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林王の領域
245話 過去編 ルーティアとセバスの違い
しおりを挟む「…セバス様、貴方様何故、前を向けるのですか?」
ルーティアは、床に散らかった紙を回収しながら、気になっていた事をセバスに質問した
「…それはどういう意味でしょうか?」
セバスは、質問の意図が分からず、首を傾げながら質問した
「てっきり私は、セバス様は、ゴル様が亡くなったショックで、塞ぎ込んでいると思っていました…なのにセバス様は、塞ぎ込む事無く、ゴル様を殺した怪物を倒す方法を考えていらしゃいます…私には不思議でならないのです…何故悲しみに暮れるのでは無く、仇討ちに燃える事が出来るのか?教えて頂けますか?」
ルーティアは、紙を回収する手を止め、真剣な様子でセバスを見ながら質問した
「…簡単ですよ、私はハーデス家の方々を心の底から信頼しております…故にあの方々が、ゴル様を殺した怪物を絶対に許す事は無い事も知っております…ならば、ハーデス家に仕える者として、私はその手助けをするだけです」
真剣な様子なルーティアを見たセバスは、紙を回収する手を止め、自身が仕える冥王の事を思い出しながら、自信満々に答えた
「(っ、なんて恥ずかしい事を聞いてしまったのでしょう…私とは、覚悟が違い過ぎます)」
セバスの答えを聞いたルーティアは、ハルスの質問に答えられなかった時の自分を思い出し、自身の覚悟の軽さを心の底から恥じた
「…ルーティア様、貴方様が恥じる必要はありません…私とルーティア様では、根本的に違うのですから」
ルーティアの様子を見たセバスは、ルーティアが、何を思い何に恥じているか気付き、慰める為に話し掛けた
「っ!それは!私が臆病者だと言いたいのですか!?」
セバスの言葉を聞いたルーティアは、自身が馬鹿にされたと感じ、怒った様子でセバスを睨んだ
「(しまった!言葉を間違えた!!)いえ、馬鹿になどしてません!私はただ、ルーティア様は人を従える側の方で、私は従う側の人間だと、言いたかったのです!」
セバスは、怒っているルーティアを見て、自身の失敗に気付き、慌てて言い直した
「…どういう事ですか?」
ルーティアは、セバスの話が理解出来ず、少し怒った様子のまま、質問した
「(少しは冷静になってくださったな)」
セバスは、ルーティアの怒りが少し収まったのを感じ取り、これ以上怒らせない為に、言葉を選びながらルーティアに説明し始めた
「…知っての通り、私はゾル様の配下です」
「はい、存じています」
「…配下という立場には必ず、仕える主がいる事に成ります」
「はい」
「…配下という立場にいる者は、主の命令によっては、死なねばならない事があります」
「…はい」
「私は、ゾル様の命令なら、何時でも死ぬ覚悟があります…それが配下としての務めです」
「っ」
「ですが、ルーティア様は王族であられます…貴方様の務めは、配下達に命令して、国を動かし、国を守る事です」
「成る程、セバス様が言いたい事は分かりました…私は命令を下す側、セバス様は命令を受ける側…確かに根本的に違いますね」
セバスの話を聞いたルーティアは、セバスが言いたかった事に気付き、セバスと自分が根本的に違う事に納得した
「そうです、ルーティア様に必要な覚悟は私とは違い、民を守る為に犠牲を払う覚悟です」
「(そうか…セバス様は、信頼するハーデス家の方々が居るから前を向けるのですね…私達一族もハーデス家の方々の様に、民や家臣達に信頼される王族にならなくては…)セバス様!ありがとうございます!私が進むべき道が見えました!」
セバスの話を聞いたルーティアは、自身に足りない物に気付き、嬉しそうにセバスにお礼を言った
「いえ、私が言わなくとも、ルーティア様なら、いずれ気付いていましたよ…さて、続きをやりましょう」
ルーティアにお礼を言われたセバスは、優しい表情で答えた後、散らかっている紙を回収し始めた
「はい!」
ルーティアは、スッキリした様子で返事をした後、そのままセバスと共に、散らかっている紙を回収し始めた
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