異世界転生漫遊記

しょう

文字の大きさ
上 下
128 / 277
冥王の領域

122話 レイ フォン ハーデス

しおりを挟む

マーサが産気付き、部屋に入れてもらえなかったセイは、時折部屋から聞こえるマーサ、セナ、サラ、グロリアの声に、落ち着かない様子で、部屋前の廊下をグルグル歩いていた

「セイ、少しは落ち着かんか」

「っ…無理だよ、まさかここまで緊張するとは思ってなかったし」

「セイ様は出産に立ち会った事があるんじゃろ?」

「あるよ…でも人の出産は頑張れって、気持ちしかなかったけど、自分の子供だと、無事に生まれてきてくれって、気持ちが増えるから、今凄い緊張してるんだよね」

「その気持ち、分かるのぅ、儂も娘が産まれる時、同じ気持ちじゃったのぅ」

「そうじゃな、儂もルイが産まれる時、同じ気持ちじゃったな」

「グリモアって子供居たんだ」

「居るぞ、シスセイ様も会ったことある、シスイじゃ?」

「ああ!あの人がそうなんだ!なら嫁は誰なの?」

「グロリアじゃ」

「えっ、グロリアさん?」

「そうじゃ」

「…よく結婚したね?」

「どういう意味じゃ!」

「…いや、なんていうか、ねぇ?」

「ほっほっほ、セイの言いたいことは分かるぞ、尻に敷かれるのが、目に見えていたのに、よく結婚を決意したものじゃ」

「それがのぅ、結婚する前は、本性を隠しておったんじゃ」

「そういえば聞いたことがあるのぅ…若い頃のグロリアは、上品で優しく芯のある女性じゃったと」

「シスイが産まれるまでは、そうじゃたのぅ」

「うわ~古典的な手に騙されたんだ」

「そうなんじゃ…それも、いきなり本性を出さずに、子育てで疲れたせいにしながら、ゆっくり違和感が無い様に、本性を出してきおったんじゃ…気付いた時には、尻に敷かれておった」

「「…怖」」

「おぎゃ~おぎゃ~」

「「「産まれた!」」」

セイと冥王が、グリモアの話を聞いていると、子供の泣き声が聞こえてきた

「グロリアさん!入って大丈夫!?」

「少し待ちな!…よし!いいよ!」

セイ、冥王、グリモアの3人は、グロリアの許可を得て、部屋に入った

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

セイが部屋に入ると、そこには、ベットに座っているマーサが、優しく母性を感じさせる笑顔で子供を抱いていた

子供を抱いた、マーサを見たセイは、その姿に感動してしまい、声を出せずにいた

「セイ、どうしたの?」

「っ…いや、何でもないよ」

「ふふ、セイ、子供を抱いてみたら?」

「抱き方は分かるわね?」

「分かってるよ」

セイはマーサから子供を受け取り、首を支えながら、優しく抱いた

「あら、泣かなかったわね、てっきり泣くかと思ってたわ」

「そうだね、坊は昔、ルイ様を初めて抱いた時は、大泣きされてたね」

「そうじゃったな、あの時の坊ちゃんの慌てようは、見てて笑えたのぅ」

「グリモアも人の事言えんじゃろ、父から聞いておるぞ、シスイが産まれた時、大泣きされて、何を思ったか歌を歌ったせいで、より酷くなったとな」

「あの時は、何故か歌を歌えば泣き止むと思ったんじゃ」

「それに、あの歌も酷かったね」

「セイ、真剣に子供を見てるけど、何か気になることでもあるの?」

セイは、セナ、グロリア、グリモア、冥王の4人が話している間、真剣な顔で子供を見ていた

その様子が気になったマーサは、セイに何が気になるのかを聞いた

「…既に魔素が浸透し始めてる」

「「「「「えっ…」」」」」

「それも、かなり浸透率が高い」

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

「…少し儂に見せてみよ」

冥王は、セイに抱かれている子供を触り、魔素の浸透率を調べ始めた

「…セイが言う通りじゃな、既に5歳児並みの浸透率になっておる」

「浸透率が高いと、何か身体に不味い事でもあるんですか?」

「いや、それはないね」

「ただ、魔法を早く習得する可能性があるだけじゃ」

「なら、何も問題はないのよね?」

「うむ、ただ優れた魔法師になる可能性が高いだけじゃ」

「はぁ~もう!セイが真剣な顔で話すから、てっきり問題があるのかと思ったわよ!」

「いや、俺はただ、俺以上の魔力を持つ子になると思って、びっくりしてただけだよ」

「それもそうね、セイ以上の魔力を持つ人なんて、今まで会ったことがないもの」

「まさか、息子が俺以上の魔力を持つ可能性があるとは」

「いつか、セイを超える魔法師になるかも知れんのぅ」

「いや、息子には負けないよ、永遠に越えられない壁として、存在し続けるね」

「ふふ、それで、この子の名前は、決めてるの?」

「シスターと相談して決めたよ」

「「この子の名前は…」」

「「レイ フォン ハーデス!」」






しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。 使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...