを切り出した。
「佐奈、聞いて」
「……はい」
恥ずかしがっている場合ではないと、私は自分を律する。この人は、二人の行く先を見極める、今がその岐路だと言った。旅だちの岐路とは、今立っている場所にほかならない。
「俺は、ふたつの道を考えてる」
「はい」
繋いだ手と絡み合う視線に強力な電気が走り、私達は緊張する。
「ひとつは、東野珈琲店を今のまま、親父から引き継ぐ道。もうひとつは、将来自分の店を持ち、経営していく道。どちらも、よく考え抜いた上での未来構想だ。いずれにせよ、今の俺には現実的に勉強も経験も必要な、険しい道だけれど」
「東野君はお店を継ぐの?」と、軽い気持ちで訊いてしまった私の浅慮を思い出す。だけど東野君はあの時、「俺が君とのことを走り過ぎているんだ」と言って、許してくれた。
今、その大切なことを、二人の問題として話してくれるのだ。
「親父の店には25年の歳月をかけて築き上げた歴史と、実績がある。接客もサービスも、傍から眺めるよりも、実は簡単じゃない。それを踏まえた上で、親父とお袋が完成させたハウスブレンドを継ぎ、保つだけではなく、新しい方向へと伸ばして行かなければならない。そうでないと、既に遅れを取ってる個人経営の店なんて、今主流のカフェ文化がさらに進化するだろう世の中ではいずれ埋もれてしまう」
事実、東野珈琲店の売り上げは年々減少しているとのこと。あんなに賑わっているお店なのにと、信じられないけれど。
「自分で新しく店を持つのは、さらに努力も時間も必要になる。尤も、その努力は俺の望むところだけれど、君には多分、かなりの負担がいくかもしれない。イチから何もかもを造り上げるのは、ある意味ギャンブルに近いものがあるからね」
私は眉を曇らせる。
私に負担がくるかもしれないと、その可能性にではない。むしろ反対で、そんな心配をさせている自分の頼りなさが情けないから。
「どちらも大変だ。いや、何をするのも大変だと、つくづくと思う。どんな道にもリスクは常に、それなりにある」
薄暮のなか、神妙に話す東野君の横顔は真剣で、将来についても、私のことも、いい加減に考えていない。
目を凝らし、耳をそばだて、神経を集中させた。一生懸命に話を聞くしかできないもどかしさを感じながら。
「以上です」
東野君は最後に、ちょっぴりおどけた言い方で締めると、いつものように笑った。
「聞いてくれて、ありがとう」
「東野君」
今は本当に、聞くだけしか出来ない。
彼に何かを言う、それだけのものが無かった。
「ゆっくりでいいよ、佐奈」
俯きかける私の頬をつついた。愛おしい仕草に、ほうっと心が和らいでいく。
「さあ、美味い蕎麦でも食べに行こうぜ。腹が減ったな」
励ますように元気よく、私の背中をぽんぽんと叩く。サッカークラブでの彼が、新米マネージャーである私を、明るく頼もしく、盛り立ててくれている。私のほうが、応援しなきゃいけないのに。
「うんっ、行こう」
せめてものエールに張り切った声を出す。今はこんなことしかできないけれど、いつかきっと、あなたを支える私になりたい。
彼の歩調はゆるやかで、思いやるように優しかった。
「まだ君には、話すべきことがある。ゆっくりでいいんだ」
「え?」
「夢の話だよ」
これから夜をともに過ごし、朝を迎えるのだ。
何かが分かるかもしれない。二人きりの朝を迎えることで、この答えが出るかもしれない。
東野君の考えるふたつの道。
そして、夢。
夜明けの香り。
未来への岐路に、私達は辿り着いた――
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